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169 (第三者視点)

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 一方その頃、アランはようやく目を覚ましていた。

「あ痛ててて...」

 アランは痛む後頭部を手で擦ろうとしたが、手足を縛られていてそれは叶わなかった。

「クソッ...油断したな...」

 アランは周りを見渡して悪態を吐く。状況は理解できた。自分は昨夜の見張りの時、何者かに後ろから殴られ昏倒した。そしてこのように手足を縛られて床に転がされている状態を見る限り、そのまま拉致られたと見て間違い無さそうだ。
 
 場所はどこかの空き家という所だろうか。所々壁が剥がれていて、隙間から光が差し込んで来ている。

「おはよう。目が覚めたかな? もっとも、もうすぐお昼だからこんにちわって言うべきかな? クックックッ」

 人を小馬鹿にしたような嗤い声を上げながら近付いて来たのは、

「クリフトファー...やっぱりお前か...」

「やぁ、久し振りだね。また会えて嬉しいよ。クックックッ」

 クリフトファーの目の焦点が合っていない。やはり明らかに気が触れている。

「俺をこんな所に拉致してどうするつもりだ?」

「知れたこと。お前を人質にしてアンリエットを呼び出すのさ。クックック」

「呼び出してどうする?」

「今度こそ隣国に連れて行く。そのために僕は全財産を叩いたんだからな。クックックッ」

 やっぱりそう来たか。アランは唇を噛んだ。どうやらエリザベートが見逃した財産をまだ隠し持っていたらしい。

「こんなことしたって無駄だ。お嬢が俺なんかを助けるためにノコノコと出て来るもんか」

 大ウソである。アンリエットは自分を助けるためなら、きっと躊躇なく危ない橋を渡ろうとするだろう。アンリエットはそういう人だ。それが分かっているからこそ、アランとしては絶対にここでクリフトファーを止めなくてはならない。

「いいや、アンリエットは間違いなくお前を助けるために来るよ。見てりゃ分かる。ムカつくことにお前とアンリエットは見えない絆のようなもので繋がってるみたいだからな!」

 そう言っていきなりクリフトファーはアランの腹を蹴り上げた。

「グエッ! ゲホッ! ゲホッ!」

 アランは噎せながら体をくの字して痛みに耐える。

「お前なんかが僕のアンリエットとそんな関係になるだなんて! 許せん! こうしてくれる!」

 クリフトファーは何度もアランを足蹴にした。アランは痛みで気を失いそうになるのを歯を食い縛ってなんとか耐える。

「この! この! 思い知ったか! この! この!」

 クリフトファーの狂ったような攻撃はしばし続いた。

 アランは必死に耐えた。
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