我が家の乗っ取りを企む婚約者とその幼馴染みに鉄槌を下します!

真理亜

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 エリザベートが手紙を開いて内容を確認し顔を顰める。

「な、なんて書いてあったの?」

 私は恐る恐る尋ねた。

「あなた一人で一本松の所に来るようにだって。一本松って?」

「町の外れの小高い丘に一本だけ樹齢何百年と言われる松の巨木があるのよ。良く待ち合わせの目印に使われたりするわ」

「なるほどね...」

「時間は指定されてるの?」

「えぇ、今日の正午までにだって。来ないとアランの命は無いそうよ?」

「た、大変! もうあと一時間も無いじゃない!」

 私は時計を見て焦った。

「アンリエット、ちょっと落ち着きなさい。相手の思う壺よ?」

「そ、そんなこと言われたって...」

「いいからとにかく落ち着きなさい。その一本松の周辺のことを詳しく教えて?」

「周辺って言っても...さっきも言った通り、小高い丘の天辺にあるから見晴らしが良いというくらいしかないけど...」

「人通りは?」

「ウイークデーの昼間はほとんど人は訪れないわ。みんな仕事してるし。休みの日にはピクニックを楽しんだり、待ち合わせに利用する人達で賑わったりするって感じかしらね」

「なるほど...疚しいことに利用するには持って来いの場所って訳ね...バカ兄のクセに中々やるじゃないの...」

「そ、そんなことよりエリザベート、そろそろ出ないと...」

「まぁ、待ちなさい。この間の変装キットはまだ残ってる?」

「あるけど...どうするつもり!? ま、まさか!?」

「えぇ、そのまさかよ。私が変装して行くわ」

「だ、ダメよそんなの! バレたらどうするつもりよ!? アランの命が懸かってんのよ!?」

「だから落ち着きなさいって。ちゃんと分かってるわよ。これは単なる時間稼ぎなんだから」

「時間稼ぎ!?」

「えぇ、そうよ。この間みたいにアンリエットと私を間違えて拐わないよう、待ち合わせ場所には恐らくバカ兄が直接やって来るはず。そこで私だってバレるでしょうが、近付いて来たらこっちのもんよ。逆に取っ捕まえてアランの居場所を吐かせてやるわ」

「近付いて来なかったら?」

「遠目でバレたらきっと一旦引き返して行くでしょうね。そしてまた別の接触方法を考えるでしょう」

「そんなことになったらアランは...」

「大丈夫よ。アランは向こうにしてみれば命綱みたいなもんなんだから。そう簡単に命を奪ったり出来ないはずだわ。交渉材料が無くなるんですもの」

「だといいけど...」

「そうやって時間稼ぎしている間に、アランの居場所を突き止めましょう。ハンスとカイルに期待ね」

 そんなんで本当に上手く行くんだろうか...

 私は一抹の不安を隠せないでいた。
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