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 ハンスがエリザベートの隠密衆の一人、ネオと一緒に出て行ったのを確認した私はソファーに沈み込んで、

「なんか掴めるといいんだけど...」

「そうね」

 エリザベートはなんかどうでも良さそうな感じに見えた。

「エリザベート、期待してないの?」

「いえ、そうじゃなくて。例え情報を掴めなくても、アランを拐ったヤツ...恐らくバカ兄だろうけど...からなにかしらの連絡が来るはずだと思ってね」

「あぁ、そういうことか...」

 考えてみれば当たり前だわな。どういう意図にせよ、人一人を拐ったんだとしたら、なんらかの要求をして来るのは間違いないよね。

 ダメだな私...そんなことに頭が回らないほど動揺してたんだ...

「どういった要求をして来ると思う?」

「それは...」

 エリザベートが口ごもった。それで確信した。

「あぁ、皆まで言わなくていいわ...私ってことね...」

 アランを人質にして私との交換を要求するってことか...

「アンリエット、心配しないで。バカ兄の思い通りになんかさせないから。あなたのことは私が絶対に守ってみせるから」

「ありがとう...でもそうなったらアランは...」

「アランのことも絶対救い出してみせるから。安心して。私を信じて」

「うん...」

 エリザベートはそう言って慰めてくれだが、それでも私の胸は不安で押し潰されそうになっていた。


◇◇◇


「お嬢様、ただいま戻りました」

 お昼過ぎ、ハンスが戻って来た。

「お帰り。どうだった?」

「今の所、これといった情報はなにも」

「そう...」

「ただ情報屋のジョージの話ですと、この数日の間に見慣れない破落戸風の輩共の姿が増えたそうです。もしかしたら関連があるのかも知れないとのことでした」

「なるほど...ハンス、ありがとう。ご苦労様。少し休んで?」

「いいえ、休んでなんかいられませんよ。それに、アランを拐ったヤツらのアジトに全く心当たりが無いって訳でもありません」

「そうなの?」

「えぇ、ここ何年か空き家になっている家を何件か知ってますので、その辺りを重点的に当たってみようかと思っております」

「そう。分かったわ。でも決して無理しないでね?」

「心得ております」

「それと絶対に一人では行動しないこと」

「承知しております」

「カイル、今度はあんたが付いて行って?」

「畏まりました」

 エリザベートがそう命じて、ハンスとカイルは再び部屋を出て行った。

 それから30分も経たない頃だった。

「お嬢様、たった今メッセンジャーボーイがこれを」

 エリザベートの隠密衆の一人、リックが手紙を持って来た。

「来たわね」

 私は息を呑んだ。
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