164 / 276
164
しおりを挟む
「アンリエット! アンリエット! 起きて! ねぇ起きて!」
「フニャア...もう食べられないよ~...ムニャムニャ...」
「寝惚けてないでさっさと起きなさい!」
「ふぇ...あ、あれ!? ここは誰!? 私はどこ!?」
「もう! いい加減シャッキリしなさい! 大変なのよ! アランが行方不明になったの!」
「ぬわんですってぇ! どわっ! あ痛ててて!」
「フゥ...やっと目が覚めたみたいね...大丈夫? 怪我は無い?」
「だ、大丈夫...あれ!? ここは!?」
私は客間の床に転がっていた。どうやらソファーから落ちたらしい。エリザベートの手を借りて体を起こす。
「あなた、ソファーで寝てたのよ。なんでここに寝てたの? なんで自分の部屋に戻らなかったの?」
そう言われて昨夜の記憶が朧気に浮かんで来た。確か疲れてちょっとソファーに身を沈めたんだった。その後からの記憶が無い。どうやらそのまま寝落ちしちゃったようだ。いや、そんなことよりも!
「それは今どうだっていい! それよりアランが居なくなったってどういうこと!?」
「言葉通りの意味よ。今朝、ハンスが交代しようと見張りの持ち場に行ってみたら、アランの姿がどこにもなかったそうなの」
「そ、そんな...一体どこに行ったっていうの...」
「それが分からないから調べているのよ。ウチの隠密衆達も姿を見て無いって言ってるし。ねぇあなた、昨夜アランに会った?」
「うん、この部屋でちょっと話した...」
「その時、なにかおかしな様子はなかった?」
「ううん、特には...」
「そう。アンリエット、もう一度聞くわね。あなたはなんでここに寝てたの?」
「それは...ちょっと疲れたんでソファーに横たわったらそのまま寝ちゃったのよ。というか、なんでその点に拘るの!?」
「それはあらゆる可能性を考慮しているからよ」
「可能性!? どんな!?」
「あなたを眠らせてからアランが出て行ったとかね」
「まさか...アランがそんなことするはず無いし...」
「だからあらゆる可能性を考慮してるって言ったでしょ? 今のはアランが自分から出て行ったパターンを検証してみたってこと」
「それは有り得ないと言い切れるわ。なぜなら...」
私は昨夜のアランとのやり取りを説明した。
「なるほど...それならアランが自分から姿を消したって可能性は無いわね。となると残るのは...」
「誰かに連れ去られた...」
「えぇ、そうなるわね...」
その誰かというのは言うまでもない。
私は無意識に唇を噛み締めていた。
「フニャア...もう食べられないよ~...ムニャムニャ...」
「寝惚けてないでさっさと起きなさい!」
「ふぇ...あ、あれ!? ここは誰!? 私はどこ!?」
「もう! いい加減シャッキリしなさい! 大変なのよ! アランが行方不明になったの!」
「ぬわんですってぇ! どわっ! あ痛ててて!」
「フゥ...やっと目が覚めたみたいね...大丈夫? 怪我は無い?」
「だ、大丈夫...あれ!? ここは!?」
私は客間の床に転がっていた。どうやらソファーから落ちたらしい。エリザベートの手を借りて体を起こす。
「あなた、ソファーで寝てたのよ。なんでここに寝てたの? なんで自分の部屋に戻らなかったの?」
そう言われて昨夜の記憶が朧気に浮かんで来た。確か疲れてちょっとソファーに身を沈めたんだった。その後からの記憶が無い。どうやらそのまま寝落ちしちゃったようだ。いや、そんなことよりも!
「それは今どうだっていい! それよりアランが居なくなったってどういうこと!?」
「言葉通りの意味よ。今朝、ハンスが交代しようと見張りの持ち場に行ってみたら、アランの姿がどこにもなかったそうなの」
「そ、そんな...一体どこに行ったっていうの...」
「それが分からないから調べているのよ。ウチの隠密衆達も姿を見て無いって言ってるし。ねぇあなた、昨夜アランに会った?」
「うん、この部屋でちょっと話した...」
「その時、なにかおかしな様子はなかった?」
「ううん、特には...」
「そう。アンリエット、もう一度聞くわね。あなたはなんでここに寝てたの?」
「それは...ちょっと疲れたんでソファーに横たわったらそのまま寝ちゃったのよ。というか、なんでその点に拘るの!?」
「それはあらゆる可能性を考慮しているからよ」
「可能性!? どんな!?」
「あなたを眠らせてからアランが出て行ったとかね」
「まさか...アランがそんなことするはず無いし...」
「だからあらゆる可能性を考慮してるって言ったでしょ? 今のはアランが自分から出て行ったパターンを検証してみたってこと」
「それは有り得ないと言い切れるわ。なぜなら...」
私は昨夜のアランとのやり取りを説明した。
「なるほど...それならアランが自分から姿を消したって可能性は無いわね。となると残るのは...」
「誰かに連れ去られた...」
「えぇ、そうなるわね...」
その誰かというのは言うまでもない。
私は無意識に唇を噛み締めていた。
21
お気に入りに追加
3,482
あなたにおすすめの小説

真実の愛がどうなろうと関係ありません。
希猫 ゆうみ
恋愛
伯爵令息サディアスはメイドのリディと恋に落ちた。
婚約者であった伯爵令嬢フェルネは無残にも婚約を解消されてしまう。
「僕はリディと真実の愛を貫く。誰にも邪魔はさせない!」
サディアスの両親エヴァンズ伯爵夫妻は激怒し、息子を勘当、追放する。
それもそのはずで、フェルネは王家の血を引く名門貴族パートランド伯爵家の一人娘だった。
サディアスからの一方的な婚約解消は決して許されない裏切りだったのだ。
一ヶ月後、愛を信じないフェルネに新たな求婚者が現れる。
若きバラクロフ侯爵レジナルド。
「あら、あなたも真実の愛を実らせようって仰いますの?」
フェルネの曾祖母シャーリンとレジナルドの祖父アルフォンス卿には悲恋の歴史がある。
「子孫の我々が結婚しようと関係ない。聡明な妻が欲しいだけだ」
互いに塩対応だったはずが、気づくとクーデレ夫婦になっていたフェルネとレジナルド。
その頃、真実の愛を貫いたはずのサディアスは……
(予定より長くなってしまった為、完結に伴い短編→長編に変更しました)

【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います
りまり
恋愛
私の名前はアリスと言います。
伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。
母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。
その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。
でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。
毎日見る夢に出てくる方だったのです。

10年もあなたに尽くしたのに婚約破棄ですか?
水空 葵
恋愛
伯爵令嬢のソフィア・キーグレスは6歳の時から10年間、婚約者のケヴィン・パールレスに尽くしてきた。
けれど、その努力を裏切るかのように、彼の隣には公爵令嬢が寄り添うようになっていて、婚約破棄を提案されてしまう。
悪夢はそれで終わらなかった。
ケヴィンの隣にいた公爵令嬢から数々の嫌がらせをされるようになってしまう。
嵌められてしまった。
その事実に気付いたソフィアは身の安全のため、そして復讐のために行動を始めて……。
裏切られてしまった令嬢が幸せを掴むまでのお話。
※他サイト様でも公開中です。
2023/03/09 HOT2位になりました。ありがとうございます。
本編完結済み。番外編を不定期で更新中です。

【完結】私を捨てて駆け落ちしたあなたには、こちらからさようならを言いましょう。
やまぐちこはる
恋愛
パルティア・エンダライン侯爵令嬢はある日珍しく婿入り予定の婚約者から届いた手紙を読んで、彼が駆け落ちしたことを知った。相手は同じく侯爵令嬢で、そちらにも王家の血筋の婿入りする婚約者がいたが、貴族派閥を保つ政略結婚だったためにどうやっても婚約を解消できず、愛の逃避行と洒落こんだらしい。
落ち込むパルティアは、しばらく社交から離れたい療養地としても有名な別荘地へ避暑に向かう。静かな湖畔で傷を癒やしたいと、高級ホテルでひっそり寛いでいると同じ頃から同じように、人目を避けてぼんやり湖を眺める美しい青年に気がついた。
毎日涼しい湖畔で本を読みながら、チラリチラリと彼を盗み見ることが日課となったパルティアだが。
様子がおかしい青年に気づく。
ふらりと湖に近づくと、ポチャっと小さな水音を立てて入水し始めたのだ。
ドレスの裾をたくしあげ、パルティアも湖に駆け込んで彼を引き留めた。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
最終話まで予約投稿済です。
次はどんな話を書こうかなと思ったとき、駆け落ちした知人を思い出し、そんな話を書くことに致しました。
ある日突然、紙1枚で消えるのは本当にびっくりするのでやめてくださいという思いを込めて。
楽しんで頂けましたら、きっと彼らも喜ぶことと思います。

婚約破棄ですか。ゲームみたいに上手くはいきませんよ?
ゆるり
恋愛
公爵令嬢スカーレットは婚約者を紹介された時に前世を思い出した。そして、この世界が前世での乙女ゲームの世界に似ていることに気付く。シナリオなんて気にせず生きていくことを決めたが、学園にヒロイン気取りの少女が入学してきたことで、スカーレットの運命が変わっていく。全6話予定

言いたいことはそれだけですか。では始めましょう
井藤 美樹
恋愛
常々、社交を苦手としていましたが、今回ばかりは仕方なく出席しておりましたの。婚約者と一緒にね。
その席で、突然始まった婚約破棄という名の茶番劇。
頭がお花畑の方々の発言が続きます。
すると、なぜが、私の名前が……
もちろん、火の粉はその場で消しましたよ。
ついでに、独立宣言もしちゃいました。
主人公、めちゃくちゃ口悪いです。
成り立てホヤホヤのミネリア王女殿下の溺愛&奮闘記。ちょっとだけ、冒険譚もあります。

「君を愛するつもりはない」と言ったら、泣いて喜ばれた
菱田もな
恋愛
完璧令嬢と名高い公爵家の一人娘シャーロットとの婚約が決まった第二皇子オズワルド。しかし、これは政略結婚で、婚約にもシャーロット自身にも全く興味がない。初めての顔合わせの場で「悪いが、君を愛するつもりはない」とはっきり告げたオズワルドに、シャーロットはなぜか歓喜の涙を浮かべて…?
※他サイトでも掲載中しております。

愛されなかった公爵令嬢のやり直し
ましゅぺちーの
恋愛
オルレリアン王国の公爵令嬢セシリアは、誰からも愛されていなかった。
母は幼い頃に亡くなり、父である公爵には無視され、王宮の使用人達には憐れみの眼差しを向けられる。
婚約者であった王太子と結婚するが夫となった王太子には冷遇されていた。
そんなある日、セシリアは王太子が寵愛する愛妾を害したと疑われてしまう。
どうせ処刑されるならと、セシリアは王宮のバルコニーから身を投げる。
死ぬ寸前のセシリアは思う。
「一度でいいから誰かに愛されたかった。」と。
目が覚めた時、セシリアは12歳の頃に時間が巻き戻っていた。
セシリアは決意する。
「自分の幸せは自分でつかみ取る!」
幸せになるために奔走するセシリア。
だがそれと同時に父である公爵の、婚約者である王太子の、王太子の愛妾であった男爵令嬢の、驚くべき真実が次々と明らかになっていく。
小説家になろう様にも投稿しています。
タイトル変更しました!大幅改稿のため、一部非公開にしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる