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「それならいいんだけど...」

 ウィリアムはなにやらソワソワしている。

「ウィリアム、それだけ?」

「...いや...その...」

「どうしたの?」

 促してみるがウィリアムは逡巡しているのか、中々話し出そうとしない。ややあってようやく口を開いた。

「...ずっと考えていたんだ...やっぱりマックスには俺じゃなくて本当の親が必要なんじゃないかって...母親の行方が分からないけど、父親の行方は分かってる。だったら会いに行かせるべきなんじゃないかって...例え拒絶されたとしてもね...その...ケジメとしてというか...」

「なるほど。あなたの考えは良く分かったわ。ちなみにマックスはなんて言ってるの?」

「パパに会いたいって泣いてる...その姿を見て思ったんだ...俺は父親の代わりにはなれないって...」

「そうなのね...これが血の繋がりってもんなのかしら...あの二人は目に見えない絆で繋がっているのかも知れないわね...」

「そうなのかも知れない...もっとも、俺だって血は繋がってるんだけどね...」

 そう言ってウィリアムは自嘲気味に苦笑した。

「話は分かったわ。今のこのゴタゴタが片付いたらパトリックに会いに行ってらっしゃい。お金は出してあげるわ」

「本当に済まない...何から何まで...」

「なんならアランを用心棒兼ガイドとして付けてやってもいいわよ?」

「いや、さすがにそこまでは...」

「いいわよもう。乗り掛かった船なんだから、この際最後まで面倒見てあげるわよ。パトリックに会って決着付けて来なさい」

「ありがとう...本当にありがとう...」

「その代わり、結果はどうあれ必ず報告しに戻って来ること。いいわね?」

「分かった...約束するよ...」

 ウィリアムが部屋を出て行った後、エリザベートがなんとも言えない表情を浮かべていた。

「エリザベート? どうしたの?」

「あぁ...うん...その...ちょっと考えちゃってね...」

「なにを?」

「血の繋がりってことを...」

「あぁ...なるほど...」

 自分の血の繋がった兄に対する感情みたいなものを、無意識に揺り動かされちゃったって訳か。まぁ無理もないよね。親子ほどじゃ無いにしろ、兄妹としての情のようなものは確かにあったんだろうから...今はともかくとしても昔はね...

「エリザベート、大丈夫?」

「うん、大丈夫...でも今夜はもう先に休ませて貰うわね...」

「お休み...」

 いつになくしおらしくなってしまったエリザベートに、私は掛ける言葉が見付からなかった。
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