我が家の乗っ取りを企む婚約者とその幼馴染みに鉄槌を下します!

真理亜

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「エリザベート、私怖いんだけど...」

 私の体は恐怖からか小刻みに震えてしまっていた。

「大丈夫よ。心配しないで。あなたには指一本触れさせたりなんかしないから。約束するわ。ね?」

 そんな私の体をエリザベートは優しくそっと抱き締めてくれた。

「うん...」

 エリザベートの温もりに触れたことで、安心したのか私の体の震えは徐々に収まって来た。

「それでカイル、他の二人は?」

「ネオとリックは念のため、この屋敷の周りを警戒中です」

「そう。引き続き警戒するように言って頂戴」

「分かりました」

「それとあなたも屋敷周りの警戒に参加してくれる?」

「よろしいのですか?」

「アンリエットには私がずっと付いてるから心配要らないわ」

「承知しました」

 エリザベートは私の体を抱き締めたままカイルに指示を下している。ちなみにネオとリックというのは、隠密衆残りの二人の名だと後でエリザベートが教えてくれた。


◇◇◇


「お嬢様、ただいま戻りました」

「お嬢、なんだか大変なことになってるみたいだな」

 ややあって国の査察官の所に行っていたハンスとアランが戻って来た。どうやら事情はウチの周りを警戒中の隠密衆に聞いたらしい。

「二人ともゴメンなさいね...ウチの身内が迷惑ばっかり掛け続けちゃって...」

「あぁいやいや、それはエリザベート嬢が謝ることじゃないんだから別にいいんだけどさ。というか、エリザベート嬢は何しに来たの?」

「それは...今回の件にケリが付いてからゆっくり話すわ」

 アランの核心を突いた質問に、思わず私はエリザベートの胸に顔を埋めたまま固まってしまった。

「ふうん、良く分かんないけどまぁいいや。取り敢えず俺も屋敷周りの警戒に加わることにするよ」

「では私はお嬢様方のお側に居ります」

「二人ともありがとう。そうしてくれると助かるわ」

 アランが部屋を出て行ったのを確認してから、ようやく震えが収まった私はエリザベートの腕の中から離れた。

「アンリエット、大丈夫?」

「ありがとう。もう大丈夫よ。あぁハンス、ウィリアムとマックスにも屋敷の外に出ないよう伝えて貰える?」

「畏まりました」

「それと念のため、エリザベートに何か武器を用意してやって頂戴」

「あら? 私なら徒手空拳でも平気よ?」

 エリザベートはその場でシャドーボクシングを始めた。それを見た私は苦笑しながら、

「あなたそれ、嫁入り前の娘がやる仕草じゃないからね?」

「問題無いわ。もうすぐウチの旦那になる予定のベンジャミンには既にバレてるから」

 エリザベートは全く悪びれることなくそう言い切った。
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