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「お嬢、ちょっといいかな?」

「な、なに?」

 いきなりアランに話し掛けられた私は挙動不審になってしまった。いかんいかん! 仕事モード仕事モード!

「ウィリアム。あんたの兄さん、パトリックの行方が掴めたんだ。隣国のとある貴族に厄介になってるらしい」

 あぁ、なるほど。

 ハンスが調べた所によると、パトリックは持てるだけの現金を持って出て行ったらしいから、向こうの貴族も快く受け入れてくれたのかも知れないな。

 それか見ず知らずの相手じゃなく、過去に貴族同士でなんらかの付き合いがあった相手なのかも知れないな。

「そうなのか...」

「どうする? 会いに行くなら居場所を教えてやる。マックスに父親が必要だと思うならな」

 ウィリアムは未だに泣きじゃくっているマックスを見詰めながら、

「いいや、止めておくよ...俺は兄に嫌われているからな...会いに行ったりしたら、なにされるか分かったもんじゃない...それに、マックスを置いて行ったということは、きっとマックスのことが邪魔だったんだろうから、今更連れて行った所で迷惑がられるだけだと思うし...」

「まぁ確かにそうだろうな。分かった。それじゃあこの話はここまでにしよう」

 アランが締めた後、今度はハンスが話し出した。

「アラン、国の査察官がパトリック殿の行方を探している。情報提供してやってくれないか?」

「あぁ、分かった」

「お嬢様、ちょっと失礼します」

「行ってらっしゃい」

 ハンスがアランを連れて行った後、少しホッとした私は改めてウィリアムに向き直った。

「落ち着いたらあなたも事情聴取に応じるのよ?」

「分かってる...」

 ウィリアムは泣き疲れたのか眠ってしまったマックスを抱き締めながら、力無く頷いた。

「しばらくはウチでゆっくりしていきなさい。新居と仕事が決まるまでね」 

「ありがとう...恩に着る...」

 私はウィリアムとマックスをメイドに任せた後、疲れた体をソファーに沈めてすっかり冷めてしまったお茶を喉に流し込んだ。

「ふうん、中々の名裁きだったじゃないの。これにて一件落着~! ってな感じね」

 そこへエリザベートが話し掛けて来た。そう、一言も話さなかっただけで、コイツはずっと部屋の中に居たのだ。

「お褒めに預りどうも...」

「どういたしまして。ともあれ、これでアランの案件に集中できるって訳ね?」

「うぐ...そ、それは...」

 そう言われて私は言葉に詰まった。

 確かに結論を出さないとなんだよなぁ...どうしよう...
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