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「え~と...私の聞き間違いかしら? アランを貴族にするとか聞こえたんだけど?」

「聞き間違いじゃないわ。そう言ったもの」

 間違いじゃないのか...

「...なんでまたそんなことを?」

「あなた、アランの気持ちに気付いてないのね」

「アランの気持ち?」

 一体なんのことだ?

「アランはね、あなたのことが好きなのよ。主人と従者っていう立場を越えて一人の男と女としてね」

「すき...」

 隙? スキー? すき焼き? すきってなんだっけ?

「お~い、アンリエット~! 戻って来~い!」

「ハッ!? なんだなんだ!? 私どうしたんだ!?」

「大丈夫? なんかトリップしてたみたいよ?」

「...な、なんとか...あ、あまりに衝撃的だったから...」

 一瞬、意識飛んでたよ...

「あら意外。端から見てたらバレバレだったのに」

「えぇっ!? そ、そうだったの!?」

「えぇ、少なくとも私はすぐ気付いたわよ? アンリエット、あなたかなり鈍感なんじゃない?」

「失敬な! そんなことは...あるかも...」

 私の言葉は尻窄みになった。

「こと恋愛に関しちゃ、あなた奥手だもんねぇ」

「うぅっ...」

 図星を指された...

「そんなあなたと、気の置けないやり取りを繰り返していたアランのことは最初っから気になっていたわ」

「そうだったんだ...」

 自分では気にもしてなかったけど...

「だからこの間、長いこと一緒に居た時に問い質してみたのよ。アランの口から直接聞いてみたかったから。そしたらやっぱり私の思った通りだったわ」

「そうだったのね...」

 あの替え玉作戦の時か。

「アランはね、自身の出自とか身分とかを気にしてあなたに告白できないって言ってた。だからせめて身分だけでも調えてあげようと思ったのよ。そうすればあなたに告白する気になるかも知れないでしょ?」

「な、なるほど...」

「あ、ちなみに、このことは秘密にしておいてくれってアランに言われてたから、上手く口裏合わせといてね?」

「いやいや、そんなん今頃言われても...」

 どうすんだよこれ...アランの顔見たらどうしたって意識しちゃうじゃんよ...なにも知らないフリして今まで通りにって訳にゃとてもいかんぞ...

「それでアンリエット、肝心のあなたの気持ちはどうなの?」

「私の...」

 そんなこと言われても...いきなり過ぎて頭の中パニックなんだが...

「アランにはあなたの気持ちを確かめてから切り出すつもりよ?」

 私は...アランのことをどう思っているんだろう...今までそんなこと考えたこともないぞ...
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