152 / 276
152
しおりを挟む
私とエリザベートはマックスをベビーシッターさんに任せて客間に移動した。
「それで? あの子どうすんの?」
「まだ保留中というか考え中というか...」
「いっそのことあなたが引き取っちゃえば?」
「アンタね...他人事だと思って勝手なこと言わないでくれる?」
「あら、他から養子を迎えるなんて貴族なら珍しいことじゃないでしょ?」
「そりゃまぁそうなんだけど...でもそれって普通は後継ぎの男子に恵まれなかった貴族の夫婦とかが、止むに止まれず他から養子を迎えるってパターンじゃないの?」
「必ずしもそういうパターンばかりじゃないわよ? 不義の子を、具体的には愛人に生ませた子を養子にするとかってパターンもあるじゃない?」
「そりゃ確かにあるだろうけど、今回のパターンには当てはまらないじゃないの?」
「いや、そういう意味じゃなくてね。要するに、一人の子供を養子にする理由なんて人それぞれだってことを言いたかった訳よ」
「あぁ、そういうこと...」
「結局最後はさ、あなたがどうしたいかっていう気持ち次第なんじゃないの?」
「私の気持ち...」
そう言われて私は考え込んでしまった。確かにマックスに対する情は、私の中で次第に大きくなっているような気がしないでもない。もしかしたらこれが母性本能というヤツなのかも知れないな。
今、マックスと別れることになったら私は恐らく大泣きすることだろう。
「もし、あなたがその気なら私は全面的に支援すると約束するわよ?」
「いやいやいや、待って待って待って。いくらなんでもちょっと気が早いっての...」
私はエリザベートに待ったを掛け、強引に話題を切り替えることにした。
「それよりさっき言ってた報告ってなに?」
「あぁ、バカ兄が仕出かした件の後始末がやっと終わってね。思ってた以上の金額を使い込まれていて参ったわ。まぁでも債券や株券、土地家屋の権利書なんかは無傷で回収できたからそれで良しとしないとね」
「そう、良かったわね」
出費は確かに痛手なんだろうが、公爵家なら回復するのもきっと早いだろう。
「それでね、あなたに迷惑を掛けたお詫びなんだけど」
「そんなの別にいいって言ったのに」
律儀というか義理堅いというか。エリザベートらしいっちゃらしいけど。
「そういう訳には行かないでしょ。色々考えたんだけどさ、やっぱりこれしかないかなって思ったんだよね」
「なになに?」
「アランを貴族にする」
「はい!?」
私は意味が分からずポカンとしてアホみたいに聞き返していた。
「それで? あの子どうすんの?」
「まだ保留中というか考え中というか...」
「いっそのことあなたが引き取っちゃえば?」
「アンタね...他人事だと思って勝手なこと言わないでくれる?」
「あら、他から養子を迎えるなんて貴族なら珍しいことじゃないでしょ?」
「そりゃまぁそうなんだけど...でもそれって普通は後継ぎの男子に恵まれなかった貴族の夫婦とかが、止むに止まれず他から養子を迎えるってパターンじゃないの?」
「必ずしもそういうパターンばかりじゃないわよ? 不義の子を、具体的には愛人に生ませた子を養子にするとかってパターンもあるじゃない?」
「そりゃ確かにあるだろうけど、今回のパターンには当てはまらないじゃないの?」
「いや、そういう意味じゃなくてね。要するに、一人の子供を養子にする理由なんて人それぞれだってことを言いたかった訳よ」
「あぁ、そういうこと...」
「結局最後はさ、あなたがどうしたいかっていう気持ち次第なんじゃないの?」
「私の気持ち...」
そう言われて私は考え込んでしまった。確かにマックスに対する情は、私の中で次第に大きくなっているような気がしないでもない。もしかしたらこれが母性本能というヤツなのかも知れないな。
今、マックスと別れることになったら私は恐らく大泣きすることだろう。
「もし、あなたがその気なら私は全面的に支援すると約束するわよ?」
「いやいやいや、待って待って待って。いくらなんでもちょっと気が早いっての...」
私はエリザベートに待ったを掛け、強引に話題を切り替えることにした。
「それよりさっき言ってた報告ってなに?」
「あぁ、バカ兄が仕出かした件の後始末がやっと終わってね。思ってた以上の金額を使い込まれていて参ったわ。まぁでも債券や株券、土地家屋の権利書なんかは無傷で回収できたからそれで良しとしないとね」
「そう、良かったわね」
出費は確かに痛手なんだろうが、公爵家なら回復するのもきっと早いだろう。
「それでね、あなたに迷惑を掛けたお詫びなんだけど」
「そんなの別にいいって言ったのに」
律儀というか義理堅いというか。エリザベートらしいっちゃらしいけど。
「そういう訳には行かないでしょ。色々考えたんだけどさ、やっぱりこれしかないかなって思ったんだよね」
「なになに?」
「アランを貴族にする」
「はい!?」
私は意味が分からずポカンとしてアホみたいに聞き返していた。
22
お気に入りに追加
3,469
あなたにおすすめの小説
拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら
みおな
恋愛
子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。
公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。
クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。
クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。
「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」
「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」
「ファンティーヌが」
「ファンティーヌが」
だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。
「私のことはお気になさらず」
逃げた先で見つけた幸せはずっと一緒に。
しゃーりん
恋愛
侯爵家の跡継ぎにも関わらず幼いころから虐げられてきたローレンス。
父の望む相手と結婚したものの妻は義弟の恋人で、妻に子供ができればローレンスは用済みになると知り、家出をする。
旅先で出会ったメロディーナ。嫁ぎ先に向かっているという彼女と一晩を過ごした。
陰からメロディーナを見守ろうと、彼女の嫁ぎ先の近くに住むことにする。
やがて夫を亡くした彼女が嫁ぎ先から追い出された。近くに住んでいたことを気持ち悪く思われることを恐れて記憶喪失と偽って彼女と結婚する。
平民として幸せに暮らしていたが貴族の知り合いに見つかり、妻だった義弟の恋人が子供を産んでいたと知る。
その子供は誰の子か。ローレンスの子でなければ乗っ取りなのではないかと言われたが、ローレンスは乗っ取りを承知で家出したため戻る気はない。
しかし、乗っ取りが暴かれて侯爵家に戻るように言われるお話です。
あなたには、この程度のこと、だったのかもしれませんが。
ふまさ
恋愛
楽しみにしていた、パーティー。けれどその場は、信じられないほどに凍り付いていた。
でも。
愉快そうに声を上げて笑う者が、一人、いた。
【完結】もう誰にも恋なんてしないと誓った
Mimi
恋愛
声を出すこともなく、ふたりを見つめていた。
わたしにとって、恋人と親友だったふたりだ。
今日まで身近だったふたりは。
今日から一番遠いふたりになった。
*****
伯爵家の後継者シンシアは、友人アイリスから交際相手としてお薦めだと、幼馴染みの侯爵令息キャメロンを紹介された。
徐々に親しくなっていくシンシアとキャメロンに婚約の話がまとまり掛ける。
シンシアの誕生日の婚約披露パーティーが近付いた夏休み前のある日、シンシアは急ぐキャメロンを見掛けて彼の後を追い、そして見てしまった。
お互いにただの幼馴染みだと口にしていた恋人と親友の口づけを……
* 無自覚の上から目線
* 幼馴染みという特別感
* 失くしてからの後悔
幼馴染みカップルの当て馬にされてしまった伯爵令嬢、してしまった親友視点のお話です。
中盤は略奪した親友側の視点が続きますが、当て馬令嬢がヒロインです。
本編完結後に、力量不足故の幕間を書き加えており、最終話と重複しています。
ご了承下さいませ。
他サイトにも公開中です
【完結】愛され公爵令嬢は穏やかに微笑む
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
恋愛
「シモーニ公爵令嬢、ジェラルディーナ! 私はお前との婚約を破棄する。この宣言は覆らぬと思え!!」
婚約者である王太子殿下ヴァレンテ様からの突然の拒絶に、立ち尽くすしかありませんでした。王妃になるべく育てられた私の、存在価値を否定するお言葉です。あまりの衝撃に意識を手放した私は、もう生きる意味も分からくなっていました。
婚約破棄されたシモーニ公爵令嬢ジェラルディーナ、彼女のその後の人生は思わぬ方向へ転がり続ける。優しい彼女の功績に助けられた人々による、恩返しが始まった。まるで童話のように、受け身の公爵令嬢は次々と幸運を手にしていく。
ハッピーエンド確定
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2022/10/01 FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、二次選考通過
2022/07/29 FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、一次選考通過
2022/02/15 小説家になろう 異世界恋愛(日間)71位
2022/02/12 完結
2021/11/30 小説家になろう 異世界恋愛(日間)26位
2021/11/29 アルファポリス HOT2位
2021/12/03 カクヨム 恋愛(週間)6位
わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの。
朝霧心惺
恋愛
「リリーシア・ソフィア・リーラー。冷酷卑劣な守銭奴女め、今この瞬間を持って俺は、貴様との婚約を破棄する!!」
テオドール・ライリッヒ・クロイツ侯爵令息に高らかと告げられた言葉に、リリーシアは純白の髪を靡かせ高圧的に微笑みながら首を傾げる。
「誰と誰の婚約ですって?」
「俺と!お前のだよ!!」
怒り心頭のテオドールに向け、リリーシアは真実を告げる。
「わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの」
愛しの婚約者に「学園では距離を置こう」と言われたので、婚約破棄を画策してみた
迦陵 れん
恋愛
「学園にいる間は、君と距離をおこうと思う」
待ちに待った定例茶会のその席で、私の大好きな婚約者は唐突にその言葉を口にした。
「え……あの、どうし……て?」
あまりの衝撃に、上手く言葉が紡げない。
彼にそんなことを言われるなんて、夢にも思っていなかったから。
ーーーーーーーーーーーーー
侯爵令嬢ユリアの婚約は、仲の良い親同士によって、幼い頃に結ばれたものだった。
吊り目でキツい雰囲気を持つユリアと、女性からの憧れの的である婚約者。
自分たちが不似合いであることなど、とうに分かっていることだった。
だから──学園にいる間と言わず、彼を自分から解放してあげようと思ったのだ。
婚約者への淡い恋心は、心の奥底へとしまいこんで……。
※基本的にゆるふわ設定です。
※プロット苦手派なので、話が右往左往するかもしれません。→故に、タグは徐々に追加していきます
※感想に返信してると執筆が進まないという鈍足仕様のため、返事は期待しないで貰えるとありがたいです。
※仕事が休みの日のみの執筆になるため、毎日は更新できません……(書きだめできた時だけします)ご了承くださいませ。
※※しれっと短編から長編に変更しました。(だって絶対終わらないと思ったから!)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる