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 私とエリザベートはマックスをベビーシッターさんに任せて客間に移動した。

「それで? あの子どうすんの?」

「まだ保留中というか考え中というか...」

「いっそのことあなたが引き取っちゃえば?」

「アンタね...他人事だと思って勝手なこと言わないでくれる?」

「あら、他から養子を迎えるなんて貴族なら珍しいことじゃないでしょ?」

「そりゃまぁそうなんだけど...でもそれって普通は後継ぎの男子に恵まれなかった貴族の夫婦とかが、止むに止まれず他から養子を迎えるってパターンじゃないの?」

「必ずしもそういうパターンばかりじゃないわよ? 不義の子を、具体的には愛人に生ませた子を養子にするとかってパターンもあるじゃない?」

「そりゃ確かにあるだろうけど、今回のパターンには当てはまらないじゃないの?」

「いや、そういう意味じゃなくてね。要するに、一人の子供を養子にする理由なんて人それぞれだってことを言いたかった訳よ」

「あぁ、そういうこと...」

「結局最後はさ、あなたがどうしたいかっていう気持ち次第なんじゃないの?」

「私の気持ち...」

 そう言われて私は考え込んでしまった。確かにマックスに対する情は、私の中で次第に大きくなっているような気がしないでもない。もしかしたらこれが母性本能というヤツなのかも知れないな。

 今、マックスと別れることになったら私は恐らく大泣きすることだろう。

「もし、あなたがその気なら私は全面的に支援すると約束するわよ?」

「いやいやいや、待って待って待って。いくらなんでもちょっと気が早いっての...」

 私はエリザベートに待ったを掛け、強引に話題を切り替えることにした。

「それよりさっき言ってた報告ってなに?」

「あぁ、バカ兄が仕出かした件の後始末がやっと終わってね。思ってた以上の金額を使い込まれていて参ったわ。まぁでも債券や株券、土地家屋の権利書なんかは無傷で回収できたからそれで良しとしないとね」

「そう、良かったわね」

 出費は確かに痛手なんだろうが、公爵家なら回復するのもきっと早いだろう。

「それでね、あなたに迷惑を掛けたお詫びなんだけど」

「そんなの別にいいって言ったのに」

 律儀というか義理堅いというか。エリザベートらしいっちゃらしいけど。

「そういう訳には行かないでしょ。色々考えたんだけどさ、やっぱりこれしかないかなって思ったんだよね」

「なになに?」

「アランを貴族にする」

「はい!?」

 私は意味が分からずポカンとしてアホみたいに聞き返していた。
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