146 / 276
146
しおりを挟む
アランを送り出した後、私はマックスをあやしてくれているベビーシッターの元へと向かった。
ちなみにこのベビーシッターは、子育てを終えたベテランの女性である。
「ご苦労様。どんな様子?」
どうやらマックスは眠ってるようなんで囁くような声で尋ねる。
「はい。お腹を空かせていたみたいで、幼児食を与えたら満足したかのように眠りました」
「そう。あ、着替えさせてくれたのね? ありがとう」
「いえいえ、ウチの子の小さい時の服が合って良かったです」
「その...聞き難いんだけど...虐待された後とか無かった?」
「いえ、特には。先程お話しました通り、ちょっと栄養失調気味であることを除けば健康面の問題は無さそうに見えますね」
「そう、良かったわ...いえ、良くないわね...子供にちゃんとした食事を与えないのは立派な虐待だもの...」
「そうですね...」
「お金はいくら掛かっても構わないわ。この子が満足するような食事を与えて貰える? ウチの料理長にそう言っておくから、遠慮しないでガンガン注文してちょうだい?」
「分かりました」
「それと追加料金を払うから、今日は泊まって行ってくれないかしら? お家に連絡が必要ならすぐ手配するから」
「構いませんよ。元よりそのつもりでしたし。家族にも予めそう言ってありますからご安心を」
「恩に着るわ。ありがとう」
◇◇◇
「ただいま...」
夜になって疲れ切った様子のアランが戻って来た。
「お帰り。その様子じゃ収穫無しみたいね?」
「お察しの通り...あの野郎、どこに雲隠れしやがったんだか...足取りが全く掴めなくてね...参ったよ...」
「そうなのね...」
「町の情報屋にも当たってみたんだけど、これといった情報は無し...まぁ、引き続き調査するよう頼んでおいて来たけどね...」
「なにか出るといいわね...」
「あぁそれと、大した情報じゃないけど野郎が例の娼館を選んだ理由は分かったよ」
「どういうこと?」
「もう一度娼婦に聞いてみたんだけどさ。野郎の容姿と名前を伝えたところ、以前何度か相手をしたことのある客だって言ってた」
「あぁ、それで店の名前と女の子の名前をスラスラ言えた訳ね?」
「そういうこと。まぁ、それが分かったところでどうなるってもんでも無いけどね...」
「確かに...」
行き当たりばったりの行動に見えて、実はちゃんと計画的だったってことが分かったぐらいだもんね。
「ハンスのおやっさんはまだ?」
「えぇ、戻ってないわ。明日になるかもね」
「そうなんだ...」
「アラン、もう遅いし今日の所はこれまでにして、アンタは少し休みなさい」
「分かった...そうさせて貰うよ...」
ちなみにこのベビーシッターは、子育てを終えたベテランの女性である。
「ご苦労様。どんな様子?」
どうやらマックスは眠ってるようなんで囁くような声で尋ねる。
「はい。お腹を空かせていたみたいで、幼児食を与えたら満足したかのように眠りました」
「そう。あ、着替えさせてくれたのね? ありがとう」
「いえいえ、ウチの子の小さい時の服が合って良かったです」
「その...聞き難いんだけど...虐待された後とか無かった?」
「いえ、特には。先程お話しました通り、ちょっと栄養失調気味であることを除けば健康面の問題は無さそうに見えますね」
「そう、良かったわ...いえ、良くないわね...子供にちゃんとした食事を与えないのは立派な虐待だもの...」
「そうですね...」
「お金はいくら掛かっても構わないわ。この子が満足するような食事を与えて貰える? ウチの料理長にそう言っておくから、遠慮しないでガンガン注文してちょうだい?」
「分かりました」
「それと追加料金を払うから、今日は泊まって行ってくれないかしら? お家に連絡が必要ならすぐ手配するから」
「構いませんよ。元よりそのつもりでしたし。家族にも予めそう言ってありますからご安心を」
「恩に着るわ。ありがとう」
◇◇◇
「ただいま...」
夜になって疲れ切った様子のアランが戻って来た。
「お帰り。その様子じゃ収穫無しみたいね?」
「お察しの通り...あの野郎、どこに雲隠れしやがったんだか...足取りが全く掴めなくてね...参ったよ...」
「そうなのね...」
「町の情報屋にも当たってみたんだけど、これといった情報は無し...まぁ、引き続き調査するよう頼んでおいて来たけどね...」
「なにか出るといいわね...」
「あぁそれと、大した情報じゃないけど野郎が例の娼館を選んだ理由は分かったよ」
「どういうこと?」
「もう一度娼婦に聞いてみたんだけどさ。野郎の容姿と名前を伝えたところ、以前何度か相手をしたことのある客だって言ってた」
「あぁ、それで店の名前と女の子の名前をスラスラ言えた訳ね?」
「そういうこと。まぁ、それが分かったところでどうなるってもんでも無いけどね...」
「確かに...」
行き当たりばったりの行動に見えて、実はちゃんと計画的だったってことが分かったぐらいだもんね。
「ハンスのおやっさんはまだ?」
「えぇ、戻ってないわ。明日になるかもね」
「そうなんだ...」
「アラン、もう遅いし今日の所はこれまでにして、アンタは少し休みなさい」
「分かった...そうさせて貰うよ...」
22
お気に入りに追加
3,469
あなたにおすすめの小説
拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら
みおな
恋愛
子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。
公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。
クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。
クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。
「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」
「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」
「ファンティーヌが」
「ファンティーヌが」
だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。
「私のことはお気になさらず」
私の愛した婚約者は死にました〜過去は捨てましたので自由に生きます〜
みおな
恋愛
大好きだった人。
一目惚れだった。だから、あの人が婚約者になって、本当に嬉しかった。
なのに、私の友人と愛を交わしていたなんて。
もう誰も信じられない。
愛されない花嫁は初夜を一人で過ごす
リオール
恋愛
「俺はお前を妻と思わないし愛する事もない」
夫となったバジルはそう言って部屋を出て行った。妻となったアルビナは、初夜を一人で過ごすこととなる。
後に夫から聞かされた衝撃の事実。
アルビナは夫への復讐に、静かに心を燃やすのだった。
※シリアスです。
※ざまあが行き過ぎ・過剰だといったご意見を頂戴しております。年齢制限は設定しておりませんが、お読みになる場合は自己責任でお願い致します。
逃げた先で見つけた幸せはずっと一緒に。
しゃーりん
恋愛
侯爵家の跡継ぎにも関わらず幼いころから虐げられてきたローレンス。
父の望む相手と結婚したものの妻は義弟の恋人で、妻に子供ができればローレンスは用済みになると知り、家出をする。
旅先で出会ったメロディーナ。嫁ぎ先に向かっているという彼女と一晩を過ごした。
陰からメロディーナを見守ろうと、彼女の嫁ぎ先の近くに住むことにする。
やがて夫を亡くした彼女が嫁ぎ先から追い出された。近くに住んでいたことを気持ち悪く思われることを恐れて記憶喪失と偽って彼女と結婚する。
平民として幸せに暮らしていたが貴族の知り合いに見つかり、妻だった義弟の恋人が子供を産んでいたと知る。
その子供は誰の子か。ローレンスの子でなければ乗っ取りなのではないかと言われたが、ローレンスは乗っ取りを承知で家出したため戻る気はない。
しかし、乗っ取りが暴かれて侯爵家に戻るように言われるお話です。
あなたには、この程度のこと、だったのかもしれませんが。
ふまさ
恋愛
楽しみにしていた、パーティー。けれどその場は、信じられないほどに凍り付いていた。
でも。
愉快そうに声を上げて笑う者が、一人、いた。
【完結】もう誰にも恋なんてしないと誓った
Mimi
恋愛
声を出すこともなく、ふたりを見つめていた。
わたしにとって、恋人と親友だったふたりだ。
今日まで身近だったふたりは。
今日から一番遠いふたりになった。
*****
伯爵家の後継者シンシアは、友人アイリスから交際相手としてお薦めだと、幼馴染みの侯爵令息キャメロンを紹介された。
徐々に親しくなっていくシンシアとキャメロンに婚約の話がまとまり掛ける。
シンシアの誕生日の婚約披露パーティーが近付いた夏休み前のある日、シンシアは急ぐキャメロンを見掛けて彼の後を追い、そして見てしまった。
お互いにただの幼馴染みだと口にしていた恋人と親友の口づけを……
* 無自覚の上から目線
* 幼馴染みという特別感
* 失くしてからの後悔
幼馴染みカップルの当て馬にされてしまった伯爵令嬢、してしまった親友視点のお話です。
中盤は略奪した親友側の視点が続きますが、当て馬令嬢がヒロインです。
本編完結後に、力量不足故の幕間を書き加えており、最終話と重複しています。
ご了承下さいませ。
他サイトにも公開中です
【完結】愛され公爵令嬢は穏やかに微笑む
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
恋愛
「シモーニ公爵令嬢、ジェラルディーナ! 私はお前との婚約を破棄する。この宣言は覆らぬと思え!!」
婚約者である王太子殿下ヴァレンテ様からの突然の拒絶に、立ち尽くすしかありませんでした。王妃になるべく育てられた私の、存在価値を否定するお言葉です。あまりの衝撃に意識を手放した私は、もう生きる意味も分からくなっていました。
婚約破棄されたシモーニ公爵令嬢ジェラルディーナ、彼女のその後の人生は思わぬ方向へ転がり続ける。優しい彼女の功績に助けられた人々による、恩返しが始まった。まるで童話のように、受け身の公爵令嬢は次々と幸運を手にしていく。
ハッピーエンド確定
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2022/10/01 FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、二次選考通過
2022/07/29 FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、一次選考通過
2022/02/15 小説家になろう 異世界恋愛(日間)71位
2022/02/12 完結
2021/11/30 小説家になろう 異世界恋愛(日間)26位
2021/11/29 アルファポリス HOT2位
2021/12/03 カクヨム 恋愛(週間)6位
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる