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 程無くしてベビーシッターがやって来たので、マックスを託した私は執務室に戻った。

 すかさずハンスがお茶を入れてくれる。

「ありがとう」

「子供の方は大丈夫ですか?」

「えぇ、ちょっと栄養失調気味ではあるけど、特に健康面では問題無さそうだってベビーシッターは言ってたわ」

「それは良かったです」

「ねぇ、ハンス、ちょっとお願いがあるの。パトリックの領地のことを調べてくれない? 領主自らが仕事をほっぽり出して女を探しに来るなんて普通有り得ないわ。誰か人を雇うのが普通でしょう? そうしなかった、あるいはそう出来なかった理由はなんなのか知りたいのよ」

「なるほど...畏まりました。早速行って参ります」

「お願いね」


◇◇◇


 お昼頃、アランが戻って来た。たった一人で。

「お帰り。どうだった?」

「お嬢、ゴメン...」

「それはなんに対しての謝罪?」

「パトリックに逃げられた...」

「うん、それはアンタが一人で帰って来たからすぐ分かったわ。どんな状況だったの?」

「アイツが言ってた女の知り合いが居るっていう娼館に二人で入ったんだけど、知り合いだっていう娼婦はちょうどたまたま仕事中だったんだよ。仕方なく待ってたんだけど、その内にパトリックのヤツがトイレに行くって言い出して、部屋を出て行ったっきりそのまま戻って来なかった...」

「なるほど。見事にしてヤラれたわね」

「面目ない...」

「ちなみにその娼婦はなにか知ってたの?」

「いいや。マーガレットなんて女には会ったことも無ければ聞いたことも無いって」

「知り合いですらなかったってこと?」

「どうやらそうみたい」

「それもおかしな話ね...」

「うん、俺もそう思った。手が込んでる割には最後が抜けてるみたいな。こう、なんて言ったらいいのかな...」

「チグハグな感じ?」

「そうそれ! まさしくそんな感じ! 計画性が有るんだか無いんだか良く分かんない感じ」

「やっぱりね...私が感じた通りだわ...」

「お嬢はいつ頃からその違和感に気付いてたの?」

「アイツが子連れでやって来た時からよ。最初は同情買うためかと思ったけど、それにしたって不自然だと思ってね。普通はやらないでしょ?」

「確かに...さすがはお嬢だね...それなのに俺は...本当にゴメン...」

「謝る暇があったらパトリックを探しに行きなさい。今、ハンスにパトリックの領地のことを調べて貰ってるから。そっちの方でなにか掴めるかも知れないけど、それはそれとして今できることをやりなさい」

「了解...」
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