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132 (第三者視点)
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アンリエットの反対空しく、エリザベートとアランは囮作戦を明日決行すると決意してしまった。
どうあっても二人を翻意させられないと悟ったアンリエットは、それならばとばかりに妥協案というか新提案をした。
「分かった。そこまで言うならもう止めない。その代わり私も行くからね?」
「えっ!? ちょっと待って! ちょっと待って! アンリエット、気は確かになの!?」
「いやいやお嬢、それじゃ囮作戦の意味が無くなるんだけど...」
二人が慌てて止めようとするのは当然である。
「分かってるわよ、そんなこと。だから私も変装して行くんじゃない」
「変装!? 誰に!?」
「エリザベートに決まってるでしょ? 金髪のカツラを被って大き目の帽子とサングラスで顔を隠せば、私がエリザベートに成り済ますことも可能になるでしょう? その逆をこれからやろうとしているならば尚更ね」
「まぁ確かにそうなんだけど...」
「囮作戦の成功率を上げるための、謂わば囮の囮作戦ってヤツよ!」
ドヤ顔で言い切ったアンリエットに二人は頭を抱えた。
「なんじゃそりゃ!? お嬢、そんなの必要無いって!」
「アンリエット、気持ちは嬉しいんだけど...」
二人はなんとかアンリエットを翻意させようとするが、
「まぁ最後まで聞きなさい。例えばエリザベートに成り済ました私が、町の右側で派手な格好をしてウロウロしているとするじゃない? 当然目立つから連中も気付くわよね? そうなると連中は右側には近寄らなくなる。その間に私に成り済ましたエリザベートが町の反対側、左側に現れる。しかもまたまた目立つように派手な格好でウロウロする。どうよこれ? 連中が簡単に釣れると思わない?」
そう言われてみたら二人はしばし考え込んでしまった。中々に良い作戦だと思っているのかも知れない。
ややあってアランが応える。
「確かに魅力的な提案ではあるけど、やっぱダメだよ。お嬢が危険な目に遭う可能性が僅かでもある以上、護衛としては許可できない。ましてや今回、言い出しっぺの俺は責任持ってエリザベート嬢の側に居なきゃいけない。ただでさえ俺がお嬢の側に居られないのは不安で仕方がないってのに、この上外出までされた日にゃ心配で心配で作戦どころじゃなくなっちまうよ。だからお嬢は屋敷から一歩も出ないで欲しい」
と切実な思いを熱く語ったのだが...
「大丈夫よ。ハンスに付いて来て貰うから。少なくともあんたよりは頼りになりそうだわ」
アンリエットはあっけらかんとそう言った。
「酷ぇな、お嬢...」
どうあっても二人を翻意させられないと悟ったアンリエットは、それならばとばかりに妥協案というか新提案をした。
「分かった。そこまで言うならもう止めない。その代わり私も行くからね?」
「えっ!? ちょっと待って! ちょっと待って! アンリエット、気は確かになの!?」
「いやいやお嬢、それじゃ囮作戦の意味が無くなるんだけど...」
二人が慌てて止めようとするのは当然である。
「分かってるわよ、そんなこと。だから私も変装して行くんじゃない」
「変装!? 誰に!?」
「エリザベートに決まってるでしょ? 金髪のカツラを被って大き目の帽子とサングラスで顔を隠せば、私がエリザベートに成り済ますことも可能になるでしょう? その逆をこれからやろうとしているならば尚更ね」
「まぁ確かにそうなんだけど...」
「囮作戦の成功率を上げるための、謂わば囮の囮作戦ってヤツよ!」
ドヤ顔で言い切ったアンリエットに二人は頭を抱えた。
「なんじゃそりゃ!? お嬢、そんなの必要無いって!」
「アンリエット、気持ちは嬉しいんだけど...」
二人はなんとかアンリエットを翻意させようとするが、
「まぁ最後まで聞きなさい。例えばエリザベートに成り済ました私が、町の右側で派手な格好をしてウロウロしているとするじゃない? 当然目立つから連中も気付くわよね? そうなると連中は右側には近寄らなくなる。その間に私に成り済ましたエリザベートが町の反対側、左側に現れる。しかもまたまた目立つように派手な格好でウロウロする。どうよこれ? 連中が簡単に釣れると思わない?」
そう言われてみたら二人はしばし考え込んでしまった。中々に良い作戦だと思っているのかも知れない。
ややあってアランが応える。
「確かに魅力的な提案ではあるけど、やっぱダメだよ。お嬢が危険な目に遭う可能性が僅かでもある以上、護衛としては許可できない。ましてや今回、言い出しっぺの俺は責任持ってエリザベート嬢の側に居なきゃいけない。ただでさえ俺がお嬢の側に居られないのは不安で仕方がないってのに、この上外出までされた日にゃ心配で心配で作戦どころじゃなくなっちまうよ。だからお嬢は屋敷から一歩も出ないで欲しい」
と切実な思いを熱く語ったのだが...
「大丈夫よ。ハンスに付いて来て貰うから。少なくともあんたよりは頼りになりそうだわ」
アンリエットはあっけらかんとそう言った。
「酷ぇな、お嬢...」
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