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「まぁ、潜伏場所に関してはあんま自信無いけど、あのお坊っちゃんの目的っていうか動機ってのはハッキリしてるって自信持って言えるよね~」

「ふうん、そうなんだ? それで? 目的や動機ってなんなの?」

「お嬢、なんでそんなに他人事みたいなのさ...」

「ほへっ!?」

「目的も動機もお嬢を手に入れることに決まってんじゃん...」

「ブホッ! えぇ~!? わ、私!? わ、私のせいなの~!?」

 私はビックリして飲んでいたお茶を思いっきり吹き出してしまった。

「いやいや、お嬢のせいだとは言ってないじゃん? あくまでもお坊っちゃんの思考がお嬢に一直線に向いてるっていうだけ。お坊っちゃんの仕出かしたことに関して、お嬢が責任を感じることはなんも無いって。全ての責任はお坊っちゃんにあるんだからさ?」

「それなら良いんだけど...いやいや! 良くない良くない! ねぇ、アラン...本当にそうなんだとしたら...私、超怖いんだけど...」

 私は薄ら寒くなって来た体を両腕で抱き締めた。

「確かにそうだよね...ここまで来ると妄執というか執念みたいなものを感じちゃうよね...」

「アラン...私を守ってね...」

「当然じゃん。任しといてよ。なにがあったってお嬢を守り抜くよ?」

「ありがと...」

「お嬢、当面は外出控えて? 屋敷の中なら安全だから」

「うん、分かった...」

 私は素直に頷いた。


◇◇◇


 エリザベートが目を覚ましたのは翌日だった。

「アンリエット...迷惑ばっかり掛けてゴメンなさい...」 

「いいのよ。気にしないで。それより体調はどう?」

「お陰様で大分良くなったわ。ありがとう」

「良かった。心配したのよ?」

「心配掛けてゴメンね」

「それでエリザベート、これからどうするの?」

「まずはバカ兄の痕跡を探るわ。もっとも、おおっぴらに出来ない以上あんまり人手も割けないってのが現状なんだけどね...」

「ウチの連中で良かったら使ってちょうだい」

「ありがとう。遠慮なくそうさせて貰うわね。何から何まで申し訳ないけど...」

「だから気にしないでって言ったでしょ? それと有力な手掛かりとは言えないかも知れないけど、足掛かりになりそうな情報ならあるわ」

「本当!? どんな!?」

 そこで私はアランの考えを説明した。

「なるほど...娼館っていうのは盲点だったわね...」

「まぁ、本当にそこに居るかは微妙かも知んないけどね」

「でも当たってみる価値はありそうね。ただ問題は、そういった場所に慣れている人員が居るかどうかだけど...」

「それなら適任者が居るわ。アラン、頼んだわね?」

「えぇ~...」

「えぇ~ じゃない。言い出しっぺのあんたが行って来なさい」

「お嬢、横暴~ 職務改善要求~ 組合に訴えるぞ~」

「うっさい。さっさと行け」

「へいへい...」
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