我が家の乗っ取りを企む婚約者とその幼馴染みに鉄槌を下します!

真理亜

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121 (第三者視点4)

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「えっ!? パトリック!? なんでアンタがこんなとこに居んのよ!?」

 アンリエットがビックリして尋ねる。

「え、え~と...そ、それはだな...」

 パトリックは地面に転がっている破落戸共を見ながら、役立たずめ! と内心で罵っていた。あれだけ自信満々に言っといてこの体たらくだ。愚痴りたくなるのも当然だろう。だがその前に、取り敢えずアンリエットには言い訳をしなければならない。

「ぐ、偶然この町に用があって来たんだよ。そ、そしたら偶然二人が絡まれているのを見掛けたもんで助けようと駆け付けたんだ」

「ふうん、偶然ねぇ...」

 苦しい言い訳を捻り出したが、アンリエットは疑惑の目を向けて来る。どうやら信じてはいないようだ。まぁそれも当然だろう。そんな偶然そうそうある訳がない。パトリックは脂汗を掻きながら焦り捲っていた。その時だった。

「うぅ...す、済まねぇ、旦那...コイツめっちゃ強ぇ...」

 破落戸共の一人が息も絶え絶えにそんなことを口ずさむ。

「ば、バカ! よ、余計なこと言うな!...あっ!」

 パトリックは慌てて口を塞いだがもう遅い。

「はは~ん」

 得心したように薄ら笑いを浮かべたアランが破落戸共の一人に問い掛ける。

「おい、お前らを雇ったのはあの旦那で間違いないな?」

「あ、あぁ、そうだ...」

「なんて言われた?」

「お、男の方だけコテンパンにしろと...お、女には手を出すなと...」

「ちょっとパトリック、これは一体どういうことなの!?」

 アンリエットが怒りを滲ませながら詰め寄る。

「あぐ...その...あの...」

 パトリックは完全に目が泳いでしまった。

「お嬢、恐らくだけど吊り橋効果を狙ったんじゃないの?」

 アランが冷静に分析する。

「あぁ、そういうこと。自作自演しといて自分は窮地を救ったヒーローを演じようとしたって訳ね。バカじゃないの? 底が浅過ぎるわよ」

 アンリエットに一刀両断されたパトリックは俯いてしまった。

「お嬢、コイツどうする?」

「そうね。暴行教唆の現行犯として官憲に突き出しましょうか」

 それはマズい! 家名に傷が付く! 焦ったパトリックは後先考えず逃げようとした。だが足が縺れてコケた。

「グエッ!」

 情けない声を上げながら倒れ込んだパトリックのコートのポケットから、なにやら薬瓶のようなものがコロコロ転がって出て来た。

 それはアランの足元まで転がって来たので、思わずアランは拾い上げてから、

「やれやれ、なにやってんだか...ん? おい、なんだこれは?」

 と呆れながらパトリックに詰問した。
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