我が家の乗っ取りを企む婚約者とその幼馴染みに鉄槌を下します!

真理亜

文字の大きさ
上 下
118 / 276

118 (第三者視点)

しおりを挟む
 パトリックはまだアンリエットのことを諦め切れないでいた。

 もう一度会いたいと思ったが、二度と顔を見せるなと言われた手前、屋敷に赴いても門前払いされて終わりだろう。

 ではどうするか? 待ち伏せするしかない。そう、ウィリアムがやっていたように。この二人、実の兄弟だけあって思考回路が同じなのだった。

 そして物陰に隠れ、アンリエットの屋敷を伺っていたパトリックの目に、見知らぬ訪問者の姿が映った。なぜか赤いバラの花束をこれでもかというほど抱えている男だ。

 そう、パトリックが知らないのも無理はない。それはアンリエットの返事を催促しに来たクリフトファーの姿だったのだから。

 だが正体は知らずとも、赤いバラを女性に贈るということの意味は分かる。あの男が誰だか知らないが、ヤツはアンリエットに好意を持っているに違いない。

 そう結論付けたパトリックは焦った。アンリエットがどう応えるのか分からないが、先を越されてしまったら元も子もない。

 なんとかしなければ。そう思ったパトリックは、取り敢えず見知らぬ男を尾行することにした。

 アンリエットの屋敷を出たその男は、真っ直ぐ城下町に向かって行く。やがてとある高級ホテルに入って行った。どうやらこのホテルに泊まっているらしい。パトリックも直ぐ様チェックインした。


◇◇◇


 そして翌日の朝、ホテルのロビーで新聞を読みながら待ち伏せしていると、昨日の男が現れた。パトリックは話し掛けようとして一瞬躊躇った。どう挨拶すればいい? なんて聞けばいい?

 そんな逡巡をしている間に、男はパトリックの目の前を足早に通り過ぎて行ってしまった。舌打ちしたパトリックは、仕方なく昨日と同じように男の尾行をすることにした。

 すると男は花屋に立ち寄った。そして昨日と同じように大量の赤いバラの花束を抱えて出て来た。またアンリエットに贈るつもりなんだろう。

 男がアンリエットの屋敷に向かって歩き始めたのを確認したパトリックは、意を決して男に話し掛けようと動き出した。

 その時だった。

「えっ!? あれはアンリエット!?」

 間違いない。アンリエットの家の馬車だ。男とすれ違うようにして町中へと向かって行く。パトリックは踵を返して馬車を追い掛けた。


◇◇◇


 アンリエットは従者を一人連れて町中を散策している。話し掛けたかったが従者が目を光らせている。

 邪魔だな...アイツをどうにかしないと...パトリックは物騒な思考に囚われてしまった。

 町中を離れ、パトリックは裏通りに入って行った。どこの町にだって金で動く破落戸はゴロゴロ居る。

 交渉次第でなんとかなるだろう。パトリックはそう考えながら裏通りを物色し始めた。

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

姉の婚約者であるはずの第一王子に「お前はとても優秀だそうだから、婚約者にしてやってもいい」と言われました。

ふまさ
恋愛
「お前はとても優秀だそうだから、婚約者にしてやってもいい」  ある日の休日。家族に疎まれ、蔑まれながら育ったマイラに、第一王子であり、姉の婚約者であるはずのヘイデンがそう告げた。その隣で、姉のパメラが偉そうにふんぞりかえる。 「ぞんぶんに感謝してよ、マイラ。あたしがヘイデン殿下に口添えしたんだから!」  一方的に条件を押し付けられ、望まぬまま、第一王子の婚約者となったマイラは、それでもつかの間の安らぎを手に入れ、歓喜する。  だって。  ──これ以上の幸せがあるなんて、知らなかったから。

真実の愛がどうなろうと関係ありません。

希猫 ゆうみ
恋愛
伯爵令息サディアスはメイドのリディと恋に落ちた。 婚約者であった伯爵令嬢フェルネは無残にも婚約を解消されてしまう。 「僕はリディと真実の愛を貫く。誰にも邪魔はさせない!」 サディアスの両親エヴァンズ伯爵夫妻は激怒し、息子を勘当、追放する。 それもそのはずで、フェルネは王家の血を引く名門貴族パートランド伯爵家の一人娘だった。 サディアスからの一方的な婚約解消は決して許されない裏切りだったのだ。 一ヶ月後、愛を信じないフェルネに新たな求婚者が現れる。 若きバラクロフ侯爵レジナルド。 「あら、あなたも真実の愛を実らせようって仰いますの?」 フェルネの曾祖母シャーリンとレジナルドの祖父アルフォンス卿には悲恋の歴史がある。 「子孫の我々が結婚しようと関係ない。聡明な妻が欲しいだけだ」 互いに塩対応だったはずが、気づくとクーデレ夫婦になっていたフェルネとレジナルド。 その頃、真実の愛を貫いたはずのサディアスは…… (予定より長くなってしまった為、完結に伴い短編→長編に変更しました)

そちらがその気なら、こちらもそれなりに。

直野 紀伊路
恋愛
公爵令嬢アレクシアの婚約者・第一王子のヘイリーは、ある日、「子爵令嬢との真実の愛を見つけた!」としてアレクシアに婚約破棄を突き付ける。 それだけならまだ良かったのだが、よりにもよって二人はアレクシアに冤罪をふっかけてきた。 真摯に謝罪するなら潔く身を引こうと思っていたアレクシアだったが、「自分達の愛の為に人を貶めることを厭わないような人達に、遠慮することはないよね♪」と二人を返り討ちにすることにした。 ※小説家になろう様で掲載していたお話のリメイクになります。 リメイクですが土台だけ残したフルリメイクなので、もはや別のお話になっております。 ※カクヨム様、エブリスタ様でも掲載中。 …ºo。✵…𖧷''☛Thank you ☚″𖧷…✵。oº… ☻2021.04.23 183,747pt/24h☻ ★HOTランキング2位 ★人気ランキング7位 たくさんの方にお読みいただけてほんと嬉しいです(*^^*) ありがとうございます!

【完】今流行りの婚約破棄に婚約者が乗っかり破棄してきました!

さこの
恋愛
 お前とは婚約を破棄する! と高々と宣言する婚約者様。そうですね。今流行っていますものね。愛のない結婚はしたくない! というやつでわすわね。  笑顔で受けようかしら  ……それとも泣いて縋る?   それではでは後者で! 彼は単純で自分に酔っているだけで流行りに乗っただけですもの。  婚約破棄も恐らく破棄する俺カッコいい! くらいの気持ちのはず! なのでか弱いフリしてこちらから振ってあげましょう! 全11話です。執筆済み ホットランキング入りありがとうございます 2021/09/07(* ᴗ ᴗ)

悪女の私を愛さないと言ったのはあなたでしょう?今さら口説かれても困るので、さっさと離縁して頂けますか?

輝く魔法
恋愛
システィーナ・エヴァンスは王太子のキース・ジルベルトの婚約者として日々王妃教育に勤しみ努力していた。だがある日、妹のリリーナに嵌められ身に覚えの無い罪で婚約破棄を申し込まれる。だが、あまりにも無能な王太子のおかげで(?)冤罪は晴れ、正式に婚約も破棄される。そんな時隣国の皇太子、ユージン・ステライトから縁談が申し込まれる。もしかしたら彼に愛されるかもしれないー。そんな淡い期待を抱いて嫁いだが、ユージンもシスティーナの悪い噂を信じているようでー? 「今さら口説かれても困るんですけど…。」 後半はがっつり口説いてくる皇太子ですが結ばれません⭐︎でも一応恋愛要素はあります!ざまぁメインのラブコメって感じかなぁ。そういうのはちょっと…とか嫌だなって人はブラウザバックをお願いします(o^^o)更新も遅めかもなので続きが気になるって方は気長に待っててください。なお、これが初作品ですエヘヘ(о´∀`о) 優しい感想待ってます♪

わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの。

朝霧心惺
恋愛
「リリーシア・ソフィア・リーラー。冷酷卑劣な守銭奴女め、今この瞬間を持って俺は、貴様との婚約を破棄する!!」  テオドール・ライリッヒ・クロイツ侯爵令息に高らかと告げられた言葉に、リリーシアは純白の髪を靡かせ高圧的に微笑みながら首を傾げる。 「誰と誰の婚約ですって?」 「俺と!お前のだよ!!」  怒り心頭のテオドールに向け、リリーシアは真実を告げる。 「わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの」

あなたには、この程度のこと、だったのかもしれませんが。

ふまさ
恋愛
 楽しみにしていた、パーティー。けれどその場は、信じられないほどに凍り付いていた。  でも。  愉快そうに声を上げて笑う者が、一人、いた。

姉の厄介さは叔母譲りでしたが、嘘のようにあっさりと私の人生からいなくなりました

珠宮さくら
恋愛
イヴォンヌ・ロカンクールは、自分宛てに届いたものを勝手に開けてしまう姉に悩まされていた。 それも、イヴォンヌの婚約者からの贈り物で、それを阻止しようとする使用人たちが悪戦苦闘しているのを心配して、諦めるしかなくなっていた。 それが日常となってしまい、イヴォンヌの心が疲弊していく一方となっていたところで、そこから目まぐるしく変化していくとは思いもしなかった。

処理中です...