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「そんでどうすんの? 予定してた通り明日行くん?」
「ん~...取り敢えず止めとく。私からの手紙を読んだら、間違いなくエリザベート本人がやって来るでしょうから、それまでは待つことにするわ」
「あぁ、なるほど~ エリザベート嬢が来る前に返事したりなんかしたら、それでショックを受けたクリフトファー様がどっかに行っちゃうかも知んないもんね~」
「そういうことよ。もしそうなったりしたら、せっかくやって来たエリザベートに申し訳が立たないわ」
「了解~ じゃあ明日のお出掛けは無しってことで~」
アランとそんな会話をしていた時、ハンスがやって来た。
「お嬢様」
「あ、ゴメンなさい。休憩時間とっくに終わってたわね。すぐ行くわ」
「いえ、そうではなく。お客様がいらっしゃってます」
「お客? 誰?」
「先日もいらっしゃったクリフトファー殿です」
ハンスの言葉に私とアランは目を合わせた。なんともまぁタイムリーなことで。噂をすれば影とは良く言ったもんだね。
しかし困ったな。クリフトファー様が訪ねて来た用件なんて分かり切っている。私からの返事を聞くためだ。
だがそれにしたって性急過ぎないか? 再会したのは一昨日だぞ? と、エリザベートからの手紙を読む前だったらそう思ったことだろう。
事情が分かった今となっては、クリフトファー様の性急な行動にも納得が行く。きっとあまり長い間一箇所には居たくないんだろうな。追っ手が掛かっている身だっていう自覚はあるだろうから。それが逃亡者の心理と言ったところか。
だからここは私としても慎重に行動せねばならない。対応を誤ったら逃走させてしまいかねない。なので、
「今日は留守にしていると言って帰って貰って?」
私は取り敢えず居留守を使って時間稼ぎすることにした。
「畏まりましたが...お嬢様、大丈夫なんですか? もし困った輩に付き纏われているのなら、私めが力尽くで対処致しますが?」
ハンスが武闘派執事の顔を覗かして来た。だから私は慌てて、
「大丈夫よ。そんなんじゃあないから。心配しないで。ただ今日はちょっと会いたくない気分って言うだけ」
「畏まりました。ではそのように」
ハンスが出て行った後、アランがボソッと呟いた。
「いっそのこと、ハンスのおやっさんに拘束して貰えばいいんじゃね? そんでエリザベート嬢の到着を待つってのはどうよ?」
「そんなこと出来る訳ないでしょ? クリフトファー様の罪を公爵家が公にしない限り、どこまで行っても単なる家出人扱いなんだから、私達が拘束して良い理由なんてどこにもないのよ?」
「ふうん、そういうもんなんだ~」
「ん~...取り敢えず止めとく。私からの手紙を読んだら、間違いなくエリザベート本人がやって来るでしょうから、それまでは待つことにするわ」
「あぁ、なるほど~ エリザベート嬢が来る前に返事したりなんかしたら、それでショックを受けたクリフトファー様がどっかに行っちゃうかも知んないもんね~」
「そういうことよ。もしそうなったりしたら、せっかくやって来たエリザベートに申し訳が立たないわ」
「了解~ じゃあ明日のお出掛けは無しってことで~」
アランとそんな会話をしていた時、ハンスがやって来た。
「お嬢様」
「あ、ゴメンなさい。休憩時間とっくに終わってたわね。すぐ行くわ」
「いえ、そうではなく。お客様がいらっしゃってます」
「お客? 誰?」
「先日もいらっしゃったクリフトファー殿です」
ハンスの言葉に私とアランは目を合わせた。なんともまぁタイムリーなことで。噂をすれば影とは良く言ったもんだね。
しかし困ったな。クリフトファー様が訪ねて来た用件なんて分かり切っている。私からの返事を聞くためだ。
だがそれにしたって性急過ぎないか? 再会したのは一昨日だぞ? と、エリザベートからの手紙を読む前だったらそう思ったことだろう。
事情が分かった今となっては、クリフトファー様の性急な行動にも納得が行く。きっとあまり長い間一箇所には居たくないんだろうな。追っ手が掛かっている身だっていう自覚はあるだろうから。それが逃亡者の心理と言ったところか。
だからここは私としても慎重に行動せねばならない。対応を誤ったら逃走させてしまいかねない。なので、
「今日は留守にしていると言って帰って貰って?」
私は取り敢えず居留守を使って時間稼ぎすることにした。
「畏まりましたが...お嬢様、大丈夫なんですか? もし困った輩に付き纏われているのなら、私めが力尽くで対処致しますが?」
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「大丈夫よ。そんなんじゃあないから。心配しないで。ただ今日はちょっと会いたくない気分って言うだけ」
「畏まりました。ではそのように」
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「いっそのこと、ハンスのおやっさんに拘束して貰えばいいんじゃね? そんでエリザベート嬢の到着を待つってのはどうよ?」
「そんなこと出来る訳ないでしょ? クリフトファー様の罪を公爵家が公にしない限り、どこまで行っても単なる家出人扱いなんだから、私達が拘束して良い理由なんてどこにもないのよ?」
「ふうん、そういうもんなんだ~」
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