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「そんでお嬢、クリフトファー様の所にはすぐ行くの? それともウチに呼び付ける?」
私はアランの問い掛けにちょっと考えてから、
「私の方から出向くことにするわ。泊まってるホテルは分かってるし。明日にでも行きましょう。今日は疲れたわ。それよりアラン、今から手紙を書くから出して来てくれる?」
「はいよ~ ちなみに誰に書くん?」
「エリザベートによ。クリフトファー様の居場所は知らせといた方がいいでしょ? 実の妹なんだからきっと心配してるわ」
「あのエリザベート嬢がそんな殊勝なタマかねぇ~」
「お黙り。アンタには分かんないだろうけど、エリザベートはああ見えて優しい娘なのよ。結構、涙脆かったりもするし」
「クリフトファー様のことを自業自得だとか、放っておきゃいいんだとか言ってた気がするけど?」
「まぁ、確かに...実際その通りだから否定しようがないかもね...ともあれ、それとこれとは話が別よ。家族なんだから心配ぐらいはしてるでしょ?」
「そういうもんすか~」
アランと軽口を叩き合いながら手紙を認めた私は、
「はいこれ。書き終わったから出して来て?」
「あいよ~」
アランが手紙を出しに部屋を出て行った後、入れ替わるようにしてハンスがやって来た。
「お嬢様、本日はどう致しますか?」
私はチラッと時計を確認した。もうすぐお昼になる時間だ。
「午後から引き継ぎを進めるわ。用意してちょうだい」
「畏まりました」
◇◇◇
「お嬢、手紙が来てる」
引き継ぎの休憩時間にアランが私宛の手紙を持って来た。
「誰から?」
「エリザベート嬢から」
「あら、なんとも良いタイミングで来たわね」
アランから手紙を受け取って読んでみる。
「ほらね、やっぱり心配してたわ。クリフトファー様がウチに来てないか聞いて来てる」
「ふうん、じゃあやっぱり手紙出しといて良かったんだね~」
「そう言ったじゃないの...うん?」
「お嬢、どしたん?」
「クリフトファー様...公爵家のお金を大量に持ち出して出奔したんだって...」
「あちゃ~ それじゃあ心配してるのはそのお金の方なんじゃないの~?」
「全くもって否定できないわね...」
道理でいつまでもホテルに泊まってるからとか言うはずだよ...お金には困ってないってことだもんね...一体どんだけ持ち出したのやら...
「お嬢、これは修羅場の予感~」
「楽しそうに言わないでちょうだいよ...」
私からの手紙を読んだエリザベートがどう行動するかなんて火を見るより明らかだ。
私は心の中でソッとクリフトファー様に手を合わせた。
私はアランの問い掛けにちょっと考えてから、
「私の方から出向くことにするわ。泊まってるホテルは分かってるし。明日にでも行きましょう。今日は疲れたわ。それよりアラン、今から手紙を書くから出して来てくれる?」
「はいよ~ ちなみに誰に書くん?」
「エリザベートによ。クリフトファー様の居場所は知らせといた方がいいでしょ? 実の妹なんだからきっと心配してるわ」
「あのエリザベート嬢がそんな殊勝なタマかねぇ~」
「お黙り。アンタには分かんないだろうけど、エリザベートはああ見えて優しい娘なのよ。結構、涙脆かったりもするし」
「クリフトファー様のことを自業自得だとか、放っておきゃいいんだとか言ってた気がするけど?」
「まぁ、確かに...実際その通りだから否定しようがないかもね...ともあれ、それとこれとは話が別よ。家族なんだから心配ぐらいはしてるでしょ?」
「そういうもんすか~」
アランと軽口を叩き合いながら手紙を認めた私は、
「はいこれ。書き終わったから出して来て?」
「あいよ~」
アランが手紙を出しに部屋を出て行った後、入れ替わるようにしてハンスがやって来た。
「お嬢様、本日はどう致しますか?」
私はチラッと時計を確認した。もうすぐお昼になる時間だ。
「午後から引き継ぎを進めるわ。用意してちょうだい」
「畏まりました」
◇◇◇
「お嬢、手紙が来てる」
引き継ぎの休憩時間にアランが私宛の手紙を持って来た。
「誰から?」
「エリザベート嬢から」
「あら、なんとも良いタイミングで来たわね」
アランから手紙を受け取って読んでみる。
「ほらね、やっぱり心配してたわ。クリフトファー様がウチに来てないか聞いて来てる」
「ふうん、じゃあやっぱり手紙出しといて良かったんだね~」
「そう言ったじゃないの...うん?」
「お嬢、どしたん?」
「クリフトファー様...公爵家のお金を大量に持ち出して出奔したんだって...」
「あちゃ~ それじゃあ心配してるのはそのお金の方なんじゃないの~?」
「全くもって否定できないわね...」
道理でいつまでもホテルに泊まってるからとか言うはずだよ...お金には困ってないってことだもんね...一体どんだけ持ち出したのやら...
「お嬢、これは修羅場の予感~」
「楽しそうに言わないでちょうだいよ...」
私からの手紙を読んだエリザベートがどう行動するかなんて火を見るより明らかだ。
私は心の中でソッとクリフトファー様に手を合わせた。
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