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112 (パトリック視点4)

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「あなたにはなにも迷惑掛けてないんだからさ。別に目くじら立てることないじゃないの?」

「そういう問題じゃない!」

「あら!? それじゃあなに!? もしかして嫉妬!?」

「ふざけるな!」

「あなたならもちろんタダでお相手するわよ? 久し振りに私のこと抱いてみる?」

「誰が抱くか!」

 汚らわしい! と続けようとした俺は、

「ママ~...」

 というか細い泣き声に思わず息を呑んだ。

「あらあら、ゴメンなさいねマックス。せっかくお昼寝してたのに。パパが五月蝿く騒ぐから起きちゃったのね。お~よちよち」

 そう言ってマーガレットはマックスをあやし始める。俺はなんとなくバツが悪くなって黙り込んでしまった。

 母親であるマーガレットに問題があるだけで子供のマックスにはなんの罪もない。ましてや、本当に俺の子かも知れないという可能性はまだ残ってはいる。

「騒いで悪かった...」

 俺は取り敢えず、マックスをもう一度寝かせ付けて戻って来たマーガレットに大人気なかったことを謝った。

「いいのよ。黙ってた私も悪かったんだし。それにね、あなたとの付き合いに打算的な部分があったことは否めないもの」

「打算的というと?」

「そりゃ子供を作ったことよ。分かるでしょ? それが娼婦にとってどれだけの決断だったか。ヘタすりゃ商売上がったりになって、親子二人路頭に迷うところだったのかも知れないのよ? それでも決断したのは一重にあなたが相手だったからなのよ?」

「それは...心底俺に惚れてるって意味じゃなく、俺の地位と財産が目当てだったってことだよな...」

「あら? 良く分かっているじゃないの?」

「あぁ、俺はそんな自惚れ屋じゃないからな...自分のことは良く分かってるさ...」

 俺は自虐気味にそう吐き捨てた。

「あら? 確かに最初はそうだったけど、次第に私は少しずつあなたに情が移って行ってたわよ?」

「そんなお為ごかしはどうでもいい。マーガレット、お前ストーカー男に付き纏わられているから助けて欲しいって言ってたよな? 結局あれもウソなんだよな?」

「あれは半分はウソで半分は本当よ。昔、私が養ってやってたヒモ男が居てね。ソイツは恩知らずなことに、私に黙ってフラリとこの町を出て行っちゃったのよ。ソイツがまたフラリと戻って来てね。付き纏わられちゃって往生してたのは事実よ。また養って欲しいなんて言ってんのよ? どの面下げてそんなこと言えるんだ! ふざけんな! って思うでしょ? それにね、そろそろ子育てしながら仕事するのが辛くなって来た時期だったから、これ幸いとばかりにあなたに泣き付いたって訳よ。まぁ遅かれ早かれそうするつもりだったから、ちょうど良いタイミングではあったわね」

 マーガレットは全く悪びれた様子もなくそう言った。
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