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110 (パトリック視点2)

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「困ってる? なにがあった?」

「俺と付き合えってしつこい客が居てね。断ったらお店の帰りに待ち伏せされたり、家を突き止められて付き纏われたりして...怖くなって来たんであなたを頼りに来たのよ。この子も怖がってるし。このままじゃお店にも通えないわ。商売上がったりよ」

「そうか...そりゃ大変だったな。取り敢えず、その男が諦めるまでウチの別荘に匿ってやろう」

「ありがとう! 助かるわ! ほらマックス、パパにお礼言って?」

「パパ、ありがとう...」

「いや、それはいいんだが...マーガレット、おおっぴらに俺の子だって言うのは止めてくれ」

「あ、そうだったわね。ゴメンなさい。気を付けるわ」

 口ではそう言ったが、匿った後に何度か様子を見に行くにつれ、自分の子供だと思うと段々と情が移っていくもので、気が付けば別荘に行くことが楽しみになっている自分が居た。

 最初は親子二人で暮らすのに必要最低限の金を渡していただけだったが、次第にその金額は増えて行った。だがそれもまた苦にならなくなって行った。

 そんな時だった。叩き出したウィリアムが金の無心に来た。このバカは何度縁を切ったと言っても聞きゃあしない。

 殴り飛ばして帰そうとかと思ったが、一応理由だけは聞いてやることにした。すると幼馴染みであるフィンレイ伯爵家のアンリエットが領地に帰って来ていると言う。

 これはチャンスかも知れないと思った。世間知らずなアンリエットを上手く誑し込めれば援助を引き出せるかも知れない。

 俺はウィリアムを叩き出した後、急いでフィンレイ伯爵家に向かった。


◇◇◇


 そして今に至る訳だ...成り行きとはいえ、アンリエットには本気でプロポーズしたというのに...

 久し振りに会ったアンリエットは、子供の頃の面影を残しながらも美しい女に成長していた。

 そりゃ確かに援助目的という魂胆はあったが、美しく成長したアンリエットのことを自分のものにしたくなったのもまた事実だ。例え傷物だとしても、その美しさが翳ることはないと思った。

 いくら俺の子供を生んだとは言っても、マーガレットを正妻に迎えることは間違っても出来やしない。

 アンリエットを正妻にしてマーガレットを愛人にする。そしてフィンレイ伯爵家から援助をして貰えれば万々歳になるはずだった。なのに...

 俺は自分の屋敷には向かわず別荘に直行した。そしてドアを荒々しく開けて怒鳴った。

「おい! マーガレット! これは一体どういうことだ!?」

 マーガレットはポカンとバカみたいな顔をして俺のことを見ていた。
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