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「ゲホッ! ゴホッ! グホッ!」
「お、お嬢様!? だ、大丈夫ですか!?」
「だ、大丈夫...ちょ、ちょっと噎せただけ...それで!? 悪いけどもう一度言ってくれる!? 誰が来たって!?」
私は聞き間違いかと思ってハンスに確認を求めた。
「ですから、クリフトファー殿と名乗っておられます。お嬢様のお知り合の方でしょうか?」
どうやら聞き間違えじゃなかったらしい。しかしなんでまたこんなタイムリーなタイミングで!? 私は訳が分からなかった。
「まぁ知り合いっちゃ知り合いだけど...」
それもかなり深い関係だったけど...
ちなみにハンスには、クリフトファー様と婚約寸前まで行ったということは伝えていない。伝えたのはギルバートとの件のみだ。だからハンスはクリフトファー様のことをなにも知らない。
「どうします? お会いになられますか?」
「えぇ、客間に通してちょうだい」
「畏まりました」
なんの用で来たのか分からんが、まさか門前払いする訳にも行くまい。
「アラン、あんたも同席しなさい」
「はいよ~ しかし噂をすれば影とは良く言ったもんだよね~」
「ホントにね...」
私達は苦笑しながら客間に向かった。
◇◇◇
久し振りというほど時間は経っていないが、しばらく振りで見るクリフトファー様はかなり痩せたように見える。
「こんにちわ、クリフトファー様」
「あぁ、アンリエット...久し振り...」
「少しお痩せになられました?」
「えっ!? あぁ、そうかも知れない...ここんとこずっと食欲が無くてね...」
「それはそれは...どうぞお大事に...」
そう言うしかなかった。マジで病気にならないか心配になるレベルだったから。
「ありがとう...」
「それで今日はどのようなご用でこちらに?」
「君に会いたかった...」
「はぁ...」
「......」
えっ!? それだけ!? クリフトファー様はそう言った後、じっと私の顔を見詰めるのみだ。
えっと...私はどうすればいいんだ!?
「今日は改めて君にお詫びがしたくてやって来た...」
しばらく沈黙した後、クリフトファー様はそう続けた。
「お詫びですか...」
「あぁ、アンリエット...その...本当に色々と迷惑を掛けて申し訳なかった...」
そう言ってクリフトファー様は深々と頭を下げた。以前の私達の立場なら『公爵家の次期当主ともあろうお方が軽々しく頭を下げるものではない』とかなんとか苦言を呈しているところなんだろうが...
でも今はそうじゃないので、私はクリフトファー様が気の済むまで頭を下げているのを黙って見守っていた。
「お、お嬢様!? だ、大丈夫ですか!?」
「だ、大丈夫...ちょ、ちょっと噎せただけ...それで!? 悪いけどもう一度言ってくれる!? 誰が来たって!?」
私は聞き間違いかと思ってハンスに確認を求めた。
「ですから、クリフトファー殿と名乗っておられます。お嬢様のお知り合の方でしょうか?」
どうやら聞き間違えじゃなかったらしい。しかしなんでまたこんなタイムリーなタイミングで!? 私は訳が分からなかった。
「まぁ知り合いっちゃ知り合いだけど...」
それもかなり深い関係だったけど...
ちなみにハンスには、クリフトファー様と婚約寸前まで行ったということは伝えていない。伝えたのはギルバートとの件のみだ。だからハンスはクリフトファー様のことをなにも知らない。
「どうします? お会いになられますか?」
「えぇ、客間に通してちょうだい」
「畏まりました」
なんの用で来たのか分からんが、まさか門前払いする訳にも行くまい。
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「はいよ~ しかし噂をすれば影とは良く言ったもんだよね~」
「ホントにね...」
私達は苦笑しながら客間に向かった。
◇◇◇
久し振りというほど時間は経っていないが、しばらく振りで見るクリフトファー様はかなり痩せたように見える。
「こんにちわ、クリフトファー様」
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「えっ!? あぁ、そうかも知れない...ここんとこずっと食欲が無くてね...」
「それはそれは...どうぞお大事に...」
そう言うしかなかった。マジで病気にならないか心配になるレベルだったから。
「ありがとう...」
「それで今日はどのようなご用でこちらに?」
「君に会いたかった...」
「はぁ...」
「......」
えっ!? それだけ!? クリフトファー様はそう言った後、じっと私の顔を見詰めるのみだ。
えっと...私はどうすればいいんだ!?
「今日は改めて君にお詫びがしたくてやって来た...」
しばらく沈黙した後、クリフトファー様はそう続けた。
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「あぁ、アンリエット...その...本当に色々と迷惑を掛けて申し訳なかった...」
そう言ってクリフトファー様は深々と頭を下げた。以前の私達の立場なら『公爵家の次期当主ともあろうお方が軽々しく頭を下げるものではない』とかなんとか苦言を呈しているところなんだろうが...
でも今はそうじゃないので、私はクリフトファー様が気の済むまで頭を下げているのを黙って見守っていた。
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