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「貰ってやるですって!? ウィリアム、あんた何様のつもり!? 子爵家の分際で伯爵家である私の目上に立った気でいるの!? 信じられないわ! 分を弁えなさい! 不愉快極まりないわ!」

 私に一喝されて、ようやく自分の立場というものに気付いたらしい。向こうは子爵家でこちらは伯爵家。子供の頃ならいざ知らず、大人となった今では身分の差というものが厳然と存在しているのだから。

 さっきまで威勢の良かったウィリアムが、途端に顔色を真っ青にさせながら慌てて謝罪する。

「あ、いや、その...悪かっ...申し訳ありませんでした...幼馴染みの気安さで調子に乗りました...平にご容赦下さい...」

「分かればいいのよ」

「そ、それでその...」

「あんたなんかと結婚する訳ないでしょ? 死んでもお断りだわ。とっとと帰りなさい」

「そ、そんなぁ...」

 ウィリアムが情けない悲鳴を上げる。

「大体、あんたの魂胆なんて見え透いてるのよ。パトリックに家を追い出されて行く所無いんでしょ? だから私のお金目当てですり寄って来たんでしょ? 本当に底の浅い男ね。ヘドが出るわ。アラン、叩き出しちゃって?」

「へ~い」

「ま、待ってくれ~! た、頼む、アンリエット! お、俺を見捨てないでくれ~!」

 アランに引き摺るようにして連れ出される間にも、ウィリアムはずっと未練がましく叫び続けていた。


◇◇◇


「ご苦労様。アラン、念のためパトリックに連絡しといてちょうだいね?」

 私は客間に戻って来たアランにそう言った。

「了解~ いやぁ、それにしてもさぁ」

「なによ?」

「相変わらずお嬢の『ダメ男ホイホイ』は機能してるな~って思ってさぁ」

「うっさい!」

 私はアランにクッションを投げ付けた。クッションはアランの顔面をクリーンヒットした。

「暴力反対~」

「喧しい!」

 シッシとばかりにアランを追い払った後、私はちょっと冷静になって考えてみた。確かにアランの言う通り、私に言い寄って来るのはロクでもない男ばかりだ。

「これは真剣にお祓いとかして貰った方がいいのかしらね...」

 ここまで男運の無い自分がとことんイヤになる。

「比較的マトモだったのはクリフトファー様くらいか...」

 今頃どうしているんだろう? ふとそんなことを思ってしまった。

「ちょっとは信じてもいいかなって思ったパトリックもアランの見立てが正しいとしたら...」

 まだパトリックの調査に取り掛かったばかりなんでなんとも言えないが、なんとなくアランの言うことが正しいような気がして来た。

 私はクッションに顔を埋めてモヤモヤした気持ちを抑え込んだ。
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