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「兄貴のヤツ...ウチの恥になるようなことを良くもまぁベラベラと...」

 私の話を黙って聞いていたウィリアムが、唇を噛み締めながら憎々し気にそう吐き出した。

「と言うことは真実だと思っていいのね?」

「いやいや違う! 違わないけど...」

「どっちなのよ?」

「いやだから、兄貴のヤツは大袈裟に騒いでるだけなんだって! そんな大したことないじゃないんだから!」

「領民が苦労しているのに大したことじゃない!? ウィリアム、あなた本気でそう思ってるの!? 仮にも貴族として恥ずかしいと思わないの!?」

 私は呆れながらそう聞き返していた。

「いやそれはその...俺達のせいじゃないし...天気はどうにもならないって...領民が自分らでなんとかしろよ...」

 ウィリアムは尻窄みになりながらも、言い訳めいた言葉をずっと言い続けていた。全く持って見苦しいとしか言えない。とても貴族の吐くセリフとは思えない。

 やはりパトリックの言った通りだった。間違いなくコイツはクズだ。そして彼を甘やかしていた両親もまたクズだ。

 私はチラッとアランの方を見る。彼は無表情のままだ。ただウィリアムのことをジッと眺めているだけ。

「それで!? 今日はなにしに来たのよ!?」

 まだなにやらブツブツと呟いているウィリアムがいい加減不快になって来た私は、さっさと切り上げようと思ってそう言った。

「えっ!? あ、あぁ、そうだった! 聞いたぜ!、アンリエット! お前、婚約を破棄したんだってな!」

「誰に聞いたのよ?」

「王都に住んでる友人からだよ。お前、王族が主宰した舞踏会の席で、国王や王族方の目の前で婚約者を断罪したって言うじゃないか! やるじゃん! カッコ良いな、お前!」

「お褒めに預りどうも。それで?」

 まぁ、あれだけ派手にぶちまかしたんだ。地方にまで噂が広がっても不思議じゃないか。それは仕方ないにしても、コイツはそれを知ってどうしようって言うんだ? 

 あと「お前」呼ばわりがイチイチ勘に触るからさっさと止めさせたい。

「お前が領地に戻って来たのはそのせいなんだろ? 王都に居辛くなったからなんだよな? いくら婚約者が悪いって言ってもさ、お前の評判にも傷が付いたもんな」

「だとしたら?」

「瑕疵の付いたお前には嫁の貰い手も無いだろ? 安心しろよ! 俺が貰ってやるからさ!」

 ハァッ!? コイツは起きたままどんな寝言ホザいてんだよ!? しかもなんだその言ってやったみたいなドヤ顔は!? ウゼェんだよ! 今すぐ止めろ!

 私はぶん殴りたくなる衝動を抑えるのに必死だった。
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