我が家の乗っ取りを企む婚約者とその幼馴染みに鉄槌を下します!

真理亜

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「アンリエット、どうだろうか?」

「...パトリックの気持ちは良く分かったわ。私のことを望んでくれたことも嬉しい」

「だったら」

「でもね、パトリック」

 私はパトリックの言葉を遮って続けた。

「やっぱり貴族にとって社交は重要だと思うのよ。今回の件だって懇意にしている貴族が居れば、国に頼る前に援助を申し込むことだって出来たでしょうし。その社交において、私はあなたの隣に並び立つことが出来ない。つまり戦力にならないのよ。そんな嫁を娶っても苦労するのはあなたの方なのよ? 本当にそれでいいのか、もっとちゃんと考えてから結論を出してちょうだい。私も今すぐ返事をするという訳には行かないから、少し考える時間をちょうだいな?」

「あぁ、分かった。済まん、性急過ぎたよな。今日はこれで帰るよ。だがアンリエット、俺の気持ちは変わることはない。真剣に考えているんだ。それだけは分かってくれ。良い返事を期待しているよ。それじゃあな」

「えぇ、またね」

 パトリックが帰った後、疲れ切った私はドカッとソファーに沈み込んだ。

「ねぇ、ハンス。どう思う?」

「そうですな...パトリック殿はウィリアム殿と違って信頼のおける方だとは思いますが、些か性急過ぎるような気がしました。なにやら焦っていらっしゃるようにも見受けられました」

「やっぱりそう思うわよね? なんだか必死な感じがしたわ。余裕が無いっていうか」

「まぁでも結局最後は、お嬢様のお気持ち次第ということになるのでしょうな。どのようにお考えなので?」

「私は...正直良く分からないわ...」

 確かにパトリックの申し出は嬉しい。こんな傷物になった私を貰ってくれるというのは有り難い話でもある。なにより私自身がパトリックを好ましく思ってもいる。

 だがなんだろう? 心のどこかになにか引っ掛かるものがある。それはパトリックの口から彼の領地の事情、家族関係を聞かされていた時からずっと感じていたものだ。

 その正体がなにか分からないが、なんとなくモヤモヤとした感じが残ってしまった。少なくともそのモヤモヤが解消されない限りは、パトリックの気持ちに応えることは出来ないと思っている。

「フウ...なんだか頭が良く回らないし喉も渇いたわ。ハンス、お茶を入れ替えてくれる?」

「畏まりました」

 ハンスが席を外した後、私はアランにも聞いてみることにした。

「ねぇ、アラン。あんたはどう思った?」

「う~ん...そうだなぁ...お嬢が『ダメ男ホイホイ』だってことを改めて再認識したって感じ?」

「なによそれ」

 私はアランをジッと睨み付けた。
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