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 覚悟はしていたが、実際目の当たりにするとやはり落ち込んだ。

 これはもう...女として終わったと見ていいだろう...

「エリザベート、ありがとう。もういいわ...」

 涙でクシャクシャになっているエリザベートに手鏡を返す。

「アンリエット~...」

「私は大丈夫だから。泣かないで」

 エリザベートの涙を拭ってやる。

 その時、お医者様が到着したようだ。

「ご気分は如何ですか?」

「えぇ、グッスリ寝たんで大分スッキリしましたわ。もう頭も痛くありません」

「意識を失った前後のことは覚えていますか? 記憶に欠落はありませんか?」

「ありません。全て覚えておりますわ」

「そうですか。ちょっと失礼」

 お医者様は私の頭を触診した後、ペンライトを使って私の目を覗き込んだ。

「フム、幸いなことに内出血等は無いようです。もう動いても大丈夫でしょう」

「ありがとうございます」

「ただ念のため、今夜一晩は安静にして下さい。痛み止めはお兄様の方に渡してありますので、痛みがぶり返した時は一錠だけ飲んで下さい」

「分かりましたわ」

 お医者様が帰った後、兄が部屋に入って来た。

「アンリ、大丈夫か?」

「えぇ、もう平気よ。ウチに帰るわ」

 そう言ってベッドから起き上がった。

「無理するなよ?」

「大丈夫。もうクラクラしないから」

 ベッドから出て立ち上がる。すかさずサンドラとエリザベートが脇を支えてくれる。

「エリザベート、サンドラ、ありがとう。さぁ、帰りましょうか。あ、そうだエリザベート」

「なあに?」

「明日、クリフトファー様に私の家に来て欲しいと伝えて貰っていいかしら?」

「...分かった。ちゃんと伝えるわ」

 するとそれを聞いた兄が申し訳無さそうに、

「あ~...エリザベート嬢...済まんがこれも伝えておいて貰えるか? 殴って申し訳なかったと...」

 それを聞いて私は目を剥いた。

「ちょっと兄さん! そんなことしたの!?」

「だってなぁ...お前のあんな姿を見せられたら腹が立って我慢ならなかったんだよ...」

 私の心配をしてくれたのはありがたいが...妹バカ度にも程がある。相手は公爵家だし問題になったら大変だ。

「しょうがないわね...エリザベート、私からも謝罪すると伝えておいて頂戴」

 だがエリザベートは、

「あぁ、いいのよ。兄の自業自得なんだから。2、3発殴られて当然だわ。私だってぶん殴ってやりたいくらいだもの」

 そんなあっけらかんなことを言うから思わず苦笑してしまった。

「それじゃあ帰ろうか」

「ん? 兄さんもウチに来るの?」

「当然だろ? お前が心配なんだから。一人になんかしておけるか」

 
 兄はすっかり過保護になってしまったようだった。
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