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「まぁ何はともあれ、結局はアンリエットの気持ちが重要になって来るんじゃないの?」

「そうなんだけどね...」

「私はアンリエットがどういう結論を出そうが応援するつもりだからね?」

「エリザベート...ありがとう...」

 親友の気遣いに私は涙が出そうになった。

「いいのよ。それよりアンリエット、そろそろお兄様が帰って来るわ。今の状態ではまだ顔を合わせたくないでしょう? 早くお帰りなさいな」

「えぇ、そうさせて貰うわね。色々とお世話様」

 こうしてエリザベートと別れた私は自分の屋敷に帰った。


◇◇◇


「お嬢、お帰りなさい」

「アラン、変わりはなかった?」

「へい、特には。クリフトファー様も今日はいらっしゃってませんぜ」

「そう、ご苦労様」

 あの一件の後、アランを正式にウチの侍従として雇うことにした。アランに打診したら二つ返事でOKしたのだ。

 役者に未練は無いのか? と聞いたら、

『役者業よりお嬢の側に居る方が何倍も刺激的だから』

 とのことだった。

 あんな濃い経験は二度と無いと思うのだが。というより二度とゴメンなんだが。アランはそれでも良いらしい。

 今はセバスチャンの元で侍従としての修行を積んでいる。セバスチャン曰く呑み込みが早いようで、見込みがあるらしいとのことだ。是非とも立派な侍従に育って欲しい。

「お嬢様...お客様なのですが...」

 そこへセバスチャンがやって来た。なんだか歯切れが悪い。

「セバスチャン? どうしたの? お客って誰?」

「それが...モリシャン侯爵家のスカーレット様とおっしゃっておられます...」

「なんですって!?」

 ちなみにセバスチャンは侍従として私に付いて来ていたので、当然ながら私とエリザベートの話も側で聞いていた。だからこそこのような反応を見せるのだが、私だってビックリしている。

 まさか渦中のスカーレット嬢が我が家を訪れるなんて...しかも私がクリフトファー様にプロポーズされてるこのタイミングで...

 偶然ということは有り得ないだろう。

「お嬢様、如何致しましょうか...お会いにならずにお帰り頂きましょうか...」

「...いいえ、何の用だが知らないけど会うことにするわ」

「よろしいのですか...お嬢様がお会いになる筋合いは無いと思うのですが...」

「ありがとう、セバスチャン。私なら大丈夫よ。客間に通して頂戴な」

「...畏まりました...」

 今頃になって現れたということは、十中八九厄介事を運んで来たとみて間違いないだろう。

 私は気合いを入れて対峙することにした。
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