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「婚約してたのはモリシャン侯爵家のスカーレットっていう女よ。覚えてる? 学園で私達の一個上で兄と同い年の」
「あぁ、なんとなく...ほとんど接点はなかったから、遠目で見た印象しかないけど...なんて言うか深窓の令嬢って雰囲気が漂っていたような...」
「見た目はね。猫被ってたみたいで、それにみんな騙されたんだけどね。我が兄も私も含めて両家の関係者全員がね」
「なるほど...」
「相手が侯爵家ということでウチとも家格は釣り合うし、政略目的な面でもお互い都合が良かったんで、婚約は割とスンナリ決まったのよね。兄もスカーレットのことを第一印象で好感を持てる人だって言ってたから。私もそうだったし」
「フムフム...」
「交際も順調だったみたいで、二人が学園を卒業するのを待って結婚式を挙げる。その段取りに追われていたある日のことだったわ。間近に迫った卒業と結婚式の用意で慌ただしくしている最中、モリシャン侯爵が泡食って我が家に駆け込んで来たの」
『スカーレットが侍従の男と駆け落ちした』
「......」
「そこからはもう大変だったわよ。想像出来るでしょ? 土下座しながら平謝りするモリシャン侯爵を宥めながら、すぐ今後どうするかの協議に入ったわ。まずは結婚式の取り止め。招待状を送った家に対する説明。モリシャン侯爵への慰謝料請求などなど。中でも真っ先にやる必要があったのは、結婚がお流れになった経緯の説明よね。これにはモリシャン侯爵が『あんな娘とはもう親でもなければ子でもない。不慮の事故で死んだことにして欲しい』って涙ながらにそう言うもんだから、結局その通りにすることにしたのよ。お互いの家にとっても、そうした方が政治的なダメージが少ないだろうって打算的な意味合いもあったんだけどね。そう言った理由で、我が兄は結婚式の直前で婚約者を馬車の事故で喪った悲劇の主人公になった訳よ」
「...なんて言うか...クリフ様もさぞやお辛かったことでしょうね...」
酷い裏切りに遭ったんだもんね...
「いや全然?」
「へっ!?」
「なんか寧ろ憑き物が取れたみたいな感じでスッキリしてたわよ? 少なくとも表面上は」
「そ、そうなんだ...」
私は拍子抜けしてしまった。
「それでそのスカーレット嬢は今どこに?」
「噂では隣国に渡ったらしいわよ」
「モリシャン侯爵は探さなかったの?」
「一応探しはしたみたいだけど、結局見付からなかったようね」
「そうなのね...」
この時の私はホッとしたのと同時に、なんだか良く分からないが不安な気持ちにもなったのだった。
「あぁ、なんとなく...ほとんど接点はなかったから、遠目で見た印象しかないけど...なんて言うか深窓の令嬢って雰囲気が漂っていたような...」
「見た目はね。猫被ってたみたいで、それにみんな騙されたんだけどね。我が兄も私も含めて両家の関係者全員がね」
「なるほど...」
「相手が侯爵家ということでウチとも家格は釣り合うし、政略目的な面でもお互い都合が良かったんで、婚約は割とスンナリ決まったのよね。兄もスカーレットのことを第一印象で好感を持てる人だって言ってたから。私もそうだったし」
「フムフム...」
「交際も順調だったみたいで、二人が学園を卒業するのを待って結婚式を挙げる。その段取りに追われていたある日のことだったわ。間近に迫った卒業と結婚式の用意で慌ただしくしている最中、モリシャン侯爵が泡食って我が家に駆け込んで来たの」
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「......」
「そこからはもう大変だったわよ。想像出来るでしょ? 土下座しながら平謝りするモリシャン侯爵を宥めながら、すぐ今後どうするかの協議に入ったわ。まずは結婚式の取り止め。招待状を送った家に対する説明。モリシャン侯爵への慰謝料請求などなど。中でも真っ先にやる必要があったのは、結婚がお流れになった経緯の説明よね。これにはモリシャン侯爵が『あんな娘とはもう親でもなければ子でもない。不慮の事故で死んだことにして欲しい』って涙ながらにそう言うもんだから、結局その通りにすることにしたのよ。お互いの家にとっても、そうした方が政治的なダメージが少ないだろうって打算的な意味合いもあったんだけどね。そう言った理由で、我が兄は結婚式の直前で婚約者を馬車の事故で喪った悲劇の主人公になった訳よ」
「...なんて言うか...クリフ様もさぞやお辛かったことでしょうね...」
酷い裏切りに遭ったんだもんね...
「いや全然?」
「へっ!?」
「なんか寧ろ憑き物が取れたみたいな感じでスッキリしてたわよ? 少なくとも表面上は」
「そ、そうなんだ...」
私は拍子抜けしてしまった。
「それでそのスカーレット嬢は今どこに?」
「噂では隣国に渡ったらしいわよ」
「モリシャン侯爵は探さなかったの?」
「一応探しはしたみたいだけど、結局見付からなかったようね」
「そうなのね...」
この時の私はホッとしたのと同時に、なんだか良く分からないが不安な気持ちにもなったのだった。
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