43 / 276
43 (第三者視点)
しおりを挟む
ギルバートは紹介を受けた娼館に向かった。
客としてなら何度も娼館通いをしたことのあるギルバートだったが、働くのはもちろん初めてのことだ。
「この娼館には来たことなかったなぁ」
娼館を見上げながらそんなことを呟いていると、
「すいません、お客様。当店の営業時間は夕方からになりますので、もう少し時間が経ってからお越し下さいませんでしょうか?」
呼び込みらしき男に話し掛けられた。
「あぁ、違います。僕はお客じゃないです。職業斡旋所からの紹介でここに来ました。これ紹介状です」
すると呼び込みらしき男はコロッと態度を変えた。
「なんだぁてめえ! 客じゃねぇのかよ! チッ! 紛らわしい真似しやがって! 新入りか!? だったら表じゃなくて裏に回りやがれ!」
そう言ってシッシッとばかりにギルバートを追い立てた。裏に回ったギルバートは、顔にいくつもの傷痕が残る強面の男に引き合わされた。
「職業斡旋所から話は聞いてる。お前が新入りか。付いて来い。仕事の説明をする」
男に付いて行くと店の中を案内してくれた。
「お前も娼館くらい利用したことがあるだろうから分かると思うが、ここが客の控え室になる。まずお前がやることは、女の子を待っている客に酒や煙草を給仕することだ。ここまではいいな?」
「は、はい!」
「次に部屋の掃除だ。前の客の情事の跡が残らないよう、隅々までしっかり掃除しろ」
「分かりました!」
「基本はこの二つだ。酔っ払いや態度の悪い客に対する対応などは追々教えてやる。荒事にもある程度は慣れておけ」
「が、頑張ります!」
「それと最後に、店の大事な商品である女の子に手を出すのはご法度だ。良く覚えておけ。破ったらチョン切るからな」
何を!? とは怖くて聞けなかったギルバートは、ただ黙って何度も何度も頷いていた。
その時、店の外が騒がしくなった。
「な、なんでしょう!?」
「あぁ、今日新しく入る女の子が連れられて来たみたいだな。お前も付いて来い。顔合わせをしておく」
「わ、分かりました!」
歩きながら男が説明する。
「なんでも元貴族のご令嬢らしいぞ? 金で売られたんだとか。貴族も色々と大変なんだな」
自分も元貴族なんですとは言えないギルバートだった。
「離して! 離してよ~! 娼館なんて嫌よ~!」
「えぇい! いい加減大人しくしやがれ!」
店の外に近付くに連れ、聞き覚えのある声にギルバートは思わず走り出していた。
「きゃ、キャロライン!?」
「ぎ、ギルバート!?」
真実の愛を誓ったはずの二人は、最悪な場所での再会を果たしたのだった。
************************
以下告知です。
下記のタイトルで新連載をスタートしました。
『ようこそ、追放村へ!~冤罪で婚約破棄され国外追放された4人の令嬢達』
冤罪を被せられて追放された4人の令嬢達が、力を合わせて脱出不可能と言われた追放村からの脱出を決意するという物語です。
全ては自分達を貶めた連中に復讐するために! 4人の令嬢達の復讐劇が今幕を開けます。
良かったらご覧になって頂けますと幸いです。
よろしくお願い致します。
客としてなら何度も娼館通いをしたことのあるギルバートだったが、働くのはもちろん初めてのことだ。
「この娼館には来たことなかったなぁ」
娼館を見上げながらそんなことを呟いていると、
「すいません、お客様。当店の営業時間は夕方からになりますので、もう少し時間が経ってからお越し下さいませんでしょうか?」
呼び込みらしき男に話し掛けられた。
「あぁ、違います。僕はお客じゃないです。職業斡旋所からの紹介でここに来ました。これ紹介状です」
すると呼び込みらしき男はコロッと態度を変えた。
「なんだぁてめえ! 客じゃねぇのかよ! チッ! 紛らわしい真似しやがって! 新入りか!? だったら表じゃなくて裏に回りやがれ!」
そう言ってシッシッとばかりにギルバートを追い立てた。裏に回ったギルバートは、顔にいくつもの傷痕が残る強面の男に引き合わされた。
「職業斡旋所から話は聞いてる。お前が新入りか。付いて来い。仕事の説明をする」
男に付いて行くと店の中を案内してくれた。
「お前も娼館くらい利用したことがあるだろうから分かると思うが、ここが客の控え室になる。まずお前がやることは、女の子を待っている客に酒や煙草を給仕することだ。ここまではいいな?」
「は、はい!」
「次に部屋の掃除だ。前の客の情事の跡が残らないよう、隅々までしっかり掃除しろ」
「分かりました!」
「基本はこの二つだ。酔っ払いや態度の悪い客に対する対応などは追々教えてやる。荒事にもある程度は慣れておけ」
「が、頑張ります!」
「それと最後に、店の大事な商品である女の子に手を出すのはご法度だ。良く覚えておけ。破ったらチョン切るからな」
何を!? とは怖くて聞けなかったギルバートは、ただ黙って何度も何度も頷いていた。
その時、店の外が騒がしくなった。
「な、なんでしょう!?」
「あぁ、今日新しく入る女の子が連れられて来たみたいだな。お前も付いて来い。顔合わせをしておく」
「わ、分かりました!」
歩きながら男が説明する。
「なんでも元貴族のご令嬢らしいぞ? 金で売られたんだとか。貴族も色々と大変なんだな」
自分も元貴族なんですとは言えないギルバートだった。
「離して! 離してよ~! 娼館なんて嫌よ~!」
「えぇい! いい加減大人しくしやがれ!」
店の外に近付くに連れ、聞き覚えのある声にギルバートは思わず走り出していた。
「きゃ、キャロライン!?」
「ぎ、ギルバート!?」
真実の愛を誓ったはずの二人は、最悪な場所での再会を果たしたのだった。
************************
以下告知です。
下記のタイトルで新連載をスタートしました。
『ようこそ、追放村へ!~冤罪で婚約破棄され国外追放された4人の令嬢達』
冤罪を被せられて追放された4人の令嬢達が、力を合わせて脱出不可能と言われた追放村からの脱出を決意するという物語です。
全ては自分達を貶めた連中に復讐するために! 4人の令嬢達の復讐劇が今幕を開けます。
良かったらご覧になって頂けますと幸いです。
よろしくお願い致します。
17
お気に入りに追加
3,452
あなたにおすすめの小説
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。
双子の姉妹の聖女じゃない方、そして彼女を取り巻く人々
神田柊子
恋愛
【2024/3/10:完結しました】
「双子の聖女」だと思われてきた姉妹だけれど、十二歳のときの聖女認定会で妹だけが聖女だとわかり、姉のステラは家の中で居場所を失う。
たくさんの人が気にかけてくれた結果、隣国に嫁いだ伯母の養子になり……。
ヒロインが出て行ったあとの生家や祖国は危機に見舞われないし、ヒロインも聖女の力に目覚めない話。
-----
西洋風異世界。転移・転生なし。
三人称。視点は予告なく変わります。
ヒロイン以外の視点も多いです。
-----
※R15は念のためです。
※小説家になろう様にも掲載中。
【2024/3/6:HOTランキング女性向け1位にランクインしました!ありがとうございます】
料理をしていたらいつの間にか歩くマジックアイテムになっていた
藤岡 フジオ
ファンタジー
遥か未来の地球。地球型惑星の植民地化が進む中、地球外知的生命体が見つかるには至らなかった。
しかしある日突然、一人の科学者が知的生命体の住む惑星を見つけて地球に衝撃が走る。
惑星は発見した科学者の名をとって惑星ヒジリと名付けられた。知的生命体の文明レベルは低く、剣や魔法のファンタジー世界。
未知の食材を見つけたい料理人の卵、道 帯雄(ミチ オビオ)は運良く(運悪く?)惑星ヒジリへと飛ばされ、相棒のポンコツ女騎士と共に戦いと料理の旅が始まる。
【完結】お父様。私、悪役令嬢なんですって。何ですかそれって。
紅月
恋愛
小説家になろうで書いていたものを加筆、訂正したリメイク版です。
「何故、私の娘が処刑されなければならないんだ」
最愛の娘が冤罪で処刑された。
時を巻き戻し、復讐を誓う家族。
娘は前と違う人生を歩み、家族は元凶へ復讐の手を伸ばすが、巻き戻す前と違う展開のため様々な事が見えてきた。
完結 穀潰しと言われたので家を出ます
音爽(ネソウ)
恋愛
ファーレン子爵家は姉が必死で守って来た。だが父親が他界すると家から追い出された。
「お姉様は出て行って!この穀潰し!私にはわかっているのよ遺産をいいように使おうだなんて」
遺産などほとんど残っていないのにそのような事を言う。
こうして腹黒な妹は母を騙して家を乗っ取ったのだ。
その後、収入のない妹夫婦は母の財を喰い物にするばかりで……
虐げられた皇女は父の愛人とその娘に復讐する
ましゅぺちーの
恋愛
大陸一の大国ライドーン帝国の皇帝が崩御した。
その皇帝の子供である第一皇女シャーロットはこの時をずっと待っていた。
シャーロットの母親は今は亡き皇后陛下で皇帝とは政略結婚だった。
皇帝は皇后を蔑ろにし身分の低い女を愛妾として囲った。
やがてその愛妾には子供が生まれた。それが第二皇女プリシラである。
愛妾は皇帝の寵愛を笠に着てやりたい放題でプリシラも両親に甘やかされて我儘に育った。
今までは皇帝の寵愛があったからこそ好きにさせていたが、これからはそうもいかない。
シャーロットは愛妾とプリシラに対する復讐を実行に移す―
一部タイトルを変更しました。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる