40 / 276
40 (キャロライン視点4)
しおりを挟む
結局、舞踏会は一曲も踊ることなく這う這うの体で逃げ出すしかなかった。
帰りの馬車の中は最悪だった。
「ちょっとギルバート! どういうことよ!? シナリオと違うじゃあないの!」
「そんなこと言われても僕だって分からないよ!」
「どうすんのよ!? これじゃあ上手く行かないかも知れないわよ!?」
「五月蝿いな! 分かってるよ! 少し黙っててくれ!」
五月蝿くもなるわ!
「とにかく! 一度態勢を立て直す! それまで大人しくしていてくれ!」
「分かったわよ...」
お互いに言い争いした挙げ句、渋々と引き下がるしかなかった。
私の中では疑心暗鬼がまた頭を擡げて来ていたのだった。
◇◇◇
2、3日してから私の元にアンリエットからお茶会の招待状が届いた。
私は首を傾げながらギルバートに相談した。
「アンリエットからお茶会の招待状が!?」
「えぇ、なんでいきなり私宛に来たのか分からないわ」
「確かにそうだね...」
ギルバートはしばし黙考した後、
「キャロライン、参加してくれないか?」
「えぇ!? 私一人で!? なんだか不安だわ...」
「そうだろうけど、シナリオを進めるチャンスでもあるんだ。頼むから頑張ってくれ」
「そういうことなら...分かったわ...」
「あ、そうそう。壊れても惜しくないペンダントを付けて行くのを忘れないでくれよ?」
「えぇ、大丈夫よ。抜かりないわ」
気は進まなかったが、ギルバートには招待状が来てないので仕方ない。私は一人で参加することになった。
◇◇◇
そうして始まったお茶会だが、最初にちょこっと挨拶したっきり、アンリエットは私に近付いても来ない。
私の方から近付こうにも、アンリエットの周りは知り合いで囲まれていて中々近付けない。
手持ち無沙汰になっていた私に、
「お嬢様、お茶のお代わりは如何でしょうか?」
「えぇ、頂くわ。あら? あなたは?」
「私はアンリエット様の侍従を勤めております、アランと申します」
おぉっ! 私の好みどストライクの良い男だわ!
「そう、私はキャロラインよ。よろしくね」
「よろしかったら我が家自慢の庭園をご案内したいと思いますが如何でしょうか?」
「良いわね。是非お願いしたいわ」
こうしてアランは私の手を取って歩き始めた。
アランは話題が豊富で、特に造詣が深いという演劇の話はとても面白くて、私は本来の目的も忘れてすっかりアランに夢中になっていた。
◇◇◇
「キャロライン、昨日はどうだった? 上手くやったかい?」
「ごめんなさい。結局、アンリエット様とはほとんど話せなかったの...だからイベントを起こせなかったわ...」
「そうか...」
「アンリエット様の周りは仲の良いご友人方が囲んでいて、近くに寄ることも難しかったの...」
「そうだったんだね...」
「ギルバート、ごめんね...」
ギルバートに謝りながらも、私の心の中はアランで一杯だった。
その後、ギルバートの誘いを初めて断った。
帰りの馬車の中は最悪だった。
「ちょっとギルバート! どういうことよ!? シナリオと違うじゃあないの!」
「そんなこと言われても僕だって分からないよ!」
「どうすんのよ!? これじゃあ上手く行かないかも知れないわよ!?」
「五月蝿いな! 分かってるよ! 少し黙っててくれ!」
五月蝿くもなるわ!
「とにかく! 一度態勢を立て直す! それまで大人しくしていてくれ!」
「分かったわよ...」
お互いに言い争いした挙げ句、渋々と引き下がるしかなかった。
私の中では疑心暗鬼がまた頭を擡げて来ていたのだった。
◇◇◇
2、3日してから私の元にアンリエットからお茶会の招待状が届いた。
私は首を傾げながらギルバートに相談した。
「アンリエットからお茶会の招待状が!?」
「えぇ、なんでいきなり私宛に来たのか分からないわ」
「確かにそうだね...」
ギルバートはしばし黙考した後、
「キャロライン、参加してくれないか?」
「えぇ!? 私一人で!? なんだか不安だわ...」
「そうだろうけど、シナリオを進めるチャンスでもあるんだ。頼むから頑張ってくれ」
「そういうことなら...分かったわ...」
「あ、そうそう。壊れても惜しくないペンダントを付けて行くのを忘れないでくれよ?」
「えぇ、大丈夫よ。抜かりないわ」
気は進まなかったが、ギルバートには招待状が来てないので仕方ない。私は一人で参加することになった。
◇◇◇
そうして始まったお茶会だが、最初にちょこっと挨拶したっきり、アンリエットは私に近付いても来ない。
私の方から近付こうにも、アンリエットの周りは知り合いで囲まれていて中々近付けない。
手持ち無沙汰になっていた私に、
「お嬢様、お茶のお代わりは如何でしょうか?」
「えぇ、頂くわ。あら? あなたは?」
「私はアンリエット様の侍従を勤めております、アランと申します」
おぉっ! 私の好みどストライクの良い男だわ!
「そう、私はキャロラインよ。よろしくね」
「よろしかったら我が家自慢の庭園をご案内したいと思いますが如何でしょうか?」
「良いわね。是非お願いしたいわ」
こうしてアランは私の手を取って歩き始めた。
アランは話題が豊富で、特に造詣が深いという演劇の話はとても面白くて、私は本来の目的も忘れてすっかりアランに夢中になっていた。
◇◇◇
「キャロライン、昨日はどうだった? 上手くやったかい?」
「ごめんなさい。結局、アンリエット様とはほとんど話せなかったの...だからイベントを起こせなかったわ...」
「そうか...」
「アンリエット様の周りは仲の良いご友人方が囲んでいて、近くに寄ることも難しかったの...」
「そうだったんだね...」
「ギルバート、ごめんね...」
ギルバートに謝りながらも、私の心の中はアランで一杯だった。
その後、ギルバートの誘いを初めて断った。
24
お気に入りに追加
3,465
あなたにおすすめの小説
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
[連載中]蔑ろにされた王妃様〜25歳の王妃は王と決別し、幸せになる〜
コマメコノカ@異世界恋愛ざまぁ連載
恋愛
王妃として国のトップに君臨している元侯爵令嬢であるユーミア王妃(25)は夫で王であるバルコニー王(25)が、愛人のミセス(21)に入り浸り、王としての仕事を放置し遊んでいることに辟易していた。
そして、ある日ユーミアは、彼と決別することを決意する。
姉から奪うことしかできない妹は、ザマァされました
饕餮
ファンタジー
わたくしは、オフィリア。ジョンパルト伯爵家の長女です。
わたくしには双子の妹がいるのですが、使用人を含めた全員が妹を溺愛するあまり、我儘に育ちました。
しかもわたくしと色違いのものを両親から与えられているにもかかわらず、なぜかわたくしのものを欲しがるのです。
末っ子故に甘やかされ、泣いて喚いて駄々をこね、暴れるという貴族女性としてはあるまじき行為をずっとしてきたからなのか、手に入らないものはないと考えているようです。
そんなあざといどころかあさましい性根を持つ妹ですから、いつの間にか両親も兄も、使用人たちですらも絆されてしまい、たとえ嘘であったとしても妹の言葉を鵜呑みにするようになってしまいました。
それから数年が経ち、学園に入学できる年齢になりました。が、そこで兄と妹は――
n番煎じのよくある妹が姉からものを奪うことしかしない系の話です。
全15話。
※カクヨムでも公開しています
【完結】幼い頃から婚約を誓っていた伯爵に婚約破棄されましたが、数年後に驚くべき事実が発覚したので会いに行こうと思います
菊池 快晴
恋愛
令嬢メアリーは、幼い頃から将来を誓い合ったゼイン伯爵に婚約破棄される。
その隣には見知らぬ女性が立っていた。
二人は傍から見ても仲睦まじいカップルだった。
両家の挨拶を終えて、幸せな結婚前パーティで、その出来事は起こった。
メアリーは彼との出会いを思い返しながら打ちひしがれる。
数年後、心の傷がようやく癒えた頃、メアリーの前に、謎の女性が現れる。
彼女の口から発せられた言葉は、ゼインのとんでもない事実だった――。
※ハッピーエンド&純愛
他サイトでも掲載しております。
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・
青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。
婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。
「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」
妹の言葉を肯定する家族達。
そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。
※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。
〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。
了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。
テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。
それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。
やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには?
100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。
200話で完結しました。
今回はあとがきは無しです。
妹に全部取られたけど、幸せ確定の私は「ざまぁ」なんてしない!
石のやっさん
恋愛
マリアはドレーク伯爵家の長女で、ドリアーク伯爵家のフリードと婚約していた。
だが、パーティ会場で一方的に婚約を解消させられる。
しかも新たな婚約者は妹のロゼ。
誰が見てもそれは陥れられた物である事は明らかだった。
だが、敢えて反論もせずにそのまま受け入れた。
それはマリアにとって実にどうでも良い事だったからだ。
主人公は何も「ざまぁ」はしません(正当性の主張はしますが)ですが...二人は。
婚約破棄をすれば、本来なら、こうなるのでは、そんな感じで書いてみました。
この作品は昔の方が良いという感想があったのでそのまま残し。
これに追加して書いていきます。
新しい作品では
①主人公の感情が薄い
②視点変更で読みずらい
というご指摘がありましたので、以上2点の修正はこちらでしながら書いてみます。
見比べて見るのも面白いかも知れません。
ご迷惑をお掛けいたしました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる