36 / 276
36 (ギルバート視点10)
しおりを挟む
僕は自分の屋敷の前で呆然と立ち尽くしながら、このような結果に至るまでの日々を漫然と思い返していた。
思えば途中からキャロラインはあんまり乗り気ではなかったように思う。シナリオ通りに進まないことだけが原因だったとは思えない。
キャロラインが僕からの誘いを断るようになっていったのはいつ頃からだったか。もうその頃からキャロラインは、僕との関係を終わらせようとしていたのかも知れない。
実際、今日を迎える前からキャロラインはこう言っていた。
「ね、ねぇ、ギルバート...もう止めない? 現実は小説のシナリオ通りには行かないのよ...」
「なに言ってるんだよ! 僕達は真実の愛で結ばれているんだぞ! 大丈夫! 最後にはきっと上手く行くさ!」
そう言って僕は強引にキャロラインの手を引いたんだったっけ。
だが最後のあの瞬間、僕が国王陛下と対峙している最中、後ろを振り返るとそこにキャロラインの姿はなかった...
真実の愛だと思っていたのはどうやら僕だけだったようだ。僕は自嘲しながらトボトボと当て所なく歩き始めた。キャロラインに会いに行こうとは微塵も思わなかった。
◇◇◇
本当に着の身着のまま放り出された僕は、まず古着屋に行って着ていたタキシードを古着と交換した。
それからブレスレットやペンダント、カフスボタンなどのアクセサリーを質に入れ、当座の現金を手に入れた。
この辺りは手慣れたものだ。アンリエットからの贈り物を質に入れてキャロラインとの遊行費に充てていたんだから。
まぁ、そんなことをしていたからこんな目に遭ってる訳でもあるんだが...
今更嘆いても仕方ない。時が戻る訳でもない。自業自得だ。これからはもう貴族でもなくただの平民なんだから、仕事をして自分で稼がないと。
気を取り直して僕は職業斡旋所に向かった。
「可能であれば住み込みで働ける職場があると嬉しいんですが...」
そう言って僕は受付の職員にお願いした。なにせ今日泊まる宿すらない。
「住み込みねぇ...まぁ、あるにはあるが娼館での雑用係兼用心棒って仕事だけどやってみるかい?」
「構いません。雨風が防げればなんでも。今日から働けますか?」
「あぁ、人手不足らしくてね。すぐに来て欲しいそうだ」
「是非お願いします!」
渡りに船とはこのことだ。僕は喜んでその娼館に向かった。
...まさかその娼館で運命というか宿命というか...そんな再会を果たすことになろうとは...
この時の僕は夢にも思っていなかったのだった...
思えば途中からキャロラインはあんまり乗り気ではなかったように思う。シナリオ通りに進まないことだけが原因だったとは思えない。
キャロラインが僕からの誘いを断るようになっていったのはいつ頃からだったか。もうその頃からキャロラインは、僕との関係を終わらせようとしていたのかも知れない。
実際、今日を迎える前からキャロラインはこう言っていた。
「ね、ねぇ、ギルバート...もう止めない? 現実は小説のシナリオ通りには行かないのよ...」
「なに言ってるんだよ! 僕達は真実の愛で結ばれているんだぞ! 大丈夫! 最後にはきっと上手く行くさ!」
そう言って僕は強引にキャロラインの手を引いたんだったっけ。
だが最後のあの瞬間、僕が国王陛下と対峙している最中、後ろを振り返るとそこにキャロラインの姿はなかった...
真実の愛だと思っていたのはどうやら僕だけだったようだ。僕は自嘲しながらトボトボと当て所なく歩き始めた。キャロラインに会いに行こうとは微塵も思わなかった。
◇◇◇
本当に着の身着のまま放り出された僕は、まず古着屋に行って着ていたタキシードを古着と交換した。
それからブレスレットやペンダント、カフスボタンなどのアクセサリーを質に入れ、当座の現金を手に入れた。
この辺りは手慣れたものだ。アンリエットからの贈り物を質に入れてキャロラインとの遊行費に充てていたんだから。
まぁ、そんなことをしていたからこんな目に遭ってる訳でもあるんだが...
今更嘆いても仕方ない。時が戻る訳でもない。自業自得だ。これからはもう貴族でもなくただの平民なんだから、仕事をして自分で稼がないと。
気を取り直して僕は職業斡旋所に向かった。
「可能であれば住み込みで働ける職場があると嬉しいんですが...」
そう言って僕は受付の職員にお願いした。なにせ今日泊まる宿すらない。
「住み込みねぇ...まぁ、あるにはあるが娼館での雑用係兼用心棒って仕事だけどやってみるかい?」
「構いません。雨風が防げればなんでも。今日から働けますか?」
「あぁ、人手不足らしくてね。すぐに来て欲しいそうだ」
「是非お願いします!」
渡りに船とはこのことだ。僕は喜んでその娼館に向かった。
...まさかその娼館で運命というか宿命というか...そんな再会を果たすことになろうとは...
この時の僕は夢にも思っていなかったのだった...
33
お気に入りに追加
3,452
あなたにおすすめの小説
婚約破棄直前に倒れた悪役令嬢は、愛を抱いたまま退場したい
矢口愛留
恋愛
【全11話】
学園の卒業パーティーで、公爵令嬢クロエは、第一王子スティーブに婚約破棄をされそうになっていた。
しかし、婚約破棄を宣言される前に、クロエは倒れてしまう。
クロエの余命があと一年ということがわかり、スティーブは、自身の感じていた違和感の元を探り始める。
スティーブは真実にたどり着き、クロエに一つの約束を残して、ある選択をするのだった。
※一話あたり短めです。
※ベリーズカフェにも投稿しております。
真実の愛を見つけた婚約者(殿下)を尊敬申し上げます、婚約破棄致しましょう
さこの
恋愛
「真実の愛を見つけた」
殿下にそう告げられる
「応援いたします」
だって真実の愛ですのよ?
見つける方が奇跡です!
婚約破棄の書類ご用意いたします。
わたくしはお先にサインをしました、殿下こちらにフルネームでお書き下さいね。
さぁ早く!わたくしは真実の愛の前では霞んでしまうような存在…身を引きます!
なぜ婚約破棄後の元婚約者殿が、こんなに美しく写るのか…
私の真実の愛とは誠の愛であったのか…
気の迷いであったのでは…
葛藤するが、すでに時遅し…
運命の番?棄てたのは貴方です
ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。
番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。
※自己設定満載ですので気を付けてください。
※性描写はないですが、一線を越える個所もあります
※多少の残酷表現あります。
以上2点からセルフレイティング
貴方の愛人を屋敷に連れて来られても困ります。それより大事なお話がありますわ。
もふっとしたクリームパン
恋愛
「早速だけど、カレンに子供が出来たんだ」
隣に居る座ったままの栗色の髪と青い眼の女性を示し、ジャンは笑顔で勝手に話しだす。
「離れには子供部屋がないから、こっちの屋敷に移りたいんだ。部屋はたくさん空いてるんだろ? どうせだから、僕もカレンもこれからこの屋敷で暮らすよ」
三年間通った学園を無事に卒業して、辺境に帰ってきたディアナ・モンド。モンド辺境伯の娘である彼女の元に辺境伯の敷地内にある離れに住んでいたジャン・ボクスがやって来る。
ドレスは淑女の鎧、扇子は盾、言葉を剣にして。正々堂々と迎え入れて差し上げましょう。
妊娠した愛人を連れて私に会いに来た、無法者をね。
本編九話+オマケで完結します。*2021/06/30一部内容変更あり。カクヨム様でも投稿しています。
随時、誤字修正と読みやすさを求めて試行錯誤してますので行間など変更する場合があります。
拙い作品ですが、どうぞよろしくお願いします。
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
王子は婚約破棄を泣いて詫びる
tartan321
恋愛
最愛の妹を失った王子は婚約者のキャシーに復讐を企てた。非力な王子ではあったが、仲間の協力を取り付けて、キャシーを王宮から追い出すことに成功する。
目的を達成し安堵した王子の前に突然死んだ妹の霊が現れた。
「お兄さま。キャシー様を3日以内に連れ戻して!」
存亡をかけた戦いの前に王子はただただ無力だった。
王子は妹の言葉を信じ、遥か遠くの村にいるキャシーを訪ねることにした……。
側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。
とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」
成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。
「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」
********************************************
ATTENTION
********************************************
*世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。
*いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。
*R-15は保険です。
[完結]婚約破棄してください。そして私にもう関わらないで
みちこ
恋愛
妹ばかり溺愛する両親、妹は思い通りにならないと泣いて私の事を責める
婚約者も妹の味方、そんな私の味方になってくれる人はお兄様と伯父さんと伯母さんとお祖父様とお祖母様
私を愛してくれる人の為にももう自由になります
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる