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32 (ギルバート視点6)
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「キャロライン、参加してくれないか?」
「えぇ!? 私一人で!? なんだか不安だわ...」
「そうだろうけど、シナリオを進めるチャンスでもあるんだ。頼むから頑張ってくれ」
「そういうことなら...分かったわ...」
「あ、そうそう。壊れても惜しくないペンダントを付けて行くのを忘れないでくれよ?」
「えぇ、大丈夫よ。抜かりないわ」
嫌がるキャロラインの尻を叩いて、アンリエット主宰のお茶会へ出席させることに成功した。
後はキャロラインが上手く動いてくれて、シナリオ通りの展開になることを期待するばかりだ。
一緒に付いて行ってあげられないのがもどかしいけど、キャロラインに託すしかない。
◇◇◇
お茶会の翌日、僕はキャロラインを呼び出した。
「キャロライン、昨日はどうだった? 上手くやったかい?」
するとキャロラインは目を伏せて、
「ごめんなさい。結局、アンリエット様とはほとんど話せなかったの...だからイベントを起こせなかったわ...」
「そうか...」
「アンリエット様の周りは仲の良いご友人方が囲んでいて、近くに寄ることも難しかったの...」
「そうだったんだね...」
「ギルバート、ごめんね...」
それじゃあ仕方ないか...そもそもキャロラインとアンリエットはほとんど面識が無いんだから。そう簡単に話し掛けるって訳にもいかないよな。
「いや、気にしないで。僕の方こそ無茶振りだったかも知れない。何か別の手を考えよう。それにしても知り合いのほとんど居ないお茶会はさぞや退屈だったことだろう。そんなお茶会に参加させて申し訳なかったね...」
「い、いえ、だ、大丈夫よ? き、気にしないで?」
やっぱりよっぽど辛かったんだろうな。今日のキャロラインは僕と目を合わせてくれない。
申し訳ないけど、これもシナリオ通りに進めるためだ。我慢して欲しい。僕達の輝ける未来のためにも。
「キャロライン、昨日は疲れたろう? 今日は僕が癒してあげるよ。そろそろお昼だし、どこかに食べに行こうか?」
「あ、ごめんなさい。今日はこの後ちょっと先約があって...」
「そうなんだ。それは残念。じゃあまた別の日にしよう」
「えぇ、ごめんなさいね...」
結局キャロラインは、一度も僕と目を合わせることなく帰って行った。
その時は特に気にも留めなかったが、この日以降キャロラインは僕の誘いを何かと理由をつけて断るようになって行った。
思えばこの頃から僕は破滅に近付いていたのだ。
愚かな僕はその事に気付くことはなかった...
「えぇ!? 私一人で!? なんだか不安だわ...」
「そうだろうけど、シナリオを進めるチャンスでもあるんだ。頼むから頑張ってくれ」
「そういうことなら...分かったわ...」
「あ、そうそう。壊れても惜しくないペンダントを付けて行くのを忘れないでくれよ?」
「えぇ、大丈夫よ。抜かりないわ」
嫌がるキャロラインの尻を叩いて、アンリエット主宰のお茶会へ出席させることに成功した。
後はキャロラインが上手く動いてくれて、シナリオ通りの展開になることを期待するばかりだ。
一緒に付いて行ってあげられないのがもどかしいけど、キャロラインに託すしかない。
◇◇◇
お茶会の翌日、僕はキャロラインを呼び出した。
「キャロライン、昨日はどうだった? 上手くやったかい?」
するとキャロラインは目を伏せて、
「ごめんなさい。結局、アンリエット様とはほとんど話せなかったの...だからイベントを起こせなかったわ...」
「そうか...」
「アンリエット様の周りは仲の良いご友人方が囲んでいて、近くに寄ることも難しかったの...」
「そうだったんだね...」
「ギルバート、ごめんね...」
それじゃあ仕方ないか...そもそもキャロラインとアンリエットはほとんど面識が無いんだから。そう簡単に話し掛けるって訳にもいかないよな。
「いや、気にしないで。僕の方こそ無茶振りだったかも知れない。何か別の手を考えよう。それにしても知り合いのほとんど居ないお茶会はさぞや退屈だったことだろう。そんなお茶会に参加させて申し訳なかったね...」
「い、いえ、だ、大丈夫よ? き、気にしないで?」
やっぱりよっぽど辛かったんだろうな。今日のキャロラインは僕と目を合わせてくれない。
申し訳ないけど、これもシナリオ通りに進めるためだ。我慢して欲しい。僕達の輝ける未来のためにも。
「キャロライン、昨日は疲れたろう? 今日は僕が癒してあげるよ。そろそろお昼だし、どこかに食べに行こうか?」
「あ、ごめんなさい。今日はこの後ちょっと先約があって...」
「そうなんだ。それは残念。じゃあまた別の日にしよう」
「えぇ、ごめんなさいね...」
結局キャロラインは、一度も僕と目を合わせることなく帰って行った。
その時は特に気にも留めなかったが、この日以降キャロラインは僕の誘いを何かと理由をつけて断るようになって行った。
思えばこの頃から僕は破滅に近付いていたのだ。
愚かな僕はその事に気付くことはなかった...
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