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30 (ギルバート視点4)

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 ある日、アンリエットからこう言われた。

「ギルバート、ちょっといい?」

「あぁ、どうしたんだい?」

「今度の日曜日、エリザベートの家で舞踏会を開くみたいなのよ。招待状が届いてるから一緒に参加してね?」

 エリザベートか...正直言ってあの女は苦手なんだよな...正義感の塊みたいな所が...

「日曜日だね? 分かった」

「それでね、その日の昼間、私はどうしても外せない用事があるのよ。舞踏会は夜からだから、エリザベートの家に現地集合という形にして欲しいの」

「あぁ、構わないよ」

「ゴメンね。エスコートはしなくていいから、先に会場に入っていて?」

「......」

「ギルバート?」

「えっ!? あ、あぁ、了解したよ...」

 これはチャンスだと思った。

 僕はすぐにキャロラインに連絡を取った。


◇◇◇


「ねぇ、ギルバート。本当に私がパートナーを務めていいの?」

「構わないよ。アンリエットは遅れて来るって言ってたし、僕一人で入場するのは寂しいからね。一緒に行ってくれると嬉しいな」 

「でも...あなたの婚約者に嫉妬されるんじゃないかしら...」

「フフフッ、それが狙いだよ」

「えっ!? どういうこと!?」

「いいかい? このままじゃあの小説通りにならない。なにせキャロラインとアンリエットは今の所、全く接点が無いんだから」

「えぇ、そりゃ当然よね。面識がある訳無いんだから」

「だろ? だから今夜、君をアンリエットに紹介するっていう体で僕のパートナーに指名したってことにするんだよ。もちろん疚しいことはなにも無く、あくまでも幼馴染みという風を装ってね」

「なるほど...」

「だが嫉妬したアンリエットは、僕の話を聞こうともせず君を口汚く罵り、挙げ句の果てに君のドレスにワインをぶっかけるという暴挙に出る」

「小説の通りね。でもそんなに上手く行くかしら?」

「行かせるんだよ。アンリエットが上手く動いてくれなかったら、僕が手を滑らしたフリをしてワインをかけるからさ。君はアンリエットにやられたという演技をしてくれればいい」

「なるほど! 完璧ね! ギルバート! あなたって天才だわ!」

「いやぁ、それ程でも~♪ あぁ、キャロライン。小説の通りドレスは白い物を着て来てね? 持ってなかったら、僕が新しいドレスを買ってあげるから」

「買って頂戴!」


◇◇◇


「ちょっとギルバート、これは一体どういうことなの!?」

「えっ!? あ、あぁ、え、エリザベート。ち、違うんだよ。じ、実は今日、アンリエットがちょっと遅れるかも知れないって言うから」

「アンリエットならあそこに居るじゃないの!?」

「えっ!? あ、アンリエット!? い、いつの間に!?」

「我が家主宰の舞踏会で私の友人を泣かすだなんて良い度胸じゃないの! あぁ、アンリエット! 可哀想に!」

 ...どうしてこうなった...



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