上 下
27 / 276

27 (ギルバート視点)

しおりを挟む
 なにが悪かった!? なにを間違えた!?

 僕は着の身着のままで放り出された我が家の、固く閉ざされた門の前で呆然と立ち尽くしていた...


◇◇◇


 僕の名はギルバート・クレイン。クレイン侯爵家の次男坊だ。

 僕の家は侯爵家とは名ばかりの貧乏貴族だ。借金もかなり有り、日々の暮らしにも困窮する程だった。

 だから僕は借金の形に売られた。

 フィンレイ伯爵家は伯爵位でありながらとても裕福で、我が家の借金を全て肩代わりしてくれるだけでなく、継続的に支援までしてくれると言う。

 その見返りとして、病弱な兄に代わり女だてらに伯爵位を継ぐことになったアンリエットに、僕は婿入りすることになる。

 我が家に取っては豊富な資金の中から援助して貰える。フィンレイ伯爵家に取っては落ちぶれたとはいえ侯爵家と縁付きになれる。

 双方に取って都合の良い縁組みとして、僕とアンリエットの婚約は結ばれることになった。そこに愛は無くあくまでも政略的な婚姻である。
 
 貴族として生まれた来たならそんなことは日常茶飯事で、僕としても次男坊で家を継げない以上、どこかに婿入りする必要があったから特に不満は無かった。

 それにアンリエットは優秀で、女伯爵として過不足なく務めている。僕の手助けなど必要無いくらいに。

 だから僕は、アンリエットに婿入りするための家督教育もおざなりに受けていた。どうせなにかあっても優秀なアンリエットが全てやってくれる。

 僕は後継ぎを生むためのお飾りな夫。そんな気楽な立場だった。特に野心の無かった僕は、そんなポジションでも別に不満は無かった。

 あの日、運命の出会いを果たすまでは...


◇◇◇


「ギルバート!? ギルバートよね!? うわぁ、久し振り~!」

「君は...キャロラインか!?」

「えぇ、そうよ。私のこと忘れちゃった?」

「いやいや、ちゃんと覚えているよ」

 とある伯爵家の夜会で偶然にも幼馴染みと再会した。彼女の名はキャロライン・ウィンバース。ウィンバース男爵家の令嬢である。

 我が家の領地とウィンバース男爵家の領地は隣り合っており、その関係で子供の頃から親しくしていた。

 特にキャロラインとは同い年ということもあり、一番仲が良かった。

「しかし見違えたよ。随分とキレイになったね」

 久し振りに見たキャロラインは大人の色気がだだ漏れで、妙にドギマギしたのを良く覚えている。

「あら、あなただってとても素敵よ?」

 そう言って妖艶に微笑むキャロラインに、僕の目は釘付けになった。

 それが僕を破滅へと導く一歩だったなんて気が付くこともなく...
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

命を狙われたお飾り妃の最後の願い

幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】 重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。 イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。 短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。 『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

[完]本好き元地味令嬢〜婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました〜

桐生桜月姫
恋愛
 シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。  だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎  本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎ 〜これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である〜 夕方6時に毎日予約更新です。 1話あたり超短いです。 毎日ちょこちょこ読みたい人向けです。

料理をしていたらいつの間にか歩くマジックアイテムになっていた

藤岡 フジオ
ファンタジー
 遥か未来の地球。地球型惑星の植民地化が進む中、地球外知的生命体が見つかるには至らなかった。 しかしある日突然、一人の科学者が知的生命体の住む惑星を見つけて地球に衝撃が走る。  惑星は発見した科学者の名をとって惑星ヒジリと名付けられた。知的生命体の文明レベルは低く、剣や魔法のファンタジー世界。  未知の食材を見つけたい料理人の卵、道 帯雄(ミチ オビオ)は運良く(運悪く?)惑星ヒジリへと飛ばされ、相棒のポンコツ女騎士と共に戦いと料理の旅が始まる。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

夫を愛することはやめました。

杉本凪咲
恋愛
私はただ夫に好かれたかった。毎日多くの時間をかけて丹念に化粧を施し、豊富な教養も身につけた。しかし夫は私を愛することはなく、別の女性へと愛を向けた。夫と彼女の不倫現場を目撃した時、私は強いショックを受けて、自分が隣国の王女であった時の記憶が蘇る。それを知った夫は手のひらを返したように愛を囁くが、もう既に彼への愛は尽きていた。

【完結】要らないと言っていたのに今更好きだったなんて言うんですか?

星野真弓
恋愛
 十五歳で第一王子のフロイデンと婚約した公爵令嬢のイルメラは、彼のためなら何でもするつもりで生活して来た。  だが三年が経った今では冷たい態度ばかり取るフロイデンに対する恋心はほとんど冷めてしまっていた。  そんなある日、フロイデンが「イルメラなんて要らない」と男友達と話しているところを目撃してしまい、彼女の中に残っていた恋心は消え失せ、とっとと別れることに決める。  しかし、どういうわけかフロイデンは慌てた様子で引き留め始めて――

【完結】公爵令嬢はただ静かにお茶が飲みたい

珊瑚
恋愛
穏やかな午後の中庭。 美味しいお茶とお菓子を堪能しながら他の令嬢や夫人たちと談笑していたシルヴィア。 そこに乱入してきたのはーー

勇者の幼なじみに転生してしまった〜幼女並みのステータス?!絶対に生き抜いてやる!〜

白雲八鈴
恋愛
恋愛フラグより勇者に殺されるフラグが乱立している幼馴染み、それが私。 ステータスは幼女並み。スライムにも苦戦し、攻撃が全くかすりもしない最弱キャラって、私はこの世界を生き残れるの?  クソゲーと言われたRPGゲームの世界に転生してしまったんだけど、これが幼児並みのステータスのヒロインの一人に転生してしまった。もう、詰んでるよね。  幼馴染みのリアンは勇者として魔王を討伐するように神託がくだされ、幼馴染みを送り出す私。はぁ、ゲームのオープニングと同じ状況。  だけど、勇者の幼馴染みを見送った日に新たな出会いをした。それが私にとって最悪の結末を迎えることになるのか、それとも幸運をもたらすことになるのか。  勇者に殺されるか、幸運を掴んで生き残るか···。  何かと、カスだとかクズだとか自称しながらも、勇者のイベントフラグをバキバキ折っていくヒロインです。 *物語の表現を不快に感じられた読者様はそのまま閉じることをお勧めします。 *誤字脱字はいつもながら程々にあります。投稿する前に確認はしておりますが、漏れてしまっております。 *始めの数話以降、一話おおよそ2000文字前後です。 *他のサイトでは別のタイトルで投稿しています。 *タイトルを少し変更しました。(迷走中)

処理中です...