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27 (ギルバート視点)

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 なにが悪かった!? なにを間違えた!?

 僕は着の身着のままで放り出された我が家の、固く閉ざされた門の前で呆然と立ち尽くしていた...


◇◇◇


 僕の名はギルバート・クレイン。クレイン侯爵家の次男坊だ。

 僕の家は侯爵家とは名ばかりの貧乏貴族だ。借金もかなり有り、日々の暮らしにも困窮する程だった。

 だから僕は借金の形に売られた。

 フィンレイ伯爵家は伯爵位でありながらとても裕福で、我が家の借金を全て肩代わりしてくれるだけでなく、継続的に支援までしてくれると言う。

 その見返りとして、病弱な兄に代わり女だてらに伯爵位を継ぐことになったアンリエットに、僕は婿入りすることになる。

 我が家に取っては豊富な資金の中から援助して貰える。フィンレイ伯爵家に取っては落ちぶれたとはいえ侯爵家と縁付きになれる。

 双方に取って都合の良い縁組みとして、僕とアンリエットの婚約は結ばれることになった。そこに愛は無くあくまでも政略的な婚姻である。
 
 貴族として生まれた来たならそんなことは日常茶飯事で、僕としても次男坊で家を継げない以上、どこかに婿入りする必要があったから特に不満は無かった。

 それにアンリエットは優秀で、女伯爵として過不足なく務めている。僕の手助けなど必要無いくらいに。

 だから僕は、アンリエットに婿入りするための家督教育もおざなりに受けていた。どうせなにかあっても優秀なアンリエットが全てやってくれる。

 僕は後継ぎを生むためのお飾りな夫。そんな気楽な立場だった。特に野心の無かった僕は、そんなポジションでも別に不満は無かった。

 あの日、運命の出会いを果たすまでは...


◇◇◇


「ギルバート!? ギルバートよね!? うわぁ、久し振り~!」

「君は...キャロラインか!?」

「えぇ、そうよ。私のこと忘れちゃった?」

「いやいや、ちゃんと覚えているよ」

 とある伯爵家の夜会で偶然にも幼馴染みと再会した。彼女の名はキャロライン・ウィンバース。ウィンバース男爵家の令嬢である。

 我が家の領地とウィンバース男爵家の領地は隣り合っており、その関係で子供の頃から親しくしていた。

 特にキャロラインとは同い年ということもあり、一番仲が良かった。

「しかし見違えたよ。随分とキレイになったね」

 久し振りに見たキャロラインは大人の色気がだだ漏れで、妙にドギマギしたのを良く覚えている。

「あら、あなただってとても素敵よ?」

 そう言って妖艶に微笑むキャロラインに、僕の目は釘付けになった。

 それが僕を破滅へと導く一歩だったなんて気が付くこともなく...
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