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「そ、そうやってまた私を虐めるのね!」

 涙目になったキャロラインがなんかホザいてる。

「はぁっ!?」

 私は思わず聞き返していた。いやいや、ほぼ初対面の私がどうやってお前を虐めるんだよ!?

「こ、国王陛下! き、聞いて下さい! こ、この女は身分を笠に着て私をずっと虐めていたんです!」

 私相手じゃ分が悪いと悟ったのか、今度はキャロラインは国王陛下に縋ることにしたようだ。

「ほう? なぜフィンレイ伯がそなたを虐めるのだ?」

「私とギルバートが『真実の愛』で結ばれているのが気に入らなかったからです!」

「ほう、真実の愛とな」

「はい! 私とギルバートは愛し合っていたのです!」

「なるほどな。要するにクレイン侯爵令息は、いやクレイン元侯爵令息はそなたと浮気しておったということか」

「う、浮気じゃありません! 真実の愛です」

「言い方を変えただけじゃろう? 婚約者が居る身でありながら他の女に目移りする。これを浮気と呼ばずなんと呼ぶのじゃ?」

「あぐ...そ、それは...」

 またも国王陛下の正論過ぎる正論にキャロラインが言い淀む。

「フィンレイ伯が怒るのも当然だと思うが? そなたの自業自得じゃろう?」

「うぅ...そ、それでも、この女が私を虐めていたのは事実な訳で...」

 キャロラインが悪足掻きする。

「国王陛下、よろしいでしょうか?」

「フィンレイ伯か。構わん」

「私はそもそもウィンバース男爵令嬢を虐めてなどおりません」

「フィンレイ伯はこう言っておるが?」

「う、ウソです! こ、この女はウソを吐いているんです!」

 キャロラインがまだ抵抗する。いい加減諦めればいいのに。

「ウソじゃありませんよ。ちゃんと証人も居ます。アラン!」

 そう言って私は後ろを振り返る。

「はい、お嬢様」

「あ、アンタは...」

 キャロラインが息を呑む。

「この者の名はアラン。私の侍従を勤めております。アラン、証言して」

「はい、お嬢様。そこの阿婆擦れさんはついさっきまで私と睦み合っておりました。そして私以外にも沢山の男を手玉に取っていると自慢しておりました。ギルバート殿もその一人だと言っておりまして、そのギルバート殿と共謀してお嬢様を陥れる計画だと得意げに話しておりました」

 ちなみに今日のアランは俳優モードだから品が良い。

「ウソよ...ウソよ...ウソよ...」

 ついにキャロラインは譫言のように繰り返し始めた。

「ウソではありませんよ。あぁ、もちろんお嬢様はこの阿婆擦れさんを虐めたりはしておりません。そもそも虐める理由がありませんから。そんな価値すらないということでしょう」

 アランがそう締めくくった。
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