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 まるで金魚みたいに口をパクパクとさせて何も言えなくなったギルバートに、埒が明かないと思ったのか国王陛下は、

「フム、それはまぁ良い。ところでそなたが婚約破棄を突き付けると言っていた令嬢は誰だったかな?」

 来たか...本当はこのまま無視を決め込みたかったけど、さすがにそういう訳にも行かないよな...あぁ、面倒臭い...

 クリフトファー様やエリザベート、ケイトリンが不安そうに見てくるけど、私は彼らに「大丈夫」と目配せしながら前に出た。

「国王陛下、それは私です。アンリエット・フィンレイ女伯爵と申します。どうぞお見知り置きの程を」

「おぉ、そなたであったか。うん? 女伯爵?」

「はい、私は伯爵位を継いでおりますので令嬢ではございません」

「しかしこの者はそなたを令嬢と言っておったぞ?」

 そう言って国王陛下はギルバートを指差す。ギルバートはまたしても顔面蒼白になる。

「ギルバートにはちゃんと言ってあります。彼がしっかりと理解しているかどうかは別にして」

「それはどういう意味じゃ?」

「彼は、ギルバートはこう言っておりました」

『アンリエットは僕の言いなりだからね! 伯爵家を僕に継がせるように画策して、その後で君に対する虐めをでっち上げて断罪する! アンリエットを家から追い出したらキャロライン、君を迎え入れる! どうだい? 完璧なプランだろう?』

「なんと誠か!? それでは簒奪ではないか! 貴族として、いいや人として最低の行為であるぞ! ギルバート・クレイン! 貴様は本当にそんなことを企んでおったのか!」

「あ~...う~...」

 ついにギルバートが言葉を発っせなくなった。顔色は青を通り越して真っ白だ。彼の両親と同じように。

「なるほどな! だからこのような公の場でそなたを冤罪により断罪し、伯爵家の当主として相応しくないとアピールしようとしたのか!」

「えぇ、恐らくは...」

 多分、ギルバートはそんなことまで考えてなくて、ただ単に小説のストーリー通りにしようとしただけなんだろうけど、そういった事情をバカ正直に言う必要もないからここは国王陛下に乗っかっておこう。

 そもそも小説のストーリー通りにしたかったのなら、王族の方々に対する事前の根回しは必須だろうに。それを怠ったギルバートが悪い。

「なんたる蛮行! 恥を知れい!」

 国王陛下の怒気に当てられてギルバートは今にも倒れそうだ。

 自業自得なんでザマアミロって所なんだけど、さすがにちょっと気の毒に思わないでもないな。

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