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 王族の方々が入場して来るまでまだ間がある。

 私達は料理を楽しむことにした。立食形式ではあるがさすがは王宮の料理、どれも美味しくて舌鼓を打っていた。

 私はそれとなくギルバート達の方に目を向ける。ギルバートはこれから大舞台が待っているためか、料理には目もくれずただただ私のことを睨み付けている。だが、

「アラン、キャロラインが料理を食べたそうにしてるから給仕してあげなさい」 

「了解っス!」

「その後はあなたが美味しく頂いていいから」

「ゴチになりやす!」

 それを聞いていた三人はというと、

「ブフッ! アンリ、それ最高!」

「アンリエット! やるわね! 座布団一枚!」

「あらあら♪ お盛んだこと♪」

 そんなこんなやってたら、ファンファーレが響き渡った。

 いよいよ王族の方々が入場して来る。


◇◇◇


 国王、王妃両陛下を先頭に王太子夫妻が続き、第2王子とその婚約者、第1王女とその婚約者という所謂ロイヤルファミリーだ。

 皆が頭を垂れて出迎える。ロイヤルファミリーの方々が席に着いた。国王陛下が手を上げ皆に頭を上げるよう促す。

 これから国王陛下の挨拶が始まろうとしたまさにその時だった。

「アンリエット! 貴様のキャロラインに対する悪逆無道は到底看過出来ぬ! よってこの場にて婚約破棄を申し渡す! 申し開きがあれば申してみよ!」

「ブッフホォッ!」

 私は思いっきり吹き出してしまった。選りに選ってこのタイミング!? そりゃ確かにさ、小説では王族の方々が入場してから断罪が始まるっていう風になってはいるけどさ!

 いくらなんでも国王陛下の挨拶を待たずに始めなくても良くない!? フライングにも程があるだろ!? そのまま不敬罪でしょっ引かれても何も文句言えないよ!?

 そもそもさ、この場で断罪劇を始めるに当たっては、予め王族の方々に許可を取ってから行うもんなんだけど、王族の方々がポカーンとしている所を見ると、そんな根回しも行っていないんだろうな。

 ギルバート、ドヤ顔して私を見るより先に自分の両親の方を見てみなよ? 顔面蒼白になって今にも倒れそうだよ?

「どうした! アンリエット! ショックで言葉も出ないか!?」

 あぁ、私の気も知らんとギルバートが畳み掛けて来る。そら確かにある意味ショックだったよ。お前のバカさ加減を見誤っていたことがな。ここまでのアホとは思ってなかったよ。

 えっ!? なに!? ちょっと待って!? もしかして私、これから前に出て想像を絶するあのアホと対峙せにゃならんの!?

 行きたかねぇ~!

 このままバックレようかな...私は割と本気でそう思っていた...

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