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「さて、小説の続きはと...」

 私は先日発売されたばかりの、兄が書いている小説『真実の愛は永遠なり』の最新刊を手に取り思案に耽る。

「もう既にギルバートとキャロラインは読んでるはず。アイツらがこの小説の通りに動く気なら次は...舞踏会か」

 私は自分の手帳でスケジュールを確認する。

「直近でお誘いが来てるのはと...おっ! ちょうどいい! エリザベートんちから来てんじゃん! これに決めた!」

 エリザベートとは私の学生時代の友人で公爵令嬢である。王族に次ぐ高い身分であるにも関わらず、誰とでも分け隔てなく接する気さくな友なので、私の大好きな令嬢の一人だ。

「では早速、作戦開始と行きますかね」

 私は自分の執務室を出て図書室に向かった。今日はギルバートが家督教育のため我が家を訪れている。

 正確には既に家督を継いでいる私の補佐をするための教育だが、講師達に聞くとあまり真面目に受けていないらしい。

 私を追い出して我が伯爵家を乗っ取るつもりじゃなかったんだろうか? 教育も受けずに私を追い出した後、一体どうする気なんだろう?

 まぁそんな事どうでもいいか。乗っ取らせる気なんか更々無いし、そもそも私を追い出したって、我が家の血を引いてないギルバートが伯爵位を継げる訳無いのに。

 私が居なくなったら兄のロバートに継承権が移るだけで、間違ってもギルバートに移ることは無い。

 ちゃんと教育を受けていれば分かりそうなもんだけど、きっと頭の中はキャロラインとの真実の愛とやらで一杯なんだろうな。アホなヤツ。

「ギルバート、ちょっといい?」

「あぁ、どうしたんだい?」

「今度の日曜日、エリザベートの家で舞踏会を開くみたいなのよ。招待状が届いてるから一緒に参加してね?」

「日曜日だね? 分かった」

「それでね、その日の昼間、私はどうしても外せない用事があるのよ。舞踏会は夜からだから、エリザベートの家に現地集合という形にして欲しいの」

「あぁ、構わないよ」

「ゴメンね。エスコートはしなくていいから、先に会場に入っていて?」

「......」

「ギルバート?」

「えっ!? あ、あぁ、了解したよ...」

 良し良し。心ここに有らずって状態になってるな。これで間違いなくギルバートはキャロラインをエスコートして会場入りすることだろう。

 そう、小説の通りにね。その後どうなるかなんて想像もせず。

 フフフッ! 舞踏会の夜が今から楽しみだ。

 私はギルバートに気付かれないよう、そっとほくそ笑んだのだった。
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