3 / 276
3
しおりを挟む
「あの小説の続きはこんな感じだ」
そう言って兄は私に原稿を渡す。
「所謂、悪役令嬢の断罪物って感じで特に目新しい点は無いぞ?」
「ふうん...確かにそうね。ざまぁとかがある訳でも無さそう...」
私は原稿に目を通しながらそう呟く。
「ざまぁの展開に変更した方が良かったりするのか?」
「いえ、このままで良いわ。面白い展開になるように、彼らにはせいぜい踊って貰うことにしましょう」
「分かった。お前がそれでいいなら。他に俺が手助け出来そうなことはあるか?」
「そうね...もしかしたらイベントを追加して貰うかも知れない。その時になったらまた連絡するわね」
「あぁ、待ってるよ」
「あ、そうだ。兄さん、はいこれ。今月分の印税よ」
「ん、そこら辺に置いといてくれ」
「...いつも思うんだけどさ、いくら実の妹だから信用してるといっても、中身の確認くらいはちゃんとしなさいよね...私が着服してたらどうする気よ?」
私はため息を吐きながらそう言った。
「俺の天使な妹はそんなことしない。それに金なんてあってもどうせ使い途無いし」
「はいはい...」
確かにそうだ。引き籠もっていたらそうなるわな。天使云々に関しては無視する。兄の妹バカ度は重症のようなんで...
「あ、そうそう。兄さんの小説を舞台化したいって話が出版社の方に来てるのよ。許可していい?」
「お前に全て任せる」
「はぁ...」
兄は小説を書く以外は興味無いのであった。
◇◇◇
私はその足で出版社に向かった。今日はこれから舞台関係者との顔合わせがあるのだ。
「社長、どうもご苦労様です」
「お疲れ様。皆さん、お集まりになってる?」
「はい、応接室の方に」
「分かった。すぐ向かうわ」
そう、この出版社は私が立ち上げたのだ。伯爵家の金を使って。つまり兄の小説が売れれば売れるほど、我が伯爵家が潤うことになっている。
もちろん兄以外の小説家の発掘も積極的に行っている。
「遅くなりまして申し訳ありません。私が社長のアンリエットです。ジョン・ドウの代理人を務めております」
「これはどうもご丁寧に。私は脚本家兼演出家のトーマス、こちらは主役を務めますカレンとアランになります」
「カレンです。よろしくお願い致します」
「アランで~す♪ よろしくお願いしま~す♪ 美しい人♪」
「こらアラン! 失礼だぞ! ちゃんとしないか!」
「は~い...スンマセン...」
私は苦笑しながらアランとかいうチャラ男を観察した。役者だけあって当然ながら目鼻立ちは怖いくらい整ってる。加えてこの軽さ。
コイツは使えるかも知れない。
「舞台化の件は了承しました。脚本が上がった段階で一度見せて下さい。それと舞台稽古を見学させて貰ってもいいですか?」
「もちろんですとも! 是非ともお越し下さい!」
「ありがとうございます」
そう言って私はアランにニッコリと微笑み掛けるのだった。
そう言って兄は私に原稿を渡す。
「所謂、悪役令嬢の断罪物って感じで特に目新しい点は無いぞ?」
「ふうん...確かにそうね。ざまぁとかがある訳でも無さそう...」
私は原稿に目を通しながらそう呟く。
「ざまぁの展開に変更した方が良かったりするのか?」
「いえ、このままで良いわ。面白い展開になるように、彼らにはせいぜい踊って貰うことにしましょう」
「分かった。お前がそれでいいなら。他に俺が手助け出来そうなことはあるか?」
「そうね...もしかしたらイベントを追加して貰うかも知れない。その時になったらまた連絡するわね」
「あぁ、待ってるよ」
「あ、そうだ。兄さん、はいこれ。今月分の印税よ」
「ん、そこら辺に置いといてくれ」
「...いつも思うんだけどさ、いくら実の妹だから信用してるといっても、中身の確認くらいはちゃんとしなさいよね...私が着服してたらどうする気よ?」
私はため息を吐きながらそう言った。
「俺の天使な妹はそんなことしない。それに金なんてあってもどうせ使い途無いし」
「はいはい...」
確かにそうだ。引き籠もっていたらそうなるわな。天使云々に関しては無視する。兄の妹バカ度は重症のようなんで...
「あ、そうそう。兄さんの小説を舞台化したいって話が出版社の方に来てるのよ。許可していい?」
「お前に全て任せる」
「はぁ...」
兄は小説を書く以外は興味無いのであった。
◇◇◇
私はその足で出版社に向かった。今日はこれから舞台関係者との顔合わせがあるのだ。
「社長、どうもご苦労様です」
「お疲れ様。皆さん、お集まりになってる?」
「はい、応接室の方に」
「分かった。すぐ向かうわ」
そう、この出版社は私が立ち上げたのだ。伯爵家の金を使って。つまり兄の小説が売れれば売れるほど、我が伯爵家が潤うことになっている。
もちろん兄以外の小説家の発掘も積極的に行っている。
「遅くなりまして申し訳ありません。私が社長のアンリエットです。ジョン・ドウの代理人を務めております」
「これはどうもご丁寧に。私は脚本家兼演出家のトーマス、こちらは主役を務めますカレンとアランになります」
「カレンです。よろしくお願い致します」
「アランで~す♪ よろしくお願いしま~す♪ 美しい人♪」
「こらアラン! 失礼だぞ! ちゃんとしないか!」
「は~い...スンマセン...」
私は苦笑しながらアランとかいうチャラ男を観察した。役者だけあって当然ながら目鼻立ちは怖いくらい整ってる。加えてこの軽さ。
コイツは使えるかも知れない。
「舞台化の件は了承しました。脚本が上がった段階で一度見せて下さい。それと舞台稽古を見学させて貰ってもいいですか?」
「もちろんですとも! 是非ともお越し下さい!」
「ありがとうございます」
そう言って私はアランにニッコリと微笑み掛けるのだった。
70
お気に入りに追加
3,482
あなたにおすすめの小説

真実の愛がどうなろうと関係ありません。
希猫 ゆうみ
恋愛
伯爵令息サディアスはメイドのリディと恋に落ちた。
婚約者であった伯爵令嬢フェルネは無残にも婚約を解消されてしまう。
「僕はリディと真実の愛を貫く。誰にも邪魔はさせない!」
サディアスの両親エヴァンズ伯爵夫妻は激怒し、息子を勘当、追放する。
それもそのはずで、フェルネは王家の血を引く名門貴族パートランド伯爵家の一人娘だった。
サディアスからの一方的な婚約解消は決して許されない裏切りだったのだ。
一ヶ月後、愛を信じないフェルネに新たな求婚者が現れる。
若きバラクロフ侯爵レジナルド。
「あら、あなたも真実の愛を実らせようって仰いますの?」
フェルネの曾祖母シャーリンとレジナルドの祖父アルフォンス卿には悲恋の歴史がある。
「子孫の我々が結婚しようと関係ない。聡明な妻が欲しいだけだ」
互いに塩対応だったはずが、気づくとクーデレ夫婦になっていたフェルネとレジナルド。
その頃、真実の愛を貫いたはずのサディアスは……
(予定より長くなってしまった為、完結に伴い短編→長編に変更しました)
そんなに妹が好きなら死んであげます。
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』
フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。
それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。
そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。
イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。
異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。
何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……

【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います
りまり
恋愛
私の名前はアリスと言います。
伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。
母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。
その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。
でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。
毎日見る夢に出てくる方だったのです。

10年もあなたに尽くしたのに婚約破棄ですか?
水空 葵
恋愛
伯爵令嬢のソフィア・キーグレスは6歳の時から10年間、婚約者のケヴィン・パールレスに尽くしてきた。
けれど、その努力を裏切るかのように、彼の隣には公爵令嬢が寄り添うようになっていて、婚約破棄を提案されてしまう。
悪夢はそれで終わらなかった。
ケヴィンの隣にいた公爵令嬢から数々の嫌がらせをされるようになってしまう。
嵌められてしまった。
その事実に気付いたソフィアは身の安全のため、そして復讐のために行動を始めて……。
裏切られてしまった令嬢が幸せを掴むまでのお話。
※他サイト様でも公開中です。
2023/03/09 HOT2位になりました。ありがとうございます。
本編完結済み。番外編を不定期で更新中です。

婚約破棄ですか。ゲームみたいに上手くはいきませんよ?
ゆるり
恋愛
公爵令嬢スカーレットは婚約者を紹介された時に前世を思い出した。そして、この世界が前世での乙女ゲームの世界に似ていることに気付く。シナリオなんて気にせず生きていくことを決めたが、学園にヒロイン気取りの少女が入学してきたことで、スカーレットの運命が変わっていく。全6話予定
不遇な王妃は国王の愛を望まない
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。
※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり(苦手な方はご注意下さい)。ハピエン🩷
※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲

言いたいことはそれだけですか。では始めましょう
井藤 美樹
恋愛
常々、社交を苦手としていましたが、今回ばかりは仕方なく出席しておりましたの。婚約者と一緒にね。
その席で、突然始まった婚約破棄という名の茶番劇。
頭がお花畑の方々の発言が続きます。
すると、なぜが、私の名前が……
もちろん、火の粉はその場で消しましたよ。
ついでに、独立宣言もしちゃいました。
主人公、めちゃくちゃ口悪いです。
成り立てホヤホヤのミネリア王女殿下の溺愛&奮闘記。ちょっとだけ、冒険譚もあります。

愛されなかった公爵令嬢のやり直し
ましゅぺちーの
恋愛
オルレリアン王国の公爵令嬢セシリアは、誰からも愛されていなかった。
母は幼い頃に亡くなり、父である公爵には無視され、王宮の使用人達には憐れみの眼差しを向けられる。
婚約者であった王太子と結婚するが夫となった王太子には冷遇されていた。
そんなある日、セシリアは王太子が寵愛する愛妾を害したと疑われてしまう。
どうせ処刑されるならと、セシリアは王宮のバルコニーから身を投げる。
死ぬ寸前のセシリアは思う。
「一度でいいから誰かに愛されたかった。」と。
目が覚めた時、セシリアは12歳の頃に時間が巻き戻っていた。
セシリアは決意する。
「自分の幸せは自分でつかみ取る!」
幸せになるために奔走するセシリア。
だがそれと同時に父である公爵の、婚約者である王太子の、王太子の愛妾であった男爵令嬢の、驚くべき真実が次々と明らかになっていく。
小説家になろう様にも投稿しています。
タイトル変更しました!大幅改稿のため、一部非公開にしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる