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エリスは肉を食べながら体験者達と歓談する。
「エリス様、キャンプ場のように宿泊できる施設を造るというのは如何でしょうか?」
体験者の一人がそう言った。
「えぇ、実はそれもちょっと思ったんですけど、二つの理由でそれは造らないことにしたんです」
「と言われますと?」
「まず第一に、この近くには水場が無いんですよ。キャンプをするなら水は不可欠ですから。井戸を掘ろうかなとも思ったんですけど、それだとちょっと風情が無いかなと思いまして。やっぱりキャンプは川や湖沼の側でやるべきかなと」
「あぁ、なるほど。分かる気がします」
「もう一つは単純に費用対効果ですね。せっかくホテルを造ったのに、そのホテルに泊まらずキャンプ場に泊まられたんでは、効率良くお金を使って貰えなくなりますからね」
「あぁ、そうですよね! すいません! 浅はかでした!」
体験者は恐縮してしまった。だがエリスは笑いながら、
「いえいえ、忌憚の無いご意見をお願いしたのはこちらですから、遠慮せずにどんどんおっしゃって下さいな」
その後もバーベキューは和やかな雰囲気で進んだ。
◇◇◇
やがて日が暮れる頃、動物園とフィールドアスレチック施設の説明会と体験イベントが終了した。
「皆さん、本日は長時間に渡りお付き合い頂きましてありがとうございました。皆さんの中で働きたいと思って頂いた方がいらっしゃいましたら、是非ともおっしゃって下さいね。楽しい職場に致しましょう」
そう言ってエリスは、全員分のお土産を紙袋に入れて渡した。
「エリス様、これは?」
「それは動物園で売り出す予定の各種グッズになります。よろしかったらお使い下さい」
グッズの中身は、エリスが魔獣の姿をデフォルメしてデザインした絵柄をプリントしたTシャツやキーホルダー、コースター、カップにお皿などである。
「もしこれらのグッズの他に、こんなのがあればいいなというアイデアがあれば、遠慮なくおっしゃって下さいね?」
「分かりました! ありがとうございます! 本日はお世話になりました!」
こうして説明会と体験イベントは好評の内に終了したのだった。
◇◇◇
「みんな、お疲れ~!」
その日の夜は、手伝って貰ったスタッフ達を労うために食事会を開いた。
「それでどうだった? 体験者達の反応は良かった?」
「えぇ、上々だと思います。みんな楽しんでました」
「警備員希望者も感触良かったよ」
「料理も好評だったと思います」
それぞれユリ、カイ、ヒナが代表して語った。
「それは良かったわ」
エリスはニッコリと微笑んだ。
「エリス様、キャンプ場のように宿泊できる施設を造るというのは如何でしょうか?」
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「と言われますと?」
「まず第一に、この近くには水場が無いんですよ。キャンプをするなら水は不可欠ですから。井戸を掘ろうかなとも思ったんですけど、それだとちょっと風情が無いかなと思いまして。やっぱりキャンプは川や湖沼の側でやるべきかなと」
「あぁ、なるほど。分かる気がします」
「もう一つは単純に費用対効果ですね。せっかくホテルを造ったのに、そのホテルに泊まらずキャンプ場に泊まられたんでは、効率良くお金を使って貰えなくなりますからね」
「あぁ、そうですよね! すいません! 浅はかでした!」
体験者は恐縮してしまった。だがエリスは笑いながら、
「いえいえ、忌憚の無いご意見をお願いしたのはこちらですから、遠慮せずにどんどんおっしゃって下さいな」
その後もバーベキューは和やかな雰囲気で進んだ。
◇◇◇
やがて日が暮れる頃、動物園とフィールドアスレチック施設の説明会と体験イベントが終了した。
「皆さん、本日は長時間に渡りお付き合い頂きましてありがとうございました。皆さんの中で働きたいと思って頂いた方がいらっしゃいましたら、是非ともおっしゃって下さいね。楽しい職場に致しましょう」
そう言ってエリスは、全員分のお土産を紙袋に入れて渡した。
「エリス様、これは?」
「それは動物園で売り出す予定の各種グッズになります。よろしかったらお使い下さい」
グッズの中身は、エリスが魔獣の姿をデフォルメしてデザインした絵柄をプリントしたTシャツやキーホルダー、コースター、カップにお皿などである。
「もしこれらのグッズの他に、こんなのがあればいいなというアイデアがあれば、遠慮なくおっしゃって下さいね?」
「分かりました! ありがとうございます! 本日はお世話になりました!」
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◇◇◇
「みんな、お疲れ~!」
その日の夜は、手伝って貰ったスタッフ達を労うために食事会を開いた。
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「えぇ、上々だと思います。みんな楽しんでました」
「警備員希望者も感触良かったよ」
「料理も好評だったと思います」
それぞれユリ、カイ、ヒナが代表して語った。
「それは良かったわ」
エリスはニッコリと微笑んだ。
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