嫁いで来たその日に家から追い出されたので、報復するついでに領地改革しようと思います

真理亜

文字の大きさ
上 下
48 / 89

48

しおりを挟む
 エリスとカイは温泉に来ていた。

「ここから水道管を伸ばすんだね」

「うん、ホテル用に一本、公衆浴場用に一本ね」

「ここが干上がったりしない?」

「それは大丈夫。水量の豊富な水脈だから。じゃあ早速始めようか」

 エリスはまず、大きな円筒を二本作った。片方の先は蓋で塞がれている。もう片方の塞がっていない方の先をゆっくりと地中に埋める。

「良し、水脈に届いた。あとはこの円筒を街まで伸ばすだけ」

「なるほど。街まで伸ばして先の蓋を外すんだね」

「そういうこと。じゃあ街まで飛んでくれる? ゆっくりとね」

「了解」

 エリスは鳥の姿になったカイの背に乗り、ゆっくりと水道管を伸ばして行く。進路上にある木々や岩などを取り除きながら進む。

「カイ、もうちょっと速くてもいいよ?」

「クェッ!」
 
 そうして僅か30分程で街に到着した。


◇◇◇


「エリス様、お疲れ様です」

 ホテル用地の前では、予め連絡してあった街の職員達が待っていてくれた。

「お待たせしました。こっちがホテル用、こっちが公衆浴場用の水道管になります」

「なるほど。しかし、二本に分ける意味は何かあるんでしょうか? 一本で十分だと思いますが?」

「それに関しては後で説明します。整地を開始しても良いですか?」

「はい、問題有りません。街の住民には近寄らないように通達を出してありますから」

「結構。では始めます」

 エリスはまず、ホテル用地の辺りから整地を始めた。土を盛り上げ、木を引っこ抜き、岩をどかして、といった具合に。そしてあっという間にホテル用地を更地にしてしまった。

 職員達が目を丸くした。カイは慣れたもんで平然としている。

「抜いた木は材料として使いますよね?」

「はい、ありがたく使わせて貰います」

「ではこの辺りに纏めて置いておきますね」

 次に全く同じ要領で、お土産物屋の用地も更地にする。

「良し、次は牧場までの遊歩道を整備します。ここで待ってて貰えますか? カイ、飛んでくれる?」

「「 了解 」」

 カイにゆっくりと飛んで貰いながら、上空から遊歩道を整備していく。抜いた木は全てストレージに入れた。一時間程でエリス達は戻って来た。

「ただいま戻りました。かなりの量の木を引っこ抜きましたが、全部ここに出しますか?」

「いえ、それでしたらお手数でも製材所の方にお願い出来ますか?」

「分かりました。では全ての木材を製材所に送りますね」

「お願いします。製材所の場所は後程ご案内します」

「となると、次はメインストリートの下に水道管を這わせますか」

「はい、もうすぐお昼になりますので、その時間に合わせて通行止めにする予定です。もう少々お待ち下さい」

「ではそれまで一休みしましょうか」

 エリスはストレージから食べ物と飲み物を取り出した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

『忘れられた公爵家』の令嬢がその美貌を存分に発揮した3ヶ月

りょう。
ファンタジー
貴族達の中で『忘れられた公爵家』と言われるハイトランデ公爵家の娘セスティーナは、とんでもない美貌の持ち主だった。 1話だいたい1500字くらいを想定してます。 1話ごとにスポットが当たる場面が変わります。 更新は不定期。 完成後に完全修正した内容を小説家になろうに投稿予定です。 恋愛とファンタジーの中間のような話です。 主人公ががっつり恋愛をする話ではありませんのでご注意ください。

【完結】それはダメなやつと笑われましたが、どうやら最高級だったみたいです。

まりぃべる
ファンタジー
「あなたの石、屑石じゃないの!?魔力、入ってらっしゃるの?」 ええよく言われますわ…。 でもこんな見た目でも、よく働いてくれるのですわよ。 この国では、13歳になると学校へ入学する。 そして1年生は聖なる山へ登り、石場で自分にだけ煌めいたように見える石を一つ選ぶ。その石に魔力を使ってもらって生活に役立てるのだ。 ☆この国での世界観です。

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

愚かな者たちは国を滅ぼす【完結】

春の小径
ファンタジー
婚約破棄から始まる国の崩壊 『知らなかったから許される』なんて思わないでください。 それ自体、罪ですよ。 ⭐︎他社でも公開します

婚約破棄されたので四大精霊と国を出ます

今川幸乃
ファンタジー
公爵令嬢である私シルア・アリュシオンはアドラント王国第一王子クリストフと政略婚約していたが、私だけが精霊と会話をすることが出来るのを、あろうことか悪魔と話しているという言いがかりをつけられて婚約破棄される。 しかもクリストフはアイリスという女にデレデレしている。 王宮を追い出された私だったが、地水火風を司る四大精霊も私についてきてくれたので、精霊の力を借りた私は強力な魔法を使えるようになった。 そして隣国マナライト王国の王子アルツリヒトの招待を受けた。 一方、精霊の加護を失った王国には次々と災厄が訪れるのだった。 ※「小説家になろう」「カクヨム」から転載 ※3/8~ 改稿中

女神に頼まれましたけど

実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。 その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。 「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」 ドンガラガッシャーン! 「ひぃぃっ!?」 情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。 ※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった…… ※ざまぁ要素は後日談にする予定……

「宮廷魔術師の娘の癖に無能すぎる」と婚約破棄され親には出来損ないと言われたが、厄介払いと嫁に出された家はいいところだった

今川幸乃
ファンタジー
魔術の名門オールストン公爵家に生まれたレイラは、武門の名門と呼ばれたオーガスト公爵家の跡取りブランドと婚約させられた。 しかしレイラは魔法をうまく使うことも出来ず、ブランドに一方的に婚約破棄されてしまう。 それを聞いた宮廷魔術師の父はブランドではなくレイラに「出来損ないめ」と激怒し、まるで厄介払いのようにレイノルズ侯爵家という微妙な家に嫁に出されてしまう。夫のロルスは魔術には何の興味もなく、最初は仲も微妙だった。 一方ブランドはベラという魔法がうまい令嬢と婚約し、やはり婚約破棄して良かったと思うのだった。 しかしレイラが魔法を全然使えないのはオールストン家で毎日飲まされていた魔力増加薬が体質に合わず、魔力が暴走してしまうせいだった。 加えて毎日毎晩ずっと勉強や訓練をさせられて常に体調が悪かったことも原因だった。 レイノルズ家でのんびり過ごしていたレイラはやがて自分の真の力に気づいていく。

【完結】私との結婚は不本意だと結婚式の日に言ってきた夫ですが…人が変わりましたか?

まりぃべる
ファンタジー
「お前とは家の為に仕方なく結婚するが、俺にとったら不本意だ。俺には好きな人がいる。」と結婚式で言われた。そして公の場以外では好きにしていいと言われたはずなのだけれど、いつの間にか、大切にされるお話。 ☆現実でも似たような名前、言葉、単語、意味合いなどがありますが、作者の世界観ですので全く関係ありません。 ☆緩い世界観です。そのように見ていただけると幸いです。 ☆まだなかなか上手く表現が出来ず、成長出来なくて稚拙な文章ではあるとは思いますが、広い心で読んでいただけると幸いです。 ☆ざまぁ(?)は無いです。作者の世界観です。暇つぶしにでも読んでもらえると嬉しいです。 ☆全23話です。出来上がってますので、随時更新していきます。 ☆感想ありがとうございます。ゆっくりですが、返信させていただきます。

処理中です...