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 しばらく経ってようやく一人が手を挙げる。

「あの...用地を買収する、ホテルを建設する、お土産物屋を開く、通路を確保する、公衆浴場を造る、などなど、どれをとってもかなりの予算が必要だと思うのですが...そこのところはどうお考えで?」

「全て私のポケットマネーから出します。皆さんには負担を掛けないことをお約束します」

「全てですか...」

 一同が驚愕する。無理もないだろう。

「と言っても、使うお金は用地の買収と立ち退きを迫られる住民の皆さんに対する補償、公衆浴場の場所の確保に掛かる費用、ホテルから牧場までの通路に掛かる費用くらいで済みますよ? 大した金額じゃありません」

 エリスは事も無げに言った。また一同が驚愕する。

「あの...ホテルの建設費が抜けてますが...そこが一番費用の掛かるところでは?」

「ホテルは私が造ります」

 ホテルの模型を手で弄びながら、なんでもないかのようにエリスが言った。

「ほ、ホテルをですか!?」

「はい、自分の領地に居た頃、頼まれて10階建てのホテルを造ったことがあります。それに比べれば半分の規模なんで余裕です」

 また一同は静まり返ってしまった。

「どうでしょうか、皆さん。ご賛同頂けますか?」

 沈黙が答えだった。だがそこで一人が手を挙げる。

「あの、すいません。私、牧場のオーナーをしている者です。反対と言う訳じゃないんですが、牧場体験ツアーでしたっけ? そんなものでお客さん呼べるんでしょうか?」

「大丈夫、お客さん来ますよ。都会に住む人達はそういった体験に飢えていますから、間違いなく人気が出ます。これは自分の領地でも実証済みです」

 それを聞いて満足したのか、牧場のオーナーが下がると、一同を代表して一人が進み出て来た。

「エリス様、我々一同はエリス様に全面的に賛同致します。どうぞなんなりとお申し付け下さい。ここを豊かに地に変えるお手伝いをさせて下さい。よろしくお願い致します」

「ありがとうございます。こちらこそよろしくお願い致します。では早速具体的な話に入りますが..」

 その時、エリスのお腹がくぅ~と可愛い音を立てた。

「...でもその前に、親睦を深める意味で皆さんと一緒にお昼を頂きたいと思います。如何でしょうか?」

 真っ赤になりながらエリスがそう言うと、一同は揃って破顔した。会議室に和やかな空気が漂う。

 そしてエリスは、恥ずかしさを誤魔化すように次々とストレージから料理を取り出した。それを見て一同はまたしても驚愕するのだった。




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