嫁いで来たその日に家から追い出されたので、報復するついでに領地改革しようと思います

真理亜

文字の大きさ
上 下
25 / 89

25

しおりを挟む
 その後も温泉でカイとの仲を根掘り葉掘り聞かれた。

「カイ...君?...様? もうカイ君でいいや! 彼っていくつなんですか?」

「カイは...そう言えば聞いてなかった...」

「見た目通りだと15、6ってとこですよね? エリス様とお似合いですよ」 

「そ、そうかなぁ」

「きっと向こうもそう思ってますよ。エリス様、ここはグイグイ行くべきです!」

「ぐ、グイグイ?」

「そうです! エリス様がその気になれば、落とせない男なんて居ませんよ!」

「お、落とすってそんな...」

 歳上の彼女達から怒涛の攻撃に晒されたエリスは、すっかり逆上せてしまった。 


 火照った体を冷ましていたら、カイが戻って来た。

「ただいま~ 鶏も5羽捕まえて来たよ~ ってどうしたのエリス? 顔が真っ赤だよ?」

「な、なんでもないの! 温泉で逆上せただけ! そ、そうだ、カイも疲れて汗掻いてるでしょ? 温泉でゆっくりして来なさい! 夕食まで時間あるから!」

「わ、分かった...」

 いきなり早口で捲し立てられてビックリしながらも、カイは素直に従った。一方エリスは、少し下がった顔の熱がまた上がって、今はカイの顔をまともに見ていられなかった。

 夕食はもうこれでもかと言うくらい、肉、肉、肉だった。彼女達は大喜びしていたが、カイだけはさすがにウンザリしていた。夕食の間中、すっかり大人しくなってしまったエリスは、カイと目が合う度に目を伏せて赤くなるのを繰り返していた。

 それを温かい目で見守っていた彼女達は、これは先が長いなと感じながら、弄り甲斐があるなとほくそ笑んでいたのだった。


◇◇◇


 翌朝、エリスはカイに乗って、街道が一番狭くなっている所に来ていた。道の両側は切り立った崖になっていて、今にも崖崩れが起こりそうな地形になっていた。

「カイ、隊商の姿は確認出来たわ。あと10分くらいで到着しそうね。じゃあやりますか! カイ、崖に沿って飛んでくれる?」

「クェッ!」

 エリスは崖に向かって風の刃を放った。轟音と共に崖が崩れ道を完全に塞いだ。

「良し、いい感じ。今の音は隊商の人達にも聞こえただろうから、すぐに誰かやって来るね。じゃあカイ、さっさと帰ろう」

「クェッ!」


「今の音はなんだ!?」

 隊商のリーダーは警戒して隊の動きを一旦止めた。

「おい、誰か先に行って見て来い!」

 リーダーが命じると若い衆が一人、馬を駆って先に進んだ。しばらく経って戻って来ると、

「た、大変です! この先で崖崩れが起きて道が塞がってます!」

「な、なんだと~!」

 自分の目で確認するため、リーダーは若い衆と一緒に現場へ向かった。

「こりゃ酷いな...当分ここは通れん。おい、お前。このことを向こうの領主に伝えて来い」

「ここを登るんですか~?」

 若い衆は露骨に嫌な顔をした。

「仕方あるまい。高い前金を貰ってるんだからな。文句言わずに行って来い。馬はここに繋いでおいてやるから」

「分かりましたよ~...」

 ブツブツ文句を言いながら、崖を登って行く若い衆を見送ったリーダーは、日持ちのしない商品をどうしようかと頭を悩ませていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

『忘れられた公爵家』の令嬢がその美貌を存分に発揮した3ヶ月

りょう。
ファンタジー
貴族達の中で『忘れられた公爵家』と言われるハイトランデ公爵家の娘セスティーナは、とんでもない美貌の持ち主だった。 1話だいたい1500字くらいを想定してます。 1話ごとにスポットが当たる場面が変わります。 更新は不定期。 完成後に完全修正した内容を小説家になろうに投稿予定です。 恋愛とファンタジーの中間のような話です。 主人公ががっつり恋愛をする話ではありませんのでご注意ください。

女神に頼まれましたけど

実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。 その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。 「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」 ドンガラガッシャーン! 「ひぃぃっ!?」 情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。 ※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった…… ※ざまぁ要素は後日談にする予定……

公爵家の家族ができました。〜記憶を失くした少女は新たな場所で幸せに過ごす〜

ファンタジー
記憶を失くしたフィーは、怪我をして国境沿いの森で倒れていたところをウィスタリア公爵に助けてもらい保護される。 けれど、公爵家の次女フィーリアの大切なワンピースを意図せず着てしまい、双子のアルヴァートとリティシアを傷付けてしまう。 ウィスタリア公爵夫妻には五人の子どもがいたが、次女のフィーリアは病気で亡くなってしまっていたのだ。 大切なワンピースを着てしまったこと、フィーリアの愛称フィーと公爵夫妻から呼ばれたことなどから双子との確執ができてしまった。 子どもたちに受け入れられないまま王都にある本邸へと戻ることになってしまったフィーに、そのこじれた関係のせいでとある出来事が起きてしまう。 素性もわからないフィーに優しくしてくれるウィスタリア公爵夫妻と、心を開き始めた子どもたちにどこか後ろめたい気持ちを抱いてしまう。 それは夢の中で見た、フィーと同じ輝くような金色の髪をした男の子のことが気になっていたからだった。 夢の中で見た、金色の花びらが舞う花畑。 ペンダントの金に彫刻された花と水色の魔石。 自分のことをフィーと呼んだ、夢の中の男の子。 フィーにとって、それらは記憶を取り戻す唯一の手がかりだった。 夢で会った、金色の髪をした男の子との関係。 新たに出会う、友人たち。 再会した、大切な人。 そして成長するにつれ周りで起き始めた不可解なこと。 フィーはどのように公爵家で過ごしていくのか。 ★記憶を失くした代わりに前世を思い出した、ちょっとだけ感情豊かな少女が新たな家族の優しさに触れ、信頼できる友人に出会い、助け合い、そして忘れていた大切なものを取り戻そうとするお話です。 ※前世の記憶がありますが、転生のお話ではありません。 ※一話あたり二千文字前後となります。

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

加護を疑われ婚約破棄された後、帝国皇子の契約妃になって隣国を豊かに立て直しました

ファンタジー
幼い頃、神獣ヴァレンの加護を期待され、ロザリアは王家に買い取られて王子の婚約者となった。しかし、侍女を取り上げられ、将来の王妃だからと都合よく仕事を押し付けられ、一方で、公爵令嬢があたかも王子の婚約者であるかのように振る舞う。そんな風に冷遇されながらも、ロザリアはヴァレンと共にたくましく生き続けてきた。 そんな中、王子がロザリアに「君との婚約では神獣の加護を感じたことがない。公爵令嬢が加護を持つと判明したし、彼女と結婚する」と婚約破棄をつきつける。 家も職も金も失ったロザリアは、偶然出会った帝国皇子ラウレンツに雇われることになる。元皇妃の暴政で荒廃した帝国を立て直そうとする彼の契約妃となったロザリアは、ヴァレンの力と自身の知恵と経験を駆使し、帝国を豊かに復興させていき、帝国とラウレンツの心に希望を灯す存在となっていく。 *短編に続きをとのお声をたくさんいただき、始めることになりました。引き続きよろしくお願いします。

愚かな者たちは国を滅ぼす【完結】

春の小径
ファンタジー
婚約破棄から始まる国の崩壊 『知らなかったから許される』なんて思わないでください。 それ自体、罪ですよ。 ⭐︎他社でも公開します

婚約破棄されたので四大精霊と国を出ます

今川幸乃
ファンタジー
公爵令嬢である私シルア・アリュシオンはアドラント王国第一王子クリストフと政略婚約していたが、私だけが精霊と会話をすることが出来るのを、あろうことか悪魔と話しているという言いがかりをつけられて婚約破棄される。 しかもクリストフはアイリスという女にデレデレしている。 王宮を追い出された私だったが、地水火風を司る四大精霊も私についてきてくれたので、精霊の力を借りた私は強力な魔法を使えるようになった。 そして隣国マナライト王国の王子アルツリヒトの招待を受けた。 一方、精霊の加護を失った王国には次々と災厄が訪れるのだった。 ※「小説家になろう」「カクヨム」から転載 ※3/8~ 改稿中

処理中です...