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カイは、体が沈み込みそうになるくらい柔らかなソファーに座って、ボーっと部屋を眺めていた。
ついさっきまで何もなかった場所に、突然現れた新しい自分の部屋。真新しいベッドに落ち着いた色合いの壁紙、明るい色のカーテンが窓から入る風に揺れ、質素ではあるが趣味の良さそうな箪笥に新しいテーブルと。まるで夢でも見ているかの如く現実味がなかった。そこへ、
「お待たせ~♪」
トレイに淹れ立ての紅茶と、美味しそうなケーキを二人分載せたエリスがやって来た。
「やっぱり疲れた時は甘い物に限るよね~♪」
自分は全然疲れてないのだが...やった事と言えば箪笥に服をしまったくらいで...言葉にすると余計に落ち込みそうなので、カイは黙っていることにした。美味しそうにケーキを頬張るエリスを見詰める。そういえば、
「エリスって甘い物と肉以外だと、どんな物が好物?」
「ん~...果物かなぁ。あ、あと最近食べてないけど魚料理も好き」
「魚っ!?」
突然叫んだカイにビックリしたエリスは、危うくケーキを取り落とすところだった。
「ど、どうしたのカイ!? ビックリするじゃない!?」
「僕の故郷は湖に面した村でね、魚なら毎日のように食べていたんだよ。この国に来る途中に大きな湖があった。今から飛んで行って魚を捕ってくるよ。待っててエリス、美味しい魚を食べさせてあげるからね!」
そう言うとカイは、呆気に取られているエリスをおいて飛んで行ってしまった。
「行っちゃった...でも魚を捕るのはいいけど、捕った魚をどうやって運ぶつもりなのかしらね?」
自分のようにストレージが使えれば別だが。カイはバッグも持たずに飛び出して行ってしまったのだ。嘴に魚を咥え、両足に一匹ずつ魚を掴んだカイの姿をふと想像してしまい、おかしくて笑いそうになったエリスは、危うく紅茶を吹き出すところだった。
「さて、カイが戻って来る前に畑の様子でも見てくるかな」
◇◇◇
今日もゴーレム達が忙しく働いている芋畑を見に来たエリスは驚愕していた。
「な、なにこれ!? たった1日か2日でこんなに!? いくらなんでも早過ぎない!?」
そこには青々とした葉を繁らせた畑が広がっていた。時折吹く風に葉が揺れている。もう少しで花が咲きそうだ。次にエリスは昨日、野菜の種を蒔いた所と果物の苗木を植えた所に向かった。
「うわぁ、もう芽が出てるよ。苗木もなんだか伸びてない? 私の背丈くらいになってるんだけど?」
これは嬉しい誤算だった。ここまで成長が早まるなら、計画を実行に移せる日も近くなりそうだ。
「ますます楽しくなってきたね♪」
エリスは、ほくそ笑みながらゴーレム達と共に、雑草取りや害虫駆除、水撒きなどの畑仕事に勤しんだ。
夕方になってそろそろ帰ろうかと思ったエリスの目に、こっちへ飛んで来るカイの姿が映った。
「戻って来たんだ、お帰り!?」
だがなんだかフォルムがおかしい。カイの体の下に何か大きな物がある。しかもフラフラしていて今にも落ちそうだ。エリスは慌ててカイが飛んで来る方に向かった。そして、
「な、なにあれ!? 大きな魚!?」
近くまで行ってようやく分かった。カイはかなり大きな魚を両足で掴んで飛んでいたのだ。そりゃフラフラするだろう。
「ハァハァ...た、ただいま...」
青息吐息といった感じのカイが物陰で着替えてからやって来た。
「カイ、これは!?」
カイの足元には体長2mくらいの大きな魚が口をパクパクさせている。まだ生きているようだ。
「これは『イトウサン』って言って、僕の故郷の湖にも棲んでる魚なんだ。ここまで大きいのは僕も初めて見たけど。さすがにちょっと重かった」
「それって湖の主なんじゃないの!?」
ちょっとどころじゃないだろう。エリスは呆れたように言った。
「そうなのかな? でもとにかく美味しいんだよ。是非ともエリスに食べて貰いたくて」
自分にはこんなことくらいしか出来ないから...とカイは心の中で呟いた。
「もう...あんまり無茶しないでね? それから...ありがとう」
自分を喜ばすために無茶してくれた、エリスはそれが何より嬉しかった。
ちなみに『イトウサン』は、とっても美味だった。
ついさっきまで何もなかった場所に、突然現れた新しい自分の部屋。真新しいベッドに落ち着いた色合いの壁紙、明るい色のカーテンが窓から入る風に揺れ、質素ではあるが趣味の良さそうな箪笥に新しいテーブルと。まるで夢でも見ているかの如く現実味がなかった。そこへ、
「お待たせ~♪」
トレイに淹れ立ての紅茶と、美味しそうなケーキを二人分載せたエリスがやって来た。
「やっぱり疲れた時は甘い物に限るよね~♪」
自分は全然疲れてないのだが...やった事と言えば箪笥に服をしまったくらいで...言葉にすると余計に落ち込みそうなので、カイは黙っていることにした。美味しそうにケーキを頬張るエリスを見詰める。そういえば、
「エリスって甘い物と肉以外だと、どんな物が好物?」
「ん~...果物かなぁ。あ、あと最近食べてないけど魚料理も好き」
「魚っ!?」
突然叫んだカイにビックリしたエリスは、危うくケーキを取り落とすところだった。
「ど、どうしたのカイ!? ビックリするじゃない!?」
「僕の故郷は湖に面した村でね、魚なら毎日のように食べていたんだよ。この国に来る途中に大きな湖があった。今から飛んで行って魚を捕ってくるよ。待っててエリス、美味しい魚を食べさせてあげるからね!」
そう言うとカイは、呆気に取られているエリスをおいて飛んで行ってしまった。
「行っちゃった...でも魚を捕るのはいいけど、捕った魚をどうやって運ぶつもりなのかしらね?」
自分のようにストレージが使えれば別だが。カイはバッグも持たずに飛び出して行ってしまったのだ。嘴に魚を咥え、両足に一匹ずつ魚を掴んだカイの姿をふと想像してしまい、おかしくて笑いそうになったエリスは、危うく紅茶を吹き出すところだった。
「さて、カイが戻って来る前に畑の様子でも見てくるかな」
◇◇◇
今日もゴーレム達が忙しく働いている芋畑を見に来たエリスは驚愕していた。
「な、なにこれ!? たった1日か2日でこんなに!? いくらなんでも早過ぎない!?」
そこには青々とした葉を繁らせた畑が広がっていた。時折吹く風に葉が揺れている。もう少しで花が咲きそうだ。次にエリスは昨日、野菜の種を蒔いた所と果物の苗木を植えた所に向かった。
「うわぁ、もう芽が出てるよ。苗木もなんだか伸びてない? 私の背丈くらいになってるんだけど?」
これは嬉しい誤算だった。ここまで成長が早まるなら、計画を実行に移せる日も近くなりそうだ。
「ますます楽しくなってきたね♪」
エリスは、ほくそ笑みながらゴーレム達と共に、雑草取りや害虫駆除、水撒きなどの畑仕事に勤しんだ。
夕方になってそろそろ帰ろうかと思ったエリスの目に、こっちへ飛んで来るカイの姿が映った。
「戻って来たんだ、お帰り!?」
だがなんだかフォルムがおかしい。カイの体の下に何か大きな物がある。しかもフラフラしていて今にも落ちそうだ。エリスは慌ててカイが飛んで来る方に向かった。そして、
「な、なにあれ!? 大きな魚!?」
近くまで行ってようやく分かった。カイはかなり大きな魚を両足で掴んで飛んでいたのだ。そりゃフラフラするだろう。
「ハァハァ...た、ただいま...」
青息吐息といった感じのカイが物陰で着替えてからやって来た。
「カイ、これは!?」
カイの足元には体長2mくらいの大きな魚が口をパクパクさせている。まだ生きているようだ。
「これは『イトウサン』って言って、僕の故郷の湖にも棲んでる魚なんだ。ここまで大きいのは僕も初めて見たけど。さすがにちょっと重かった」
「それって湖の主なんじゃないの!?」
ちょっとどころじゃないだろう。エリスは呆れたように言った。
「そうなのかな? でもとにかく美味しいんだよ。是非ともエリスに食べて貰いたくて」
自分にはこんなことくらいしか出来ないから...とカイは心の中で呟いた。
「もう...あんまり無茶しないでね? それから...ありがとう」
自分を喜ばすために無茶してくれた、エリスはそれが何より嬉しかった。
ちなみに『イトウサン』は、とっても美味だった。
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