嫁いで来たその日に家から追い出されたので、報復するついでに領地改革しようと思います

真理亜

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 しばらくして、やっとエリスが泣き止んだ。

 そして急に恥ずかしくなったのか、顔を真っ赤にしながら、

「えっと...その...カイ、改めてこれからよろしくね」

「うん、よろしく」

 その後エリスは、自分が今置かれている境遇についてカイに説明した。カイはクズ夫に対し怒りを露にした後、エリスのお仕置きに関する話を聞いて笑顔を見せた。そして今行っている領地改革に興味を持った。

「なるほど、だからここは一面に畑が広がっているんだね。やりがいのある仕事だ。喜んで手伝わせて貰うよ。もちろん、君を貶めたクズに対する報復に関してもね」

「カイ、ありがとう~♪」

「それで僕はまず何を手伝えばいいかな?」

「うん、今日はこれから柵を作ろうと思ってたんだ。それを手伝ってくれると助かる」

「柵? どこに?」

「酪農地と森の間。今も簡単な木の柵はあるんだけど、ボロボロになっててね。どうせなら新しい柵を作ろうと思って。いくら魔獣を間引いても柵が丈夫じゃないと意味無いからね」

「なるほど、もちろん手伝うよ」

「ありがとう~♪」

 エリスはまたカイに乗せて貰い、街のすぐ外にある酪農地に向かった。

「カイ~! 柵に沿って進んで~! 疲れたら降りて休んでいいからね~!」

 そう言って「フンフン♪」と鼻歌を歌いながら土の魔法で新しい柵、というより壁をどんどん作っていくエリスの、底知れない魔力量の多さにカイは驚愕していた。

 しかも時折「ウリャ!」「トリャ!」と声を上げて、近くに居た魔獣を風の魔法で狩りながら進めているのだ。もちろん、その魔獣はストレージに収納して後で美味しく頂くことになる。

「やっぱり空から俯瞰で見れるっていいよね~♪ 元々は馬を借りる予定だったんだけど、これなら思ったより早く終わりそうだよ~♪」

 結局、ものの二時間もしない内に、広い酪農地を囲う壁が完成してしまった。カイはもう言葉もない。

「カイ、お疲れ様。大丈夫? 無理させてないよね?」

「い、いや、僕は全然平気。それよりあんなに沢山魔法を使ってエリスの方こそ大丈夫?」

「うん、全然平気」

「す、凄いね...」
 
 カイは眩しいものを見るような目でエリスを見詰めた。

「さて、小腹空いたね。街に行ってなんか甘い物食べようよ。魔獣も結構貯まったんで肉屋さんに卸したいし」

「そ、そうだね...」

 まだ食べるんだ...の一言は飲み込んだカイだった。


◇◇◇


 街に戻ってすぐカフェにでも行くのかと思ったら、エリスが向かった先は町長の所だった。

「ようこそいらっしゃいました、エリス様。おや、そちらの方は?」

「カイと言います。私の仕事を手伝ってくれています。カイ、こちらこの街の町長さん」

「カイと申します。よろしくお願いします」

「これはどうもご丁寧に。こちらこそよろしくお願いします」

「町長さん、このカイには全ての事情を話してありますので、今後のためにも顔合わせしておいた方がいいと思いました。領地改革だけでなく、あのクズへの報復に関しても力になってくれます」

「分かりました。では早速ですが、エリス様のお見立て通り、あの屋敷からの離反者が続出しております。エリス様に言われた通りの対処法を施して街に入れておきました」

「やっぱり。そろそろだと思ってました。その人達の名簿はありますか?」

「はい、こちらになります」

 そう言って町長は一枚の紙を取り出した。

「名前と職種まで書いてありますね。これは...」

 エリスはニヤッと笑って、

「面白くなりそうですね」

「えぇ、あのクズが気付いてるかどうか分かりませんが」

「いえ、まだ気付いてないようですよ」

 エリスは盗聴していることを告げる。

「そろそろ次の段階に移行しましょうかね」

 そう言ったエリスの顔は、悪戯を楽しむような悪い表情を浮かべていた。
 
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