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第15話 ボルドー子爵邸での夜会
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夜会が開かれる前日、アイシャとトリシャはボルドー子爵邸に前乗りしていた。もちろん、ベルナンドとジルベルトの二人も一緒である。
寄親と寄子という関係もあり、昔からボルドー子爵とは懇意にしている。今回の王子達の暴走に関して伝えると、我が事のように憤慨してくれて、何でも協力すると言ってくれた。
「招待状も出してないのに、直前になって参加を申し込んで来た家はありますの?」
「えぇ、一件だけございました。アルザス子爵家というところです。そこのご令嬢をお二人参加させたい旨、何故か王宮から連絡がありました」
「アルザス子爵家...すいません、私は存じ上げませんわ」
アイシャが首を捻る。横でトリシャも同じポーズをしている。ボルドー子爵は苦虫を噛み潰したような顔で、
「ご存知ないのも無理はありません。既に没落した家ですから。私も同じ子爵位を賜る者として知っているという程度です」
「するとそのお二人は、爵位を詐称していることになりますわね」
「お姉様、それって重罪じゃありませんか!?」
トリシャの言う通り、爵位詐称は重罪だ。ヘタすれば絞首刑も有り得る。それ程貴族の身分とは重いものなのだ。詐称の指示を出したのが王子達だとすると、その証拠を掴み国王に突き付けられれば、今度こそただでは済むまい。
王子達の廃嫡も有り得るだろう。どちらか一方か、あるいは両方ともか。王家にはまだ幼いが第三王子が居る。後継ぎは問題ない。国王が醜聞を恐れて二人とも廃嫡にする可能性は高そうだ。
証拠が掴めればだが。
「恐らくですが、そのお二人は貴族の娘では無いでしょうね。貴族としての教育を受けている者なら、爵位を詐称することがどれだけ重い罪になるか良く知っているでしょうから。そんな危ない橋を渡るとはとても思えません」
「となると平民ということですか?」
「えぇ、それもキャバ嬢や娼婦など、殿方を誑し込むのに長けた方を送り込んで来たのでしょうね」
誑し込むという言葉にベルナンドとジルベルトは身震いした。ターゲットは当然自分達なのだから。
「如何致しましょう?」
「参加を認めて下さい」
「よろしいのですか?」
「えぇ、構いません。格の違いを見せ付けてやりますわ」
そう言って笑ったアイシャの顔はとても黒かった。
◇◇◇
夜会当日、ベルナンドとジルベルトの二人は、わざとパートナーを伴わずやって来た。獲物を餌に食い付かせるためだ。案の定すぐに食い付いて来た。
「今晩わぁ~♪ 私ぃ~♪ アルザス子爵家のぅ~♪ アミって言います~♪」
「同じくユミで~す♪ よろしくね~♪」
やたらと胸元が大きく開いた、スリットが太腿の先まで深く入った如何にも扇情的なドレスを着た二人が近付いて来た。
「ど、どうも。トーレス男爵家のベルナンドと言います」
「お、同じくジルベルトです」
波乱に満ちた夜会がスタートした。
寄親と寄子という関係もあり、昔からボルドー子爵とは懇意にしている。今回の王子達の暴走に関して伝えると、我が事のように憤慨してくれて、何でも協力すると言ってくれた。
「招待状も出してないのに、直前になって参加を申し込んで来た家はありますの?」
「えぇ、一件だけございました。アルザス子爵家というところです。そこのご令嬢をお二人参加させたい旨、何故か王宮から連絡がありました」
「アルザス子爵家...すいません、私は存じ上げませんわ」
アイシャが首を捻る。横でトリシャも同じポーズをしている。ボルドー子爵は苦虫を噛み潰したような顔で、
「ご存知ないのも無理はありません。既に没落した家ですから。私も同じ子爵位を賜る者として知っているという程度です」
「するとそのお二人は、爵位を詐称していることになりますわね」
「お姉様、それって重罪じゃありませんか!?」
トリシャの言う通り、爵位詐称は重罪だ。ヘタすれば絞首刑も有り得る。それ程貴族の身分とは重いものなのだ。詐称の指示を出したのが王子達だとすると、その証拠を掴み国王に突き付けられれば、今度こそただでは済むまい。
王子達の廃嫡も有り得るだろう。どちらか一方か、あるいは両方ともか。王家にはまだ幼いが第三王子が居る。後継ぎは問題ない。国王が醜聞を恐れて二人とも廃嫡にする可能性は高そうだ。
証拠が掴めればだが。
「恐らくですが、そのお二人は貴族の娘では無いでしょうね。貴族としての教育を受けている者なら、爵位を詐称することがどれだけ重い罪になるか良く知っているでしょうから。そんな危ない橋を渡るとはとても思えません」
「となると平民ということですか?」
「えぇ、それもキャバ嬢や娼婦など、殿方を誑し込むのに長けた方を送り込んで来たのでしょうね」
誑し込むという言葉にベルナンドとジルベルトは身震いした。ターゲットは当然自分達なのだから。
「如何致しましょう?」
「参加を認めて下さい」
「よろしいのですか?」
「えぇ、構いません。格の違いを見せ付けてやりますわ」
そう言って笑ったアイシャの顔はとても黒かった。
◇◇◇
夜会当日、ベルナンドとジルベルトの二人は、わざとパートナーを伴わずやって来た。獲物を餌に食い付かせるためだ。案の定すぐに食い付いて来た。
「今晩わぁ~♪ 私ぃ~♪ アルザス子爵家のぅ~♪ アミって言います~♪」
「同じくユミで~す♪ よろしくね~♪」
やたらと胸元が大きく開いた、スリットが太腿の先まで深く入った如何にも扇情的なドレスを着た二人が近付いて来た。
「ど、どうも。トーレス男爵家のベルナンドと言います」
「お、同じくジルベルトです」
波乱に満ちた夜会がスタートした。
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