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第2話 二人の王子
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ロングランド王国には二人の王子が居る。第一王子のトリスタン・ロングランドと第二王子のランドルフ・ロングランド。
それぞれがアイシャとトリシャと同い年の17、16になるが、まだ二人共に婚約者が居ない。王族としてこの年齢まで婚約者が決まっていないのは珍しいと言える。
もちろん、周囲から早く婚約者を決めるようにせっつかれているが、二人共中々決めようとしない。何故なら二人共にそれぞれがアイシャとトリシャに懸想しているからだ。
どうにかして二人を手に入れたいと思っているのだが、肝心の二人に全くその気が無い。だが諦めるつもりも手を拱いているつもりもない二人は、密かに画策していた。
その日、トリスタンは自分の執務室で、今日も山のように送られて来た婚約者候補の釣書を前に、ため息を吐いていた。そんな時だった。
「失礼します。兄上」
「ランドルフか、どうした?」
「バカ二人がやらかしたようです」
そう言ってニヤリと笑みを浮かべた弟の顔を見たトリスタンは、
「良し。計画通りだな」
と、こちらもニヤリとしながら嬉しそうに言った。
「今度こそ逃がさない」
その笑顔はとても黒かった。
◇◇◇
「ウソ...昨日の今日よ? なんでこんなに早く? 有り得ないでしょう...」
「お姉様、どうしたの?」
朝食が終わり、食堂で寛いでいる時だった。執事が王宮からの急ぎの手紙を届けて来た。その内容は、
「私とあなた、二人をお茶会に招待すると。しかも今日の午後よ?」
「お姉様、私、途轍もなく嫌な予感がします...」
「奇遇ね、私もよ...」
「「 はぁ~... 」」
行きたくないが、王族のからのお誘いを無視する訳にもいかない。二人揃って深いため息を吐いた。
二人の王子には前々から絡まれていた。舞踏会やお茶会など、王宮主宰で行われる催しに招待される度に、ダンスを申し込まれたり、ずっと隣の席に座らされたりと。
仕舞いには婚約者が居ると言うのに堂々と愛を囁いてくるという始末。これまでは「婚約者が居ますので」と断れたが、今の自分達に婚約者は居ない。昨日婚約を解消してしまった。
よりによって何故このタイミングで? まるで見計らったように? まだ次の婚約者を決めていないのに...これなら一層の事、あんなクズでもキープしておくべきだった? いや、いくらお飾りとは言ってもあれは無理。
「とにかく、お父様の所に行きましょう。こうなったら誰でもいいから、今日中に婚約結ぶわよ?」
「わ、分かりました!」
「どういうことよ!」
「い、いや、私にも何がなんだか...」
「あれだけ来ていた釣書が、一通も来ないなんて有り得ます?」
「あ、有り得ないです...」
二人の娘に詰め寄られた父親は小さくなって答えた。
「何が起こってるの...」
アイシャは呆然と呟いた。
それぞれがアイシャとトリシャと同い年の17、16になるが、まだ二人共に婚約者が居ない。王族としてこの年齢まで婚約者が決まっていないのは珍しいと言える。
もちろん、周囲から早く婚約者を決めるようにせっつかれているが、二人共中々決めようとしない。何故なら二人共にそれぞれがアイシャとトリシャに懸想しているからだ。
どうにかして二人を手に入れたいと思っているのだが、肝心の二人に全くその気が無い。だが諦めるつもりも手を拱いているつもりもない二人は、密かに画策していた。
その日、トリスタンは自分の執務室で、今日も山のように送られて来た婚約者候補の釣書を前に、ため息を吐いていた。そんな時だった。
「失礼します。兄上」
「ランドルフか、どうした?」
「バカ二人がやらかしたようです」
そう言ってニヤリと笑みを浮かべた弟の顔を見たトリスタンは、
「良し。計画通りだな」
と、こちらもニヤリとしながら嬉しそうに言った。
「今度こそ逃がさない」
その笑顔はとても黒かった。
◇◇◇
「ウソ...昨日の今日よ? なんでこんなに早く? 有り得ないでしょう...」
「お姉様、どうしたの?」
朝食が終わり、食堂で寛いでいる時だった。執事が王宮からの急ぎの手紙を届けて来た。その内容は、
「私とあなた、二人をお茶会に招待すると。しかも今日の午後よ?」
「お姉様、私、途轍もなく嫌な予感がします...」
「奇遇ね、私もよ...」
「「 はぁ~... 」」
行きたくないが、王族のからのお誘いを無視する訳にもいかない。二人揃って深いため息を吐いた。
二人の王子には前々から絡まれていた。舞踏会やお茶会など、王宮主宰で行われる催しに招待される度に、ダンスを申し込まれたり、ずっと隣の席に座らされたりと。
仕舞いには婚約者が居ると言うのに堂々と愛を囁いてくるという始末。これまでは「婚約者が居ますので」と断れたが、今の自分達に婚約者は居ない。昨日婚約を解消してしまった。
よりによって何故このタイミングで? まるで見計らったように? まだ次の婚約者を決めていないのに...これなら一層の事、あんなクズでもキープしておくべきだった? いや、いくらお飾りとは言ってもあれは無理。
「とにかく、お父様の所に行きましょう。こうなったら誰でもいいから、今日中に婚約結ぶわよ?」
「わ、分かりました!」
「どういうことよ!」
「い、いや、私にも何がなんだか...」
「あれだけ来ていた釣書が、一通も来ないなんて有り得ます?」
「あ、有り得ないです...」
二人の娘に詰め寄られた父親は小さくなって答えた。
「何が起こってるの...」
アイシャは呆然と呟いた。
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