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 そんな下らないことのために、こんな大それたことを仕出かしたのかと思うと、ルージュは情けないと思うより先になんだか悲しくなって来た。

 自分がこれまでロベルトに尽くして来たことが全て無駄だったのかと...

「ハァッ...」

 ルージュは大きなため息を吐いた後、徐にこう告げた。

「殿下...あなたのそのつまらないプライドのせいで、この国が今存亡の危機にあるってことを自覚してます?」

 ロベルトはゆっくり顔を上げた。

「えっ!? ま、まさかそんな...」

「この会場内をご覧なさい。誰も居ませんよね? この状況が今の殿下の立場を如実に表しているんです。誰も味方が居ないということですよ。お分かり頂けましたか?」

 そこでようやくロベルトは、自分がとんでもないことを仕出かしたんだと実感した。遅過ぎるにも程があるが....

「騎士団はもう守ってくれませんよ!? 魔道騎士団もです。これでどうやってプレスコット辺境伯軍の精鋭部隊と戦うつもりなんです!? 有力貴族の皆さんも助けてくれませんよ!? どうするんですか!?」

「る、ルージュ...ど、どうしよう...」

 さっきまであんなにふんぞり返っていたクセに、今はみっともなく震えながらルージュにすがり付くロベルトに、ルージュは冷たく言い放った。

「どうにもなりませんよ。ご自分で蒔いた種です。ご自分で刈り取って下さいな」

「そ、そんな...」

 崩れ落ちるロベルトを一瞥したルージュは、最後にこう言った。

「あぁ、確か私との婚約を破棄するんでしたっけ? 謹んでお受けしますわ。それと最後に」

 ルージュは自身の魔力を右の拳に込めて、ロベルトの顔をおもいっきり殴り飛ばした。

「このクソがぁ! 死にさらせやぁ!」

「ぶへっ!」

 ロベルトは10m以上吹っ飛んで、そこで動かなくなった。そんなロベルトにはもう興味がなくなったのか、ルージュは最後に残ったマリアンヌを見下ろし、

「さて、何か言うことはあるのかしら?」

 と氷点下を下回る冷たい視線を浴びせた。

「あ、あの、その、わ、私はただロベルト様の言う通りにしただけでして...」

 マリアンヌはしどろもどろになりながら言い訳を始めた。

「あなたには再教育が必要ね。私が徹底的に鍛えてあげるから覚悟しなさい」

 そう言ってマリアンヌの襟首を掴んで引き摺って行く。

「ヽ(ヽ゜ロ゜)ヒイィィィ! た、助けて~!」

 マリアンヌの叫びに応えてくれる者は誰も居なかった。

 後に残されたのは、気絶しているロベルトだけだった。
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