最初から私を殺す気だったんですね...

真理亜

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 ロベルトがルージュに斬り掛かろうとした正にその時、

 カキインッ!

 という金属音と共にロベルトの剣が弾かれ、

「うおっ!?」

 ロベルトはもんどり打ってその場に倒れた。ルージュの防御シールドが発動したのである。王族の婚約者たる者、いざという場合に備え準備はしていた。

 ペンダント形の魔道具がルージュの胸元で目映く光っている。装着者の命を一回だけ守る働きをする魔道具である。

「...殿下...」

 ルージュはハイライトの消えた目でロベルトを見据え、絞り出すようにこう言った。

「...私を殺したいほど憎んでいるのなら、そもそも最初っから私と婚約なんてしなければ良かったではありませんか? なぜ私と婚約したのです?」

 するとロベルトは俯いて唇を噛み締めながら、

「...父上と母上がどうしてもと言うから...逆らえなかった...逆らったら失望されると思ったから...俺は...失望されたくなかった...」

 子供か! そりゃまぁ確かに、婚約を結んだ時はお互い10歳だったから子供だった訳なんだが...だがそれにしたって...

「...嫌なら嫌とその時に言えなかったとしても、これまでに何度だって言うチャンスはあったでしょうよ? 私達、婚約者してからもう8年も経っているんですよ? その間に幾らでも言えたはずですよね? なんでそうしなかったんですか?」

「...出来の良いお前に嫉妬していた...周りから優秀だと持て囃されるお前を僻んでいた...その上で俺から婚約を破棄するなんて言った日には...その...なんかお前に負けた気がして嫌だった...俺は...俺は...」

 だから子供か! そんな下らないプライドを拗らせた挙げ句、こんなアホなことを仕出かしたって訳なのか? 国家を転覆させる程の大事を引き起こした理由が、つまらんプライドを守るためだったと? バカか!? バカなのか!? 

 いつの間にか口調が「俺様」から「俺」に変わったロベルトを、ルージュは冷たい目で見下ろしていた。

「そこからなんで一足飛びに私を殺そうなんて話になったんですか? そもそも殺した後、一体どうするつもりだったんです?」

「...お前を本当に殺すつもりなんてなかった...殺すと脅してやれば...その...お前は跪いて許しを乞うと思ったから...そうすれば俺は優越感に浸れる...そう思って...なのにあんな事になって...もうどうすればいいのか...お前があんなにみんなから大事に思われていたなんて...俺は全く知らなかった.. 」

 ルージュは頭痛がして来た。

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