嘘吐きな妹と彼の病弱な義妹そして腹黒い幼馴染みに悪役令嬢と呼ばれる私、実は心の声が聞こえる聖女です

真理亜

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 舞踏会が始まった。

 ファーストダンスは当然ながら主催者であるユミ王女が務める。お相手は...誰だろう? 見たこと無い人だ。凄いイケメンだけど。

「あれは確か、ユミ王女が隣国から連れて来た護衛騎士の一人ですね」

 すると私の心の声が聞こえたかのようなタイミングで、マルコ様がそっと教えてくれた。

「そうなんですね。素敵な人なんでビックリしました」

「あの王女は側近を能力じゃなく見目で選ぶって有名ですからね」

 そう言ってマルコ様は皮肉げに微笑んだ。なるほどね。ユミ王女らしい。やがて一曲目が終わった。

「さぁ、我々も踊りましょうか」

「は、はい、よ、よろしくお願い致します」

 カルロ以外の男の人と踊るのは父親以来だからめっちゃ緊張する! 足を踏まないように注意しないと!

 見るとカルロとララも踊り始めた。作戦だから仕方ないとはいえ、私以外の女の人と踊るカルロを見るのは辛い...

 だからなるべく見ないようにして、マルコ様とのダンスに集中した。そして曲が終わった。すると物凄い勢いでユミ王女がこちらにやって来る。

 カルロにパートナーを申し込む気だろう。それは想定内だった。私達はサッとパートナーを入れ替える。本来のパートナー同士に戻った訳だ。

 これにはさすがのユミ王女も何も言えなくなって、悔しそうに唇を噛んでいる。作戦成功だ。曲が終わってパートナーを入れ替えるタイミングを狙って来るのは分かっていたからね。

 二曲続けて同じ人と踊るってのは、家族や恋人以外じゃ有り得ないから。

「フフフ、当てが外れて悔しそうにしてるね?」

「えぇ、タイミングばっちりだったわ。期待を持たせといて落とすっていうのは効いたみたいね。良い気味だわ」

 ユミ王女は仕方なしに最初のパートナーの所に戻って行った。

「しかし...作戦だから仕方ないとはいえ、リタが他の男と踊るのを見るのは辛かったよ...」

 良かった...カルロも同じ気持ちだったんだ...

「それは私も同じよ...早くケリが付いて欲しいわ。こんなことしなくても済むように...」

「そうだね...」

 その後は三曲続けてカルロと踊った。さすがに喉が渇いたのでドリンクバーの方に移動する。するとまたもやユミ王女が物凄い勢いでやって来るが、今度は侍女に扮した三人娘が肉の壁となって立ち塞がる。作戦は完璧だ。

 私とカルロは喉を潤した後、そっと場を離れる。三人娘はそのまま残っているので、ユミ王女は私達がすぐ戻ると思っていることだろう。

 だが私達は戻らずにそのまま馬車に乗って帰ったのだった。

 ざまぁ!
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