嘘吐きな妹と彼の病弱な義妹そして腹黒い幼馴染みに悪役令嬢と呼ばれる私、実は心の声が聞こえる聖女です

真理亜

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「ちょっと! どういう事よ!」

 その日、登校した私はいきなりマナに絡まれた。

「どういう事とは?」

「惚けないで! 聖女候補の事よ! あんたが手を回したんでしょう? 薄汚い平民しか聖女になれないなんてどういう事なのよ!」

「私じゃありません。大司教様がお決めになった事です」

 ウソは吐いて無い。確かに大司教様を煽ったりしたが、そこまでの英断に踏み切ったのは大司教様ご自身だ。その点に関して私は直接関与していない。

「ふざけないでよ! あんたの後釜を狙ってせっせと根回ししていたのが全部無駄になったじゃないのよ! どうしてくれんのよ! 責任取りなさいよ!」

「私に言われましても...」

 それは知っていた。マナが実家の侯爵家の財力を使い、根回しという名の賄賂をバラ撒いているということを。

 私と聖女の座を争っていた時もそうだった。とにかく賄賂をバラ撒いていた。だが結局、聖女に選ばれたのは私だった。

 いくら賄賂をバラ撒いても、修行を真面目に行っていなかったマナには、聖女としての資質も徳も貯まっていなかったため、聖女として相応しく無いと判断されたのだ。

 その事をコロッと忘れて、また懲りずに賄賂をバラ撒いて聖女候補に返り咲こうとしていると大司教様から伺った。

 前回、最終候補にまで登り詰めた自分にはその資格があると思い込んでいるようだ。修行もしていないのにそんな訳が無いのだが、本人は頑なに認めないらしい。ある意味執念すら感じられて空恐ろしくなる。

 大司教様が英断に至った理由の中には、このマナのような輩を絶対に聖女には就けさせてはならないという強い思いがあったのだと思う。

「そう...誰が悪いのかよおく分かったわ...」

 そう言っていきなり遠い目をしたマナに違和感を感じていた時だった。今まで心の声と実際の声がほぼ一致していたマナだったが...

『コイツになに言っても無駄ね! 決定権があるのは大司教なんだから。アイツを始末するしかないわ! 思えば前回の聖女認定の時だって、絶対に賄賂を受け取ろうとしなかった! あの時からムカついていたのよ! 私が前回聖女になれなかったのは絶対アイツのせいだし、今回もまた邪魔をするって言うならもう容赦しないわ! フフッ! 見てなさい! 我が侯爵家の総力を挙げて排除してくれるわ!』

 なんと言うことを...罰当たりにも程がある。そんな蛮行は絶対に阻止せねば! せっかく大司教様が進めておられる改革が頓挫してしまう。

 私は急いで大司教様に連絡する事にした。
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