嘘吐きな妹と彼の病弱な義妹そして腹黒い幼馴染みに悪役令嬢と呼ばれる私、実は心の声が聞こえる聖女です

真理亜

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『全く! この平民は本当に忌々しいったらないわね! フフフッ! でもこの姿も今日で見納めだと思うとせいせいするわ! 明日の貧民街での炊き出しでコイツは行方不明になるのよ! お父様に頼んであるから仕込みはバッチリ! コイツは拐われて奴隷として売られるのよ! 良い気味だわ! 大体、平民のクセに貴族のアタシ達より目立つのがいけないのよ! 聖女に相応しいのは貴族である私達なんだから! 薄汚い平民なんてお呼びじゃないのよ! 分を弁えることね!』

 これは不味い...今までのような子供同士の虐めの枠を遥かに越えてる。こんな愚行を許す訳には行かない。なんとしても阻止しないと。

 私はカルロに相談することにした。


◇◇◇


 そして今日、貧民街での炊き出しの日だ。私は当然ながら聖女として参加している。そして聖女見習いの少女達も。

 私は炊き出しをしながらレイから片時も目を離さない。炊き出しを始めて二時間くらい経過した頃だった。セナがレイに近付いて行く。

 私もそれとなく彼女達の近くに行った。

「レイ、食材が足りなくなって来たわ。あなた裏に行って取って来なさい」

「は、はい。分かりました...」

 心の声を聞くまでもない。セナの顔が醜く歪んでいる。私は側に隠れているカルロに目で合図を送ってから、そっと裏に向かった。

「このガキ! 大人しくしやがれ!」

「むぐぅ! だ、誰か! 助け...」

 レイの声だ。私は急いで駆け付けた。

「あなた達! 何をしてるの!」

 レイを拐おうとしていたた輩どもが一瞬躊躇した。だが相手が私一人だと知ると、途端に下卑た嗤いを浮かべる。

「へへっ! 見られたんじゃしゃあねぇ! お姉ちゃんも一緒に来て貰おうか! コイツぁ上玉だぁ! 高く売れるぜい!」

「誰をどこに売るって?」

「へっ!?」

 輩どもをカルロの公爵家の私兵が取り囲む。

「ゆっくり話を聞かせて貰おうか。捕らえろ!」

 輩どもはあっという間に捕縛された。

「レイ! 怪我は無い!?」

「せ、聖女様ぁ~!」

「良し良し。もう大丈夫よ。怖かったよね」

 泣きじゃくるレイの体を抱き締めながら、私は心の中で「怖い思いさせてゴメンね」と謝っていた。

 コイツらを誘拐の現行犯で捕まえるためには、レイに囮になって貰う必要があったとはいえ、トラウマもんの怖い思いをさせてしまったのは本当に申し訳ないと思ってる。

 その分、しっかりと膿を出し切ってあげるからね。輩どもがセナの伯爵家から依頼されたと吐けば、伯爵家はただじゃ済まないはず。

 セナが聖女見習いから外されるのは間違いない。

 ざまぁ!
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